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マスカブレード  作者: 黒野健一
第二章 静寂/父と母
19/120

19追跡者

自室でサイトに掲載する記事を書いていた夕河は妙に落ち着かない感じである。

数時間前に連絡を入れた相手が出ないのだ。それから何度もかけなおしたが

何度も、何度かけようが相手は電話に出ることない。

ずっと電源が切れているようだ。

本当に事件に巻き込まれたのではないのかと不安も少しながら感じている。

彼女の勘が良く当たることを彼女は自覚している。


「……調べるか……」

書きかけの記事を一時保存し、情報収集を始める。

美術館で起きた事件についてはネットではまだ情報が出回っていない。

そこで、事件ではなくその美術館に詳しい人間を探すことにした。

「見つけた……」

SNSのプロフィールを漁っていると、この剣之上市に住んでいて趣味が

美術鑑賞の男を見つける。

早速何か情報を聞き出せないかと接触すると、美術館内の配置を完全に覚えているらしく

なんと監視カメラの位置まで把握していた。


すぐにそのカメラの存在を知り合いの情報屋に問い合わす。

彼女の胡散臭い都市伝説の情報源の一つのその情報屋は

腕前の良いハッカーなのか、あるいは権力を持った人間の道楽か。

普通の人間が手に入れられない情報を売りさばいている。

インターネットでアンダーグラウンドと呼ばれるような場所で活動する者で、

普段は出会えないことも多いが運よくその情報屋とも接触できた。


映像は手に入った、次は現場に向かう。


現場となったのはこの街にある美術館、事件当日は展示会をしていた。

今は立ち入り禁止となっているため中には入れない。

だが用があるのはこの美術館ではなく、この周囲に住んでいる人たちだ。

丁度良いところに、近所の主婦たちが昨日の事件をネタに盛り上がっていた。


「あの……すみません」


夕河が主婦から聞き出した情報は二つ、一つは搬送された高校生が

月村詩朗で間違いないということ。

もう一つは警察以外にも何らかの組織が現場にやってきたということ。


主婦たちはその組織の正体の予想をいろいろと語っていたが、夕河には心あたりが一つあった。

仮面の事件を追うといつも現れる、若者が仕切っている謎の組織。

名前も知らず、そもそも本当に実在するのかも怪しいが、いつも事件について調べると

警察以外の謎の組織が調査していることがわかる。


「さて……どうしたものか」

携帯電話に映し出されているのは、情報屋から手に入れたもの。

公には公開されてない、被害者の詳細が記されている。

もう一人の生存者の女子小学生の家に伺ってみようと思い、喫茶『バタフライ』に向かう。




「お、や……?」

意外なことに、彼女が向かった先でも大変なことが起きていた。

周囲の野次馬達は、仮面の女と男の襲撃で店が荒らされたと騒いでいる。

「……昨日の二人……か?」

美術館での戦闘、襲撃犯の女と突如現れた男。

夕河はある仮説を立てる。


もしこれまでの仮面の者達と違い、人に害をなすものではなく人を守る存在であるのなら。

昨日殺し損ねた少女を狙い、襲撃した女を待ち構えていたとしたら。


「おもしろいな……都市伝説の存在と戦う都市伝説だ!」

彼女の興味が突然現れた、新たな仮面の人間に向く。

そしてその正体も予測を立てている。


ずばり正体は月村詩朗だ。


映像には仮面の男と女しか映っておらず、少女と詩朗はカメラの死角にいたのかもしれない。

しかし情報屋はもうひとつ大事な情報を与えてくれた。

それは警察への通報が逃げ出した少女からのものであるということ。

「何故少女と逃げなかった?」

少女と脱出しなかった理由。

そして搬送された男子高校生の怪我。

以前から仮面の女について調べていて、あの巨大な刃と爪という殺傷能力な高そうな

狂気的な姿が印象に残っていた。

そして今回、映像で戦う姿をみて確信した。

あの仮面の怪人に生身の人間が相手できるはずがない。

なのに、男子高校生は怪我をする程度で済んでいる。


夕河の推測ではあの仮面の男は月村詩朗で、戦闘は相打ちで決着がつき

女は逃走し詩朗は気を失ったということだ。

映像でも、戦闘能力は互角であったと思われる。


「それで、殺し損ねた少女を狙った」

何が目的で殺人をしているのかは知らないが、もし特定のターゲットがいて

それがその少女ならば、今日この喫茶店で襲撃があったのも納得できる。

まわりの野次馬の話からは、死亡した人間もけが人もいないらしい。


「……病院に行くか」

あとは病院に詩朗がいるかどうかだ。

もしいなければ彼があの仮面の男だろうと。







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