教室
山下先生がある扉の前で止まり、こちらを振り向いた。
「ここがお前の教室だ、席は窓際から2番目の前から4番目だ。
教室へ入ったらそのまま席に着いてくれ。」
「わかりました。」
扉の向こうからは女子の楽しそうな声が聞こえている。
こういう所はお嬢様学校でも、普通の高校でも大して変わらない物らしい。
山下先生が扉に手を掛け、勢いよく開けた。
ガラッ!
「チャイムはすでに鳴ってるぞ~ さっさと席に着け~」
ざわめきがピタリと止まり、蜘蛛の子を散らす様にドタバタとみんな席に着く。
私もそのドタバタに紛れて自分の席に着いた。
「それじゃ、出席を取る前に、ちょっと連絡するぞ。
見ての通り今日から綾小路が復帰した。ただ、ケガをした際のショックで多少記憶に混乱が有るそうだ。
悪いが、みんなで助けてやってくれ。」
「「「は~い。」」」
初めが肝心だって言うし、一応挨拶しておくか。
僕は立ち上がり、周りを見渡して挨拶した。
「綾小路 明日香です。
先ほど山下先生が言った通り、みなさんに対する記憶が有りません。
なので、みなさまに大変ご迷惑をお掛けするかと思いますが、宜しくお願いします。」
私がそう挨拶すると、クラス中がザワザワしていた。
「え? ホント? 嘘!」
「でも、雰囲気も話し方も違うよ?」
「それって記憶が無いからじゃない?」
「マジ? そんなことって有り得るの?」
「実際違うんだし、そうなんじゃない?」
うん、思った通りの反応みたいだ。
これで多少性格が違ってもなんとかなるだろう。
ふと、朝会った遥さんがこちらを向いて手を振っていたので、振り返しておいた。
すると、何かを思いついた遥さんが、手を上げた。
「先生~!」
「なんだ?」
「折角だし、明日香ちゃんのために自己紹介しませんか?」
「そうだな、みんなも良いか?」
「「「良いで~す!」」」
「じゃあ、私からだね、私は青井 遥、明日香ちゃんの親友だよ~覚えておいてね♪」
「次は私ですね、私は井上 茜です。クラスの委員長をしていますので、困った時は声を掛けて下さい。」
「私はね~薄井 優紀だよ~ 宜しくね♪」
こうしてクラスみんなの自己紹介をしてもらった。
覚えるのは大変だったが、間違えるのも失礼だし、一生懸命覚えるのを頑張ったのだった。




