野村くん家
タクシーは野村君が支払ってくれた。
「こっちだ。」
目的地のコンビニの裏に2階建てのアパートが有り、野村君はそこに入って行った。
2階の3つ目の部屋へ到着すると、そこには『野村』の表札が書かれていた。
えっ? ここって野村君の住んでいるアパート? 木下君が高級マンションに住んでいたので、他のメンバーも同じ様な所に住んでいると思っていた。
そんな考えが顔に出ていたのか、野村君が苦笑いをしていた。
「アイドルがこんな所に住んじゃ悪いのかよ。」
「そ、そんなこと無いですよ!」
「まあいい、ほら入った。」
鍵を開けて玄関の扉を開けたので、私も入ることにした。
少し家賃が高そうな感じはするが、一般の人が住んでいる所と大して変わらない感じだ。
玄関先に8畳ほどのリビングダイニングキッチンが有って、奥に大きさは分からないが2部屋ある感じだ。
他にも隣接してトイレとお風呂が有って、無駄に広くも無く、シンプルながらも生活しやすい感じだ。
「良いお部屋ですね。」
「そうか? そう言ってくれると嬉しいな。」
野村君が嬉しそうな顔でそう言った。その笑顔は卑怯です。
私は思わず目を背けた。
野村君が風呂場に干してあった室内着のスェットを取り出して私に渡してくれた。
「家には女物の服とかは無いんだ。スマンがそれに着替えてくれ。
左側の部屋が寝室になっているから、そこで着替えると良い。」
「分かりました。」
私は言われた部屋に向かう。部屋の電気を付けて中に入ると、クローゼットとベットが置いてある6畳程度の部屋だった。
私は制服のスカートを脱いで、ベットに一度置かせて貰うことにした。。
「あれ?」
ふと、ベットの上にぬいぐるみが幾つか置いてあったのが見えた。
その中に一つ、見覚えの有る人形が有った。私はその人形を手に取ってみた。
「パンだもん?」
只今、絶賛人気中で品薄になっている人形だ。何でこんな所に有るんだろう?
そんなことを考えていると、
ガチャ!
「綾小路、着替えるのはちょっと待って…あっ…」
「?」
何をそんなに慌てているのだろうか?
野村君の視線の先にはスカートを脱いでパンツ姿で『パンだもん』を抱っこしている私が…って、えっ?
「きゃああぁぁぁ~~~!!」
私は背を向けて座り込み、少しでも見えない様に『パンだもん』でお尻を隠す。
「す、スマン!」
野村君が部屋の外に出て扉を閉めた。
「見られた、見られちゃった、どうしよう…」
前回は胸で、今回はパンツ越しとは言えお尻も見られてしまった。恥ずかしい~!!
でも、やっぱり野村君に対しての嫌感情は起こらなかった。う~ん?
とりあえず急いで着替えることにした。
「おっきい…」
前回は被せただけだったが、今回は着ているので、より服の大きさを感じることが出来た。
何となく野村君に包まれている感じがする。
「……くんくん!」
そして匂いを嗅いでしまうのは仕方が無いことだと思う。
相変わらず、安心するような落ち着くような良い匂いだ。
「…っといけない、急がなくちゃ。」
私は脱いだ制服を持って部屋を出るのだった。
部屋の外では、ソワソワしている野村君が居た。
「お待たせしました。」
「ノックもせずに開けてスマン!」
「い、いえ、お見苦しい物をお見せしました。」
「そんなこと無い! 凄く綺麗…あっ! いや、その…」
「「・・・・」」
思わず赤面してしまった。野村君も真っ赤になっている。
え~っと、こういう時どうすれば良いのでしょうか?
埒も空かないので、私から話しかけることにした。
「えっと、どうしてドアを開けたのでしょうか? やっぱり私は襲われてしまうのでしょうか?」
「ち、違う! すでに手遅れだが、見られたくない物が有ってだな。その…」
「見られたくないもの? 『パンだもん』ですか?」
「それもモチロンだが、他にの人形とかもな。ほら、男性が人形って変だろ?」
「そうですか? 別に男性が持って居たとしても変じゃ無いと思いますけれど…」
実際私も男性の時にベットの周りは人形だらけですし。
「そ、そうか?」
「ええ。」
私がそう言うと、野村君は安心した様な顔をしてホッとしていた。
「俺はな、意外かも思われるかもしれないが、可愛い物が好きなんだ。」
「そうですか? 良いと思いますよ。実際『パンだもん』も可愛いですよね♪」
「あ、いや、『パンだもん』については可愛いと言うよりは、綾小路が持って居たからってのが有って…その、なんだ…そう言うことだ。」
「あ、は、はい。」
どうやら『パンだもん』については、私が原因だったらしい。ちょっと残念。
だけど、ふと気になったことが有ったので聞いてみることにした。
「あの…野村君は、男性が好きとか、そう言ったことって有りますか?」
「はぁ? 何を突然。男性が好きってあり得ないし、全くそう言ったことは無いぞ?」
どうやら私みたいに、性同一性障害とかそう言ったことは無いみたいだ。良かった。
「それがどうしたんだ?」
「あ、いえ、大した意味は有りません。」
「そうか。」
とりあえず覗き(?)による問題は落ち着いたみたいだ。




