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義妹にも弱点がありました

それから1年がすぎたある日、ケイト王子は友人のアルフレッド様を連れてやってきた。

将来はケイト王子の近衛騎士を志望しているそうで、2人の信頼関係はなかなかだそうだ。


アルフレッド様を見て、マリンは戸惑っていた。

後から聞いたらこのゲームの1番の推しだそうだ。推しってなに?と聞いたら崇める対象だそうだ。


「今はそんなに筋肉隆々じゃないから大丈夫、落ち着け私」


と、マリンは私の後ろで何度も深呼吸している。


私はつい先日クレント様の結婚式に出席したばかりだった。正式な当主になり、幼なじみのご令嬢と結婚してしまった。

ショックではあったけど、嫌な気持ちにはならなかった。

隣にいたマリンはクレント様以上の素敵な殿方見つけましょう。ケイト以外。

と、励ましてくれた。

でも、やっぱり元気がでない。初恋は実らないって、本当なのね。



「改めて初めまして、アルフレッド・グラッドです。この前はクレント様の結婚式でお見かけしましたね。ここには元気なご令嬢がいるそうですね」

と、私と同じ歳のアルフレッド様は笑った。

すらっと背の高い銀髪の好青年だ。

ケイトも背が伸びてきたが、まだまだ女性のような抽象的な顔出しをしているから、ぱっと見ると兄妹のようだった。そんなことは言えないのだけど。

「いつもならすぐ食ってかかるんだけどな。おーいゴリラ、腹でも壊したか?」

アルフレッド様を見て動揺していることに気づいたケイト王子はニヤニヤ笑いながらマリンを見ている。

「アルフレッド様、エリザベス・リコットでこぞざいます。以後お見知り置きを、あと」

「ま、マリン・リコットでございます、あの、本日はお日柄もよく」

マリンは顔を赤くしてしどろもどろになっている。こんなマリンは初めて見た。

ケイト王子はその様子を見てもっと機嫌を良くした。

「よし、マリン今日もやるぞ」

「えっ」

ケイト王子の言葉にマリンは顔を青くする。

「リコット家にくるといつもケイト様とマリン様は勝負事をしていると聞いて誘っていただきました」

アルフレッド様はいい笑顔でそう言った。

「しょ、勝負なんて!私は」

「この前だって木の上でそんなことでお姉様と婚約できると思って?!おほほほほほ!と、高笑いしていただろ」

ケイト王子はふふんと笑いながらマリンの真似をする。ちょっと似ていたので私は思わず笑ってしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・ケイトあとでボコす」

マリンはギリギリ私に聞こえる声でそう呟いた。


今日の勝負はかけっこだった。

直線距離を走り、侍女たちがもつ布の線の所まで行ったら勝ちだ。

ちなみに王子は次負けると10連敗の記録更新になる。

1コースにマリン、2コースになぜか楽しそうなアルフレッド様、そして急遽できた3コースにケイト王子がいた。

マリンは泣きそうな顔をしていたので私は中止させたかったがアルフレッド様がかなりノリノリで完全に止めるタイミングを失っていた。

「ではいきます、よーい!」

もう手馴れた王子の側近はどん!と手を上げた。

マリンはもうやけだ!と言わんばかりに駆け出す。アルフレッド様も騎士希望だけにすごい速さだ。ケイト王子も早い。3人ともほぼ互角だった。

3人ならんでゴールまで後一歩のところでマリンの足がもつれる。

「きゃ!」

「む?!まかせろ!」

それに気づいたアルフレッド様がマリンの腕をつかんだ。

マリンはそのままアルフレッド様に抱き上げられ。ゴールまで運ばれてしまった。

「すまない、腕を強く引っ張ってしまった。痛くは、なかったか?」

マリンをお姫様抱っこしたままアルフレッド様が申し訳なさそうな顔をする。

「あ、あ、いえ、あの、あああ」

マリンはアルフレッド様の腕の中で真っ赤になってしどろもどろになっている。

「しかし素晴らしい走りだった。ご令嬢が少しお転婆なだけだと思っていたが、とても、その、綺麗な走りだった」

頬を赤らめ、マリンを褒めるアルフレッド様、マリンは多分、そろそろ限界だと思った。



「あ、ありがとうございまーーーーす!!!」



マリンの頭から煙が見えた気がした。そろそろ止めないとと思いマリンたちのところへ行こうとすると、ケイト王子に腕を掴まれた。


「リザ、いや、エリザベス・リコット様、僕の婚約者になってください」


白い布を持って、ケイト王子は私の前に跪き、手をとって言った。

「あ!しまった!!」

アルフレッド様に抱っこされたままのマリンはそう叫んだ。

私はどうしたら良いかわからずその場で固まってしまった。

だってそうでしょ?ケイト王子はずっとマリンと競い合ってて、その理由なんてマリンから教えて貰ってたけど、楽しくてすっかり忘れたのだもの。

侍女たちや王子の側近たちはやっと・・・・・・・!!と言いながら拍手を送る。

私はどうしていいかわからず、困っているとケイト王子は立ち上がって言った。

「マリンとの約束で2年くらいかかってしまったけど、正式に婚約して欲しいんだ。リザにとってはマリンと同じ弟だと思っているのはわかってる。でも、きっと君に相応しい男になってみせる。だから、僕にとりあえずでいいんだ、君の婚約者にして欲しい。それでも君の気持ちが変わらないなら、諦めるから、多分」

「保険かけやがった!」

ようやくアルフレッド様から開放されたマリンが叫んだ。

「マリン様は面白いな」

マリンを見てアルフレッド様は笑う。

「今日会ってこんな事を頼むのは失礼だと思うが、マリン様、俺の婚約者になって頂けないだろうか?」

アルフレッド様の言葉にマリンはとうとう倒れた。

それを素早くアルフレッド様が抱きとめる。

侍女たちはマリン様ー!と、慌てていたが口々にこんなダブる求婚初めてです!!と言っていた。

私も失神できたらと思うけど、ケイト王子は私の手をがっちり掴んで離してはくれなかった。


「お願いリザ、ちゃんと僕を見て」


耳元でそう囁かれ、不覚にも私はドキドキとしてしまったのだった。


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