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マスカブレード  作者: 黒野健一
第一章 詩朗/魔刃との遭遇
14/120

14指を刺す

突如現れたもう一人の仮面を被った人間。

彼はもぎ取った自分の指を眺めている。


標的を刑事たちから変更した癒しの魔刃が歩み寄ってくる。

逃げても逃げても負ってくる魔刃と少年に彼女は怒りを覚えていた。

一人になりたい、自由でありたい。

彼女にとって癒しとは穏やかな世界で独りになることだ。

それを邪魔する者は……


「殺すわぁ、今度こそはぁ」

「ああ、お前を殺すぜ今度こそ」

返事したのは魔刃の方、彼と彼女は面識があった。

といっても仲が良いわけでもなく恨んでいるわけでもない。

彼女は魔刃の王を崇拝している者でもなく逆に恨んでいるわけではなかった。

人間の命がどうでもいいと感じる復讐の魔刃個人に敵対する理由はなかった。


だけど、敵対しない理由もなかった。

魔刃は魔刃を喰らうことで強くなる。

王から奪われた体を取り戻すためには、自分も他者から奪い、力をつけなければならないのだろう。


「なんだ……なんなんだ、こいつら!!」

魔刃同士の戦いに巻き込まれた若い刑事、村上は二人を睨んで動けない。

人間ではない、こいつらは人間などではない。


「頭を狙え」

「ああ」

一人の人間から二つの声が聞こえる。

部品を外すかのように自分の体の一部を引きちぎった彼は、その指をダーツの

ように投げ飛ばした。

指の傷口は何やら尖っていて、傷口の方を先頭に投げていた。


仮面の女は防御や回避行動はとらず、それをただ受けた。

指は突き刺さり、彼女の鎖骨あたりから指が一本生えているような状態になっていた。

それでも何の興味もなさそうに反応しない。

痛いとも言わず、動揺したようすもない。

「なんのぉつもりぃ?」

この程度、抜けばすぐに癒える。

蚊に刺されるのも同然である。


だが、次の彼の行動にはさすがに動揺は隠せない。


「うあぁぁぁっ……」

思わず、目の前の脅威達から目をそらす村上。

今度は指一本ではなく、片手の指5本一気に抜きとった。

さっき抜いて、代わりに生えてきた刃がそのうちの一本だ。

引きちぎったところからはまた再び刃が。


「だから、なにをぉ……」

癒しの魔刃、彼女もその不可解な行動に警戒する。

彼の能力は知っている。

傷が大きいほど刃は研ぎ澄まされていく。

しかし、指程度の刃では致命傷を与えることはできない。


今度は腕で受けて防御するが、すぐにその刺さった指達を抜き……


「……いや、指だけじゃないぃ!」

指の傷口から刃を生やしたものだけじゃやない。

手に指の代わりに生えた刃も混じっているのだ。

つまり、指数本の投てき攻撃などではなく。


「アガアアアアアァアアアアァアアアアアッ!!!!!」

何度も、何度も、何度もだ。

指があった場所から生成される刃を、投げ、また生やして投げる。

それを繰り返すたび、手の傷もだんだんひどくなっていく。

だがその分、投げる刃の長さも増していく。


無数、刃の指が癒しの魔刃の体を襲う。

一本、また一本と刺さるたびに抜くが間に合わない。

相手は片手の一刺し指から小指までの四本をもう片方の手で抜いてそのまま投げる。


「まだだァ!!両方いくぞォ!!」

「……うっ、がああああああぁあああ!!」

当然痛みは抜くたびに詩朗を襲う。

親指と掌でつかめれば指などいらないと、もう片方の指も武器へと変える。

刃を投げると、次が生えるまでにもう片方の指として生えた刃を投げる。

そうしてるうちに刃は補充される。

これも昨日、癒しの魔刃を人齧りだけだが喰らうことに成功したからだろう。

再生能力と同時に刃の生える速度も速くなった。


痛い、痛いッ!!

詩朗はそろそろ限界を感じていた。

刃が生えるときに傷口に触れるとき、それを抜いたとき。

自身が削り取られている感覚だ。


だがやらなければ、ここでこの魔刃を倒せなければ再び人を襲う。

笑顔が奪われる。

それだけは許せない。


「ぐぅう……いたぁいのよぉ!!」

刺さった刃を抜くのが新たに刺さる刃に間に合わない。

ならば、新たに飛んでくる刃を全て防ぐしかない。

「爪で防ぐつもりだァ!やれェ!!」

「……ああ」

詩朗は刃を投げる手を止めて振り返る。

「……!?」

村上は心臓が止まりそうだった。

今まで化け物同士殺し合っていた彼らの一人がこちらを向いた。

当然危険を感じる。

そんな彼が取った行動は、ようやく震えが収まった手で拳銃をその者に向けることだった。

化け物に対してはささやかな抵抗の意志であったが、意外な結果になった。


「撃て、僕を撃てぇ!!」

「……何?」

撃て?自分を撃て?

何を言っているのか理解できない村上。

「早くッ!!」


自分でも何をしているのかわからなくなっていた。

村上が引き金を引いたのは、仮面の男の迫力に押されたからかそれとも、相手に何かを期待したからか。

弾丸が詩朗の手のひらを貫いて手首を通って肘のあたりで抜けていく。


そして詩朗に痛みで苦しむ猶予は残されていない。

受けた弾丸の傷を指代わりの刃で、拳を握りしめるような形で傷を口から刃が生えないようにしている。

「ウリィイイイアアアアア!!」

その拳を、癒しの魔刃向かってくりだす。


一方相手の癒しの魔刃は、カウンター狙って拳を片腕で受けてもう片方の爪で、自分がやられたように

相手の首を取ってやろうと考えた。

しかし、腕で防御したのは良くない行動だった。


受け止めた!と思ったその次には、腕を掴まれた。

殴っていたのではない、最初から掴みに来ていた。

正確には、手を開くことさえできれば何でもよかったのだが。


「ぐぬぅ……!?」

指代わりの刃は、銃創で作られた刃が生えるのを抑えるために拳を握りわざと傷口に刃を差し込んでいた。

そして手を開いて、刃が抜けたその瞬間から再び刃の生成は始まる。

傷口を当てられているというのは、銃口を当てられているのと同じだ。

銃創から生み出される刃は、鋭く、細く、長く、まるでレイピアだ。


傷口から放たれた刺突は腕をつらぬき、守っていた頭にまで到達した。

「がぁああああ!?」

魔刃の断末魔、頭に到達するということは仮面をも貫くということ。

「ヘッ!魔刃は顔が弱点だッ!!」

本体である魔刃の仮面はなにか力が失われて、装着者の顔から剥がれ落ちる。

仮面は貫かれた額を中心に真っ二つに割れた。



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