母からの電話
朝になった。
身支度を済ませて髪型を決めるのだが、今日は髪型はそのままの予定だ、髪を梳かしたら今日は終わりである。
部屋を出るとお手伝いさんが挨拶してきた。
「おはようございます。お嬢様。」
「おはようございます。」
挨拶を済ませた所でお手伝いさんが聞いてきた。
「昨日お嬢様らしき人物がネットに上がっていましたがご存知ですか?」
「うっ…は、はい。」
「やはりそうでしたか、お嬢様もあんなお顔が出来たのですね、とても可愛らしかったですよ?」
「うぅ…」
恥かしくて顔から火が出そうだ。
「それで、今日はその恰好ですのね。」
「…はい。」
「一応間違いの可能性も有りましたが、奥様と旦那様にも報告だけはさせて頂きました。」
「…仕方ないですよね。」
こればっかりは内緒にする訳にも行かないね。
その時、家の電話が鳴り、お手伝いさんが電話に出た。
「はい、綾小路です。
…はい…はい、いらっしゃいます。
お嬢様、奥様からお電話です。」
どうやら母親からの電話だった。
電話に出ない訳にも行かないので、出ることにした。
「…もしもし?」
「明日香ちゃん~!! と~っても可愛かったわ~!! お母さん感動しちゃった~!!」
「え、えと、その…」
「記憶が無くなった後のあのメールで色々と心配してたけど、これなら大丈夫そうね、安心したわ。」
「あ、あの、お母さん?」
「なぁに?」
「あの動画は勝手に取られてアップされたもので、肖像権やらでお母さまにご迷惑をお掛けするかと。」
「うん、多分そうじゃ無いかなと思ってた。
安心して? その辺はこっちで全部やっておくから。」
「ごめんなさい。」
「良いのよ、親が子のために何かをするってのは当たり前なんだからね。」
「…ありがとう。」
「ご飯はちゃんと食べてる? 体の調子は悪くない?」
「はい、キチンと食べてますし、何処も悪く有りません。」
「そう、よかった♪」
「じゃあ、お母さん忙しいから電話切るね。何か有ったら連絡頂戴ね。
今度帰った時は、色々とお話ししましょうね♪」
「はい。」
電話を切ると、温かい目でお手伝いさんはこちらを見ていた。
「さあ、朝ごはん用意しますね。」
「あ、その前に、これお返しします。」
私は眼鏡ケースを取り出し、お手伝いさんへ渡した。
「残念です。とってもお似合いでしたのに…」
そう言ってはいたが、受け取ってくれた。
その後は用意してくれた朝食を取り、学園に向かうことにした。




