王子様とお話しました
そして、王妃主催のお茶会が行われた。
表向きは淑女たちの社交の場を提供との事だったけど、マリン曰く皇太子の婚約者の品定めだと言っていた。こういう場が何度かあったがなかなか決めかねているそうだ。
元々うちの家は王族との親しい繋がりの為、私が死んでから半ば強引にマリンは婚約者の座についたとの事だった。
母が死んでやりたい放題だった父を考えるとやりかねないな。と、思った。
「ケイト王子はちょっとお姉様の事好きだった節があって、それを主人公と重ね合わせるスチルがあったから、おそらく今日ロックオンされるはずよ」
あんなにポワポワして可愛い容姿からは想像できないほど鋭い目つきでマリンは言った。
可愛いドレスを着ているのになぜか戦場にでも行くような気迫の妹を見ながら、私はスチルってなんだろう。と、ぼんやりと思っていた。
会場に着くと、妹はいつもの通りなんなく淑女として立ち回り、王宮自慢の美味しいケーキやクッキーを食べていた。私もマリンに言われたとおり側を離れることなく美味しい紅茶やケーキに舌鼓を打っていた。
すると、一際高い歓声が一部から上がる。王妃に付き添われた王子の登場だった。
「きやがった」
マリンは小声でそう呟くと、バリッとクッキーを噛じった。マリンは基本的にはいつものマリンなのだけどたまに変な癖が出るようになった。そこもなんだか可愛いのだけど。
私は他の令嬢が見たら大変だからそれはおうちだけでしなさいと、やんわり注意しておいた。
王妃はまっすぐ私達の方へ向かってくる。あの事件以来全く会う機会がなかったからだろうか。
「王妃様、この度はお招きありがとうございます」
「ごきげんよう、王妃様、マリン・リコットでございます。本日はお招きありがとうございます」
私とマリンはそう言ってカーテシーをする。
「ええ、エリザベスもマリンもよく来たわね。待っていたのよ」
王妃はそう言って優しく微笑んだ。
「ちょこちょこ見たことはあると思うけど、改めて紹介するわ、息子のケイトよ。仲良くしてあげてね」
王妃の後ろに隠れた金髪の髪の男の子がもじもじしながら顔をだす。
まだこういう場に慣れていないだろう。確か、マリンと同い年だったと思う。
「ケイト王子、初めましてエリザベス・リコットです。隣は妹のマリンです。仲良くしてくださいね」
王子に視線を合わせ、私は微笑んでそう言った。
「は、はい、よろしくお願いします」
王子は顔を赤くして小さな声でそう返した。
「・・・・さすがカルディナの娘だわ」
立ち上がると、王妃は関心したような顔をしているし、マリンは空を仰ぎながら尊い・・・・と、呟いていた。
それから王子には他の令嬢も声をかけていたが、私の方にお近づきになりたいという頬を染めた令嬢もちらほら挨拶にきた。
その列を見てマリンは「握手会のようだ」と呟いていた。
そしているうちにお茶会は終了した。