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マスカブレード  作者: 黒野健一
第一章 詩朗/魔刃との遭遇
12/120

12啓示

「……わかりました。こっちで……はい」

携帯電話を持った片手を下すとぶつぶつと独り言を言い始める。


「ったく、まさかあんな怪我を負った翌日に脱走するとはなぁ」

事件の被害者で、あの場にいた生存者の一人の男子高校生。

彼がなぜ病院から抜け出したのかはわからない。


「まさか、俺のほうも逃げられたりしてないよなぁ?」

若い刑事が向かう先は小さな喫茶店『バタフライ』である。

そこの店長の孫娘があの現場にいて、通報したのも彼女だ。


「昨日は気が動転していたな」

まだ子供の彼女があんな惨劇を目撃したのだ、無理もない。

むしろあの状況で警察に通報するため、近隣の民家に助けを求めた判断を褒めるべきだ。

ただ、何があったかと聞かれて意味不明なことを話していたが。


「仮面が喋るねぇ……」

若い刑事、村上星が見つけた胡散臭いオカルトサイトにもそんなことは書いてなかった。

ただの取り乱した子供の妄言だと思うが、完全に信じられないことでもないとも考えていた。


仮面を被った者による怪奇事件はこの街で数年に一度に起きていたらしい。

しかしここ最近は頻繁に起きるようになっていた。

彼らは何者なのか?何が目的なのか?

そもそも集団で犯罪を犯しているのか?個人が犯した怪事件が偶然重なっているのか?


「……!?なんだ?」

目的地が見えてきたが、そこにある風景は想像していた朝の喫茶店のものではなかった。

店の壁には大きな穴が開いていて、その店の周囲には野次馬と野次馬には見えない何かの組織のような

集団がいた。


「アイツら……またかッ!」

これまでの仮面の事件にも現れた謎の組織。

上の人間からは極秘で結成された『仮面の人間』の事件を捜査する組織とだけ聞かされていた。

だからあの組織が出てくるということは、この事件もその秘密組織とやらに捜査を奪われるということだ。


「……あら、おじさま?またお会いしましたわね」

「……ッ!」

声をかけてきたのは十代半ばぐらいの少女。

彼女は野次馬ではないほうの集団に属する人間だ。

「申し訳ないのですけど、事件に協力して欲しいのですのよ」

「おやお嬢ちゃん、いつもみたいに俺たちを事件から外そうとしないのかい?」

刑事は気に入らなかった。

何故ならこの秘密組織とやらは、こういう子供も含まれているからだ。

すこし先には高校生ぐらいの男子もいる。

全体的には大人の割合が多いが、その中にこういう子供が混ざっているとかえって目立つ。

他の大人達と違い、彼らは現場を調べている様子もない。

「あと俺はまだおじさまじゃない!!」

「あらあら、おじさま……わたくしたちはおじさまたちのために遠ざけていますのよ

 ただ今は非常事態なのですよ……」

「非常事態……?」

少女が伝えたのは、刑事たちが追っていた仮面の女がこの喫茶店を襲撃したことと、

近隣住民が目撃した事件当時の情報。


「仮面を被った女ともう一人、ボロボロの制服の男子高校生、それも彼も仮面を被っていたとか」

仮面を被った者が二人、共犯か?それとも敵対しているのか?


「少なくとも、現在この周囲に二人の魔刃がいるのです」

「マジン……?」

いつも他人を小馬鹿にしているような表情の少女が珍しく「しまった!」というふうな顔をした。

「失礼……仮面を被った不審者が二人もいるのです」

マジン……刑事はその言葉が引っかかっていたが今は急がないといけない。

二人目の仮面の者も女と同じく凶悪な殺人犯かもしれないのだ。


「今は人手が少ないのですの、刑事さんたちにもお手伝いしてほしいのですわ」

「……で、犯人を探させるだけやらしてあとは自分たちがやるから関わるな、か?」

少女が微笑む。


冗談じゃない、いつもそうだ。

先輩の中年刑事が捜査した事件でもこれまでそういうことが何度かあったと聞いていた。

そして事件の結末も知らされることはいつも無かった。

自分たちが捜査している事件がいつの間にか、闇の中で葬られている。

それも、こんな子供が混じっている不気味な組織にだ。


「ハァ……ハァ……村上!」

後方から刑事の名前を呼びながら現れたのは、彼の先輩。

病院から走ってきたのだろう、息が切れている。


「それではおじさま、危ないのでくれぐれも仮面の人間をみつけても私たちを呼ばない……

 などという愚かなことはしないでくださいませ……」

「……あぁ……もちろんだぜ嬢ちゃん……」

その言葉を発する時に胡散臭い笑顔を少女に見せた。


今度こそ、今度こそは自分たちの手で真相を暴いてやる。

こいつらに真実を隠されてたまるか、犯人もとっ捕まえてやる。

刑事の眼にはこれまでの無念が宿っていた。


「行きましょう!正堂さん!!」

「……っえ?ちょっ……まてよぉ!!俺の体力も考えろ……」

切らした息のまま若い刑事を追う中年刑事。

その姿を見ていた少女はまたくすっ、と笑った。


「まぁ、真実を知れば自分たちでどうにかできるモノではないと、あきらめてくださるかしらね」

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