悲しい前世を思い出しました
初めまして、よろしくお願いします。
※5/31 改行修正、一部加筆しました。
それは4つの時、両親に連れられて言った王家主催のお茶会の時だった。
幼い私は母がティーカップを持った瞬間、全てを思い出した。
前世は同じエリザベス・リコット。
4歳の茶会で毒を盛られた母が死に、継母としてきた女と娘にいじめられ、父に図られ皇太子暗殺の冤罪をかぶり15の時の処刑された。過去を。
今、思い出した。
「お母様だめーー!!!」
気づけば私は母に突進した。母は驚いた顔で私見た。
「リザ、どうしたの?」
「だめよ!!そのカップには毒がついてる!!私見たの!!お父様がお母様がカップを取る前に胸ポケットから小瓶を取り出して毒を入れたの!!」
泣きそうになりながら説明する。
ちなみにこれは罪人となった私を殴る際、父が吐き捨てた事件の全容だ。
「な、リズ何を馬鹿な事を」
父は明らかに動揺していた。それを見た母はギロッと父を見た。
「あら、ロータス。馬鹿なこと、と言っている割には何を顔を青くしているのかしら?」
カップを持ったまま母はゆっくりと父に歩み寄る。
母より頭ひとつ背が低い父はその威圧に泣きそうになっている。母は女の人だけど背が高い。父は平均身長のハズなのだが、完全に逆転夫婦となっている。
確か継母のロザンナは父より小さく小柄だった。
婿養子としてきた父はそれも気に入らなかったのだろう。
私を父はなじる時母親に似て図体ばかりでかくなりおって、と怒っていた。
「カルディナ、私が公爵の胸のポケットを確認しよう」
近衛騎士のクリス様が母の隣に立つ。
整った顔立ちの黒髪の青年だ。
母と彼、二人は幼馴染だった。
若くして近衛騎士になり、のちに騎士団長補佐にまでなった。
そういえば私が冤罪で捕まった時、最後までかばってくれていたのも、クリス様だった。
「貴様、やめろ!!」
父は声を上げるが、クリス様は他の騎士たちに指示して父を押さえつけた。
そして、
「ロータス公爵、この小瓶の中身は、一体何かな?」
クリス様が父のポケットから小瓶を取り出し、険しい顔をした。
「私聞いたの、お父様がレストリック家に遊びに行ったと時、お父様は侍女の手を取ってもうすぐ妻の座は君のものだ。この毒があればって」
私は母のドレスを握りしめて絞りだす様にに言った。
「そう、クレント、そんな話し聞いてる?」
クレントと、呼ばれた金髪の青年はふぅっと息を吐いた。レストリック家の次期当主だ。
「侍女にリズ嬢よりふたつしたの女の子がいてね、急なことだったし、念の為父親を聞いても黙ってるんだ。うーん、これは調べる必要があるねぇ」
クレント様はニヤッと笑うが目が全く笑っていない。
「クレント様」
私は不安な気持ちになってクレント様を見る。
「リズ、もういいよ。こっちにおいで」
クレント様はそう言って私を抱き上げてくれる。クレント様も少しして継母の盛った毒で亡くなるのだ。それも思い出して私は泣きながらクレント様に抱きついた。
「国王陛下がいらっしゃる前にこいつを連れて行け」
クリス様はそう言うと、騎士たちは暴れる父の腹を一発殴り連れて行ってしまった。
「リズ、貴方のおかげで助かったわ」
母はそう言って私の頬を撫でる。
「お母様!お母様!!」
私ははしたないとは思いながらも母に抱きついた。
母は何も言うことなく、私を抱きしめ返した。
周りの貴族からパチパチとまばらな拍手が聞こえた。
それから気を取り直したお茶会が始まり、その日は事なき終えた。
次の日、母の行動は早かった。
国王陛下に直談判し、父との婚姻関係を破棄させたそして、自分を当主に置いた。それから何故か父の子を持った侍女のリアンを自分の侍女とさせ、娘のマリンを養子として迎える事とした。
元々政略結婚で送り出された父は実家のリンガスト家に送り戻され、鬼のように怖い姉から再教育をされるそうだ。
そして、最初は抵抗を見せていた侍女のリアンだが、たった一日で母の虜になった。
元々女学院で多くの女性を虜にしてきた気高き麗人だった母。
黒い髪にツンとしながらも整った顔立ち、そしてスラリと伸びる背、そしてこれでもかという豊満な胸。
そんな母が侍女のリアンを落とすことなど造作もなかった。
その証拠に、後日届いた父から手紙を受け取ったリアンはあんな男と手紙を破り捨てていた。
そして、まるで憑き物が落ちたように穏やかになったリアンは晴れて母の侍女となった。
娘のマリンに対しても奥様がよりよい教育をしてもらえると言うことで二つ返事でマリンの養子を了承した。
「これからは仲良くするように」
母からそう言われ、まだ2歳のマリンを何故か私が面倒見ることになった。
ちなみに周りの貴族たちからは父が自業自得、母は可哀想な麗人でも物憂げなカルディナ様も素敵、そして私は勇気を持った令嬢と噂されていた。
2歳のマリンは素直でとてもいい子だった。
お姉ちゃまお姉ちゃまと後をついてきてきれるので、私も本を読んであげたりお絵かきをしたり散歩をしたりしてあげた。
母もリアンも微笑ましくそれを見つめては私達をかわいがってれた。
まるであの時のリアンが嘘のように表情が穏やかだった。完全に別人だ。
マリンも前の意地悪なマリンではなく、とんでもなくシスコンなマリンに仕上がってしまった。