覚悟
お昼休みになり、遥ちゃん、優紀ちゃんと一緒にお昼を食べながら雑談している。
「ねーねー遥っちー、モデルの仕事どうだった?」
「すっご~~~~~~く、楽しかった!!」
「ほほぅ? それでモデルの撮影ってどんな感じだったの?」
「えっと、最初に明日香ちゃんとのツーショットを撮った後は自由にして良いって言われてさ、買い物したりお茶したりしている所をパシャパシャって感じ?」
「そうなんだ、てっきり『いいね、いいねぇ~、じゃあ次はちょっと肩を出してみようか~』とか言われるのかと思ってたよ~」
「何それ~! そんな訳無いじゃん!」
そう言って優紀ちゃんと遥ちゃんが笑いあっている。
でも、私は撮影と肩を見せるって台詞から、ふと昨日のことを思い出した。
もし、あのまま野村君が来なかったら私は今頃どうなっていたんだろう…
いや、分かり切った話だよね。きっと最後まで無理やりされていたと思う。
何はともあれ野村君が助けてくれて良かった。
カッコいいのは勿論だけど、気を使ってシャツを被せてくれる優しさも…あれ?
えーっと、もしかしたら…いえ、もしかしなくても、間違い無く胸を見られた!?
いや、逆にあの状況で見えて無い方がオカシイよ!
私は恥ずかしさのあまりに顔が熱くなった。
見られちゃった! その思いだけが頭の中に繰り返される。
でも、不思議と木下君の時に感じた嫌な気持ちは全く無く、ただ恥ずかしい気持ちだけだったのは何でだろう?
やっぱり心まで女の子になっちゃたのかな?
そして、突然不安に胸が押しつぶされる感じがした。嫌われたらどうしよう? …って誰に?
多分、野村君にだろうけど、でも何で? 何でだろう? 胸? いや体?
木下君に見られたから? 触られたから? 少しは関係しているかもしれないけど多分違う? じゃあ何だろう?
「…ちゃん、明日香ちゃん!」
遥ちゃんの声に意識が浮上する。
「あ、ごめん、聞いてなかった。何?」
「何か考え事してたみたいだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫。心配かけてごめんね。」
「のーぷろぶれむ。」
遥ちゃんがそう言ってくれた。
考えが纏まらなくてモヤモヤするけれど、今は遥ちゃん達との会話を楽しむことにししよう。
その時教室に女の子が入ってきた。あの子は確か隣のクラスの子だ。
「優紀~、英和辞典貸してくれない? 忘れちゃってさ~」
「仕方ないなぁ~、100円でいいよ~」
「え~! 何それ~!」
「あはははっ、冗談だって、はい。」
私は、そんなやりとりを見て気が付いた。と言うかショックを受けた。
そうか…そうだったんだ。この体は私のでは無くて、あくまで一時的に明日香から借りている物だった。先ほどの不安感はこれだったんだ。
私の自由にさせて貰っていたから、つい忘れがちになっていたが、この体はあくまで明日香の物だ。
それなのに、モデルをやったり、私の不注意で危ない目に遭わせてしまったり、勝手に人を好きになってしまったりと、明日香に迷惑を掛けてしまっている。
何をやっているんだ私は!!
それに例え野村君が興味を持ってくれたのだって、あくまで明日香であって、私じゃ無い!
「明日香ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」
ショックを受けた私を見て、遥ちゃんが気にしてくれた。
「ごめん、大丈夫だよ。」
私は微笑んで遥ちゃんに返事をした。
「え? あ、う、うん。」
突然雰囲気が変わった私を見て遥ちゃんは戸惑っている。
でもそうだ、これで良い。私はあくまで明日香が戻って来るまでの代りだ。
あまり明日香のイメージを壊してはならない。
「ごめんね、ちょっと席を外します。」
私はそう言って教室を出ることにした。
「あ…」
遥ちゃんが何か言いかけたが、そのまま私は教室を後にするのだった。




