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マスカブレード  作者: 黒野健一
第一章 詩朗/魔刃との遭遇
15/120

15後始末

目が覚めて初めに目に入ったのは白い肌、それから奇麗な顔。

喜んでいるのか、馬鹿にしているのか微妙な表情な女。

看護師というわけではないようだ。

「あ、あんたは……?」

「わたくしは黄鐘咲と申します」

上品な雰囲気を漂わせるその少女が自分の名前を口にしたので、詩朗も自分の名を名乗ろうとした。

しかし口に指先を当てられそれを止められる。

「月村詩朗さん、ですわよね?」

こくり、とうなずく。

周囲を観察したところ病室という感じではない。

どちらかと言うとここは自室……


「うあっ!?」

そこで詩朗は自分の格好に気付く。

上半身は包帯で隠れているが、下着一枚。

布団に包まり身を隠す詩朗に、女は耳もとでささやく。

「恥ずかしがらずともいいのですわよ?」

詩朗はびくびくしながら引っ張られてる布団を必死に掴んでいる。

「……その包帯を巻いたのも脱がしたのもわたくしですのよ」

「あっ……」

それの一言が布団のつなひきの決着を決める要因になった。

詩朗は白いシーツの上で大の字になって敗北をかみしめる。

「もう、お婿にいけない……」


詩朗が服を受け取る。

それは自分の学校の制服なのだが、新品である。

自分の着ていたボロボロの制服はすでに処分されていた。

「あ、どうも……」

自分のことをどれぐらい知られているのか気になるところだろう詩朗は

目の前の上品そうな少女に質問する。


「あの、おうしき……さきさんでしたっけ?僕のこと……」

「ええ、ええ調べましたのよ、意外と簡単でしたの」

黄鐘の手招きに従い、廊下に出る。

詩朗と黄鐘が真っ白な壁と床のその廊下の突き当りに進むとドアが勝手に開いた。

その部屋はさっきの個室というより大人数が集まるような広い部屋であった。


「ふっ、後輩だったとはな」

「あ、あんた!」

そこにいたのは詩朗にとっては近くて遠い存在。

学校の有名人、日野研司。

「な、なんで!?ここは何処なんだ!?」

「どーどうどう!落ちつけ後輩、ほら俺のサインをくれてやろう」

日野がポケットから取り出したのは黒の油性ペン。

それを慣れた手つきで詩朗の腕に巻かれた包帯にイニシャルを書き記す。

「ふっ!宝物にしていいぞ……!」

「はーいこっちこーい」

部屋の奥でイスに座りくるくる回っていた少女がこちらにやってきた。

「私は青井凛子」

「え?あ、あっどうも」

少女は自分の名前を告げる以外とくに話すことなく、日野の耳を引っ張る。

「いたいっいたい、いたーい!!」

身長の低い青井に耳を引っ張られているので腰を落としながら連れていかれる。


「……な、なんですか、ここは?」

「対魔刃部隊の、ひ、み、つ、基地ですわ」


片目をつぶり指を口に当てて言う黄鐘。

詩朗は相変わらずポカーンとした表情で聞いている。

どこか不服そうな黄鐘は「まぁいいですわ……」とつぶやくと

部屋の机の上に載っているケースのようなものを詩朗の目の前につき出す。


「これについてお話を聞かせてもらいますか?」

「……そうだ……」

目の前のケースの中に入っていたのは仮面。

笑っているようにも、歯を食いしばっている風にも見える仮面。

復讐の魔刃、彼がまったく反応なく、普通の仮面のようにケースのなかでおとなしくしている。

「俺は……」




詩朗と復讐の魔刃は連続襲撃犯の女こと癒しの魔刃と交戦していた。

場所は朝早くの河川敷だ。決着は詩朗の勝利であった。

しかし傷を広げ、血を失いすぎた彼は再生能力が間に合わずふらふらとしていた。

復讐の魔刃がなんとか彼の意識の一部を借りると、傷を癒す能力を強化すべく

割れた癒しの魔刃の仮面を集めて、齧る。


それを見ていた二人の刑事は恐怖していた。

地面の仮面の破片を貪るその姿はまるで獣のようだった。


幸い、今までは襲撃犯の女と敵対していたために襲われていなかった。

しかし、その女が動かなくなった今次の標的は自分たちかもしれないと思うと

拳銃を構えたまま動けなくなっている。


「あらあら、どうやら仕事を取られてしまったようですわね」

若い刑事が振り返るとさっきの少女が数人の男を連れて立っていた。

「ですが、新しいお仕事ですわよみなさま」

少女が何かの合図を送ると、後の男達が一斉に銃のようなものを構え始めた。

「一体、何を!?」

その瞬間、若い刑事の叫びをかき消すように銃声が一斉に響く。

放たれた何かが、仮面を被った少年を襲う。

「ぐがあぁあああ!?」

少年が仰向けで苦痛をこらえていると男達が駆け寄ってくる。

癒しの魔刃の刃片は回収され、詩朗は男数人に押さえつけられている。

「少年、魔刃の適合率が低いようだ、防刃服でいけるぞ!」

「傷が多いようですので仮面を外さず、そのまま拘束してくださいませ」


指示を済ませた少女は呆気にとられている若い刑事のもとに来て告げる。

「ご協力感謝しますわ、刑事さん」


刑事二人は連れていかれる少年と女の遺体をただ見ていることしかできなかった。








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