買い物
放課後になった。
「じゃあ、頑張って説得して来ます!」
ビシッっと敬礼をして遥ちゃんは帰って行った。
今日は部活を休むみたいだ。良いのだろうか?
遥ちゃんもメールをしたのだが、さすがに即決は出来なかったみたいで、今晩家族会議をするそうだ。
是非とも頑張らないで欲しい。
さてと、私も今日は部活が無いので帰ることにする。
「あの…」
帰ろうと廊下を歩いていると声を掛けられた。
振り向くと、そこに浩美さんが居た。
「あ、浩美さん、こんにちは。
今から帰り?」
「こんにちは…
うん、帰り…でも、明日香さんのお願いが有って…」
「何かな?」
「明日香さんのぬいぐるみの材料、私も欲しいかなって…」
そうだった、前のが完成したらって言ってたし、挑戦してみるつもりなんだろう。
「一緒に買いに行こうか?」
「いいの?」
「今日は部活も無いし、問題無いよ。」
「…お願いします。」
こうして私と浩美さんで買い物に行くことになった。
・・・・
ショッピングモールの手芸用品店へとやってきた。
お店の前までやってきて、ふと違和感を感じた。何だろうか?
「…あっ! 『パンだもん』ぬいぐるみが無くなっている!」
違和感の正体は、あの動画の原因にもなったぬいぐるみが無くなったからだった。
そこに店員がやってきた。
「すいません、『パンだもん』は売り切れてしまって、ただ今入荷待ちとなっております。」
「そうだったんですね。」
『パンだもん』がそんなにも人気商品だったとは知らなかったな。
「以前は1日2,3個売れれば良いくらいだったのですが、例の動画が出回ってからは常に品薄状態になってしまったんですよ。」
私が原因だった。
浩美さんが何かを言いたそうな目をしていた。
「どうしたの?」
「あの笑顔だから仕方がない…と思う。」
「あーうん。」
自分が言うのも何だが、確かに明日香は可愛いからな、仕方がないかもしれない。
ふと、視線を感じたので辺りを見渡してみた。
何人かの人がこちらを見て話しをしていた。
「ね、もしかしてあの子って。」
「そうかも、白百合学園の制服着てるし。」
「でも、見た目が…」
「そりゃあ、目立つし変装くらいするでしょ?」
「なるほどね。」
あ、ここに居るのはマズイかもしれない。
「浩美さん、ほら行こっ。」
さっさとお店の中へと入ることにした。
「浩美さんは何を作りたいの?」
「うさぎさん…」
「そっか、前のもそうだったし、うさぎさんが好きなんだね。」
「うん…」
浩美さんが羊毛フェルトを選んでいる。どうやら白うさぎを作るみたいだ。
必要な道具と、『羊毛フェルト人形の作り方』の本を手に取っていた。
「作り方なら教えるよ?」
「大丈夫…自分でやってみたいから…
それに明日から休みだし…」
「うん、わかった。
じゃあ、どうしても分からないことが有ったら聞いてね。」
「うん…」
材料も買ったし、帰ろうとした所で声を掛けられた。
「君可愛いね、どう? 喉か沸いてない? 少しお話ししようよ。」
これは完全にナンパだな。見た目もチャラい。
浩美さんは私の後ろに隠れてしまった。
「いえ、私達はこれから帰るので遠慮します。」
「そんなこと言わないでさぁ~ ちょっだけ付き合ってよ。
あ、そっちのは良いから帰って良いよ。」
しつこいなぁ…
それに浩美さんへの態度も許せない!
「急いでますので、それでは。」
私は浩美さんの手を取り、急いでその場を去ろうとしたら、手首を掴まれてしまった。
「いいじゃん、そんなつれないこと言わないでさぁ~」
「離してください!」
こうなったら力ずくでやるしか無いかな?
そんなことを考えていたら。
「あ、明日香、悪い遅れた。待ったか?」
少し息を切らせて男性がやってきた。
これはもしかすると助けに来てくれたのかな? なら合わせておくことにする。
「もう、坂本さん遅いですよ~
御蔭で、こうしてナンパされちゃったじゃないですかぁ~」
「ちっ、野郎付きかよ…」
ナンパ男は舌打ちをして去って行った。
ナンパ男が見えなくなったので一安心だ。
「助かりました。ありがとうございます。」
私が頭を下げてお礼を言うと、坂本さんは焦って
「な、何、見かけたら困ってたみたいだからな。
それより合わせてくれた助かったよ。」
「全く知らない人でしたら、合わせなかったかもしれませんね。ふふっ。」
言ってて可笑しかったので、にっこりと微笑んだ。
「あ…かっ…」
坂本さんが真っ赤になって、口をパクパクしていた。
「どうしましたか?」
「い、いや…な、何でも無い。」
坂本さんはそっぽを向いてしまった。
「そうですか。友達も居るので私達はこの辺で失礼します。
お礼は今度何かしらの形で変えさせてもらいますね。
それではまた…」
「あ…ああ、わかった。」
私達は坂本さんと別れ、帰ることにした。
お店を出た所で浩美さんがぽつりと呟いた。
「怖かった…」
「ごめんね。」
「ううん、明日香さんが居たから大丈夫だった。
ありがとう…」
「どういたしまして。」
正確に言うと、私のせいで巻き込まれたっぽいし、庇うのは当然なんだけどね。
「じゃあ、私の家こっちだから…
今日は付き合ってくれてありがとう…」
「うん、それじゃ、また部活でね、バイバイ~」
「バイバイ…」
私達はそれぞれの家へ帰るのだった。




