表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マスカブレード  作者: 黒野健一
第二章 静寂/父と母
20/120

20静寂が来る

「やはり……そうか」

病院から自宅に帰る道、彼女はついに一つの真実にたどり着いた。

月村詩朗はあの仮面の男だ。


「くっくっく……!おもしろいことに巻き込まれたな」

気になるのはその後だ。

月村詩朗が病室を抜け出し、喫茶店で戦闘をした後の行方だ。

今彼は何処にいる……?


ともかく、今は自宅に帰り記事を書こうと早足で自宅に向かう。

さすがにすべての事実を記すつもりはない。

こんなに面白いことは独り占めしたいというのは、情報の発信者としては

如何なものかと自分でも思っているが。


「……?」

ふと足を止める。病院に向かう前から気のせいかと思っていたが、やはり。

「誰かに……つけられている?」

思い返せば家を出てから、割と早い段階からつけられているような気もする。

さわやかそうな雰囲気の美青年というような風貌。

はっきりといって目立つだろうそんな人間がわざわざあとをつける理由。

「恋だとか、ひとめぼれ……ってんなわけないわね」

夕河が調べているのは常識では考えられない存在達だ。

事件を嗅ぎまわっていることに気が付いた、仮面の女の仲間か

それとも仮面事件に現れる謎の組織の一員か。


答えは……前者だった。


突如走りだした少女を追いかける青年。

夕河は近所の地形を把握していて、家と家との間を通り抜け逃れようとした。

だが彼女に絶望が襲う。


「……!?体が……」

出した足が固まったように動かない。

足だけでなく、全身が、周囲の全てが停止した。

意識と眼球だけが働いて、ゆっくりと接近していくる青年を捉える。

顔を仮面で覆いながら。


青と黒の二色が特徴のその仮面からは冷酷さが伝わってくる。

恐怖で震えたくとも体は動かない。

青年は固まった表情の夕河の顔に白い手で触れる。

さらに耳元で呟いた。


「君の家族は今の君と同じ状況だ」

「…………!?」

家にいる両親にまで何かされた。

「君については前から気になっていたんだ……面白い記事を書いているよね」

どうやら、夕河暁の書いた仮面の都市伝説は本人たちにも注目されているらしい。

光栄……とは今の状況からは言えない。

「君が昨日の事件を調べ始めたのは運がよかった、おかげで君に出会うことができた」

こんなときに月村に言われたことを思い出す。

特定されるんじゃないか、用心したほうがいい。

まさか都市伝説の存在に付きまとわれるとは思いもしなかったが。


自分のネットの使い方を見直すのは後にして、今はこの状況を何とかすることを考え始める。

夕河の許されている自由は眼球、聴力、思考能力。

呼吸は大きく吸ったり吐いたりはできない。

四肢はもちろん声も出せない。

「心臓だけだ……」

青年が口をひらく。

「君は心臓の鼓動の音だけ許可されている」


あらゆる音を出す行為を禁じる力。

青年は名乗る、自分の正体を。

「私は、静寂の魔刃、君が追っている仮面の……魔刃の一人だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ