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マスカブレード  作者: 黒野健一
第六章 裏/霧
105/120

105作戦開始

最新話を読んでる方、どれくらいいるかわからないですけど……もしも1話から読んでいただいてるならとてもありがたいことでございます。それと同時に連載終了RTAになってることに申し訳ないとおもってます。完結した際にはまとめ、本来描きたかったけどストーリーの都合上描けなかったところを設定だけでも出していきたいと思います。これからもどうぞマスカブレードをよろしくお願いします。

  黒野

 黄鐘咲、対魔刃部隊の隊長を務める若き社長令嬢。

なぜそんな立場の彼女がそんな物騒な役割を引き受けたかといえば、彼女の生まれた血筋にある。

魔刃殺しの血筋。

戦前、いや……もっとはるか昔から。

古代に眠りについた魔刃達の王の目覚めの波長に晒された者達が少数ながらも蘇っていた。

それを人知れず狩る一族、それが黄鐘。

その末柄の彼女もまたやがて王が滅びを迎えるまで、魔刃殺しの技術を受け継いでいく必要がある。


 刃覚者。

それは魔刃の仮面を被りながらも、魔刃の精神汚染から身を守る特殊体質者のこと。

人類全体でみれば希少な存在であるが、なぜかこの剣之上市には、何か引力なようなもので引きよせられてくる。

特に黄鐘の血筋は異常に刃覚者の力を発現する確率が高い。


現イエローチャイム社、社長の黄鐘調も若いころは対魔刃部隊を率いていた。

もっとも彼が使用していた魔刃の仮面が破損し、彼の能力は失われたため今では戦うことはできない。

ゆえに彼の子供たちの中で唯一力に目覚めた彼女、咲が選ばれた。


「相手の要求は?」


魔刃達は本社のビル内の社員のいくつかを魔刃、正確には魔刃のなりそこないにしたてあげた。

が、社長である黄鐘調と、そのた少数の社員は高層階に幽閉されている。

ようは人質なのだろう。


「どうやら、我々が捕獲した魔刃の解放、斬骸の引き渡しのようだ」


部隊の所持する魔刃の解放、それはすなわち、新たな装備の開発や、刃覚者と協力する魔刃の王へ反逆を考える魔刃の排除。

そして、王へ忠誠を誓う者の解放、謀反者やすでに解体されて斬骸と化した者は捕食し、力にするまで。

やつらの目的は王に仕える者達の戦力強化である。


天野が告げると、腕を組み、壁にもたれかかりながら聞いていた日野が、拳銃型のデバイス『GUN面システム』を持ち、外へ出る。

目的地はおそらくイエローチャイム社。


「たっく、アイツ……俺たちはあの馬鹿の面倒をみとく、隊長、交渉は頼めるか?」


一般の対魔刃武装を纏った集団を指揮する男、根吹が後を追う。


「黄鐘さん」

「黒藤さん?」

「唐突に起きたこの騒動、もしかしたら罠かもしれません」


黒藤曰く、イエローチャイムが対魔刃部隊を支援していることは極秘である。

それがどこからかやつらに漏れた。

すなわち、この組織内に裏切者がいる可能性が高い。


「部隊が総出のときに本部がやられる可能性もありませんか?私はここに残ろうかと思ってます」

「だったら、私も……」


青井が手を上げる。


「隊長を一人にしてしまうのはアレだけど……」

「私は大丈夫、一般部隊と日野くんもいるわ。それより本部襲撃の際に戦力の温存も必要よね。黒藤さん、青井さん。お願いするわ」


黄鐘も、自分の父が捕まっている本社へと向かう。


残された研究員たちと、青井、黒藤……そして天野。


「では黒藤さん……いや、解放の魔刃」

「えぇ」

「……!?」


この場に残る、そう告げたはずの彼女が外に飛び出す。

困惑する青井の肩をそっと、天野が掴み、耳元でささやく。


「君は魔刃か?それとも人間か?」

「な……にを?」


青井凛子、空白の魔刃。

彼女、もしくは『ソレ』に対する天野の冷酷無慈悲な質問。

唐突に投げかけられ、頭が真っ白になるが、心には恐怖と憎悪が感情には現れずとも湧いてくる。


「なにを、こんな時に……え、黒藤さんどっかいっちゃった……」

「質問に答えてください」

「そんな場合じゃないって、イエローチャイムの事件が起きて……」

「質問に答えてください……」


天野という男。

対魔刃部隊において古参のメンバーの一人。

普段は無機質で、不愛想なふるまいをするが信頼できる人間のはずだ。

こんな時にこんな『悪意』ある質問をなぜする?


青井凛子として生きると決めた空白の魔刃に対してその質問の答えの意味とは何か。

その意図とは何か。


「君は青井凛子を演じているに過ぎない、ただのイカレた怪物だ。人間のフリをしているが……」

「……やめて」

「所詮は魔刃だ」

「やめなさいよ!!」


ついに心の底から湧いて出てきた感情が爆発する。

むき出しの怒りや憎悪を向けられた天野は表情すら変えずに、手を伸ばす。

まるで、どこかへ導くように。


「王の復活は近い。それは王の復活を促進させる魔刃達の活動にかかわらず、いずれ起きること

 そしてそのときになれば、人間は王を今度こそ、滅ぼさなければならない」


それが対魔刃部隊の目的……だが。

だが、どうだろう。

その日がくれば、王が死ねば。

眠れる王によって力が供給し、活動する魔刃達は皆滅びる。

人間に力を貸す魔刃達は、そもそも共倒れを望んでいるが……青井凛子、いや空白の魔刃はどうなのか。


「君は青井凛子として……生きていたくないか? 王に反逆する魔刃の一体として死んでいくのか?」

「……あっ……あぁ」


ようやく、天野の質問の意味が理解し、彼女の視界が歪む。

頭の中の整理がうまくいかない。

だけど彼女の中でひとつはっきりとしたことがわかった。


「裏切っていたのはあなた……天野さん」







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