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皆さんは超能力というものはご存知だろうか?
念能力や発火能力、透視能力などに代表される異能のことだ。
そんなの知ってる?
まぁそうだよな。超能力なんて今じゃ人類の7割の人が使えるんだし。
じゃぁ、その異能の原動力は何かというのは?
精神力?生命力?
ノンノン、そんな非科学的なものじゃない。
答えは『PSI粒子』だ。
なに?名前がそのまま?それを俺に話したって意味ないだろ。決めたのは学者だ。でも俺はわかりやすいから好きだぜ。
まぁそんな話はさておき、『PSI粒子』の話をしようじゃないか!
これが発見されたのは2022年、とある学者が大気中にある未知の粒子を発見したのがきっかけだった。発見当時は科学雑誌、学会が大々的に取り上げ世界的なニュースになった。
粒子の研究をしていたのはとある日本人だったそうだ。その研究者は「この粒子は人間を次のステップへと押上げてくれる夢の粒子である」と宣言し、国や企業から多額の研究費を集めた。
そしてその10年後、研究者の言葉は現実となった。
大気中に漂っているPSI粒子が一定値以上になると人はこの粒子を知覚することができるようになるのが明らかになり、そしてあろうことか操ることさえ可能になった。それが念能力や発火能力など個人それぞれ違った操り方ではあったが。
まぁ、そんなことがわかれば次になにに使われたか想像できると思うがあえて言おう。
戦争に使われた。
まぁ、当たり前だよな。能力が使えれば一人で何人も殺すことができる。ましてや能力者って奴は銃が効かないのが多い。
そんな人間兵器が生み出されたら使わずにはいられなかったのが人類って奴だったんだ。
それのおかげで世界中に人工的に作られたPSI粒子がばら撒かれ大気中に漂っている粒子濃度は高くなり今では人類の7割が超能力者になったって話なんだ。
今ではもう平和だし、戦争も50年前の話だから今の若者には関係のないことではあるがな。
じゃ、なんでそんな話をしたかって?
まぁ、その粒子を見つけたのが俺の爺さんって言うのも関係あるが、俺の超能力にも関係があるんだよ。
「俺はその粒子を操ることができる能力を持っているんだよ!つまりは粒子操作能力!この能力は最強!他人が操る粒子にさえ干渉でき、相手の粒子操作を妨害することが出る!つまり、相手の能力を封じることができるのだ!これを最強の能力と言わず何と言うのだ!そしてさらに粒子を自身の肉体に取り込み身体能力を強化もできるし、粒子を纏えば肉体の耐久力も上昇する!強い!全く強すぎるぜ!」
そう!俺は類い稀なる能力の持ち主なのだ!他にこのPSI粒子をそのままの状態で操ることができる能力者は未だいない。俺だけの能力!これはとても便利なんだ!
粒子の知覚能力は他の能力者の10倍!操作の精密性も他の能力者を凌駕する!こんな能力が弱いはずはない。ないのだが…
「またその話か明人。わかったわかった。お前のその使えない能力がどれほどすごいのかはわかったよ。例え相手の能力に干渉できても相手は操作しづらくなるだけで大して無効化できないけど、とってもすごい能力だと思うよ。身体能力強化と耐久強化も肉体変化系能力者に劣るけど。とっても個性的で強い能力だよ。粒子が操作できるだけで変化はさせられないけど…すごいよほんと。」
「やめてくれ正人その言葉は俺に効く。やめてくれ」
ところがどっこい現実は甘くないらしい。例え知覚能力がいくら高かろうが世界に一つだけの能力を持っていようが関係ないのだ。
使えないものは使えない
「いい加減夢見るのやめろ。研究所の人からめちゃくちゃ声かけられたんじゃねぇーか。そっちの道に行けよ」
研究所というのはまぁ、想像できると思うがPSIを研究するところだ。研究職の中でも一番注目されている分野だし国や企業も出資を渋らないから好きな研究をし続けられる。さらに給料もいい。
だからってつきたくはないなんたって…
「おまえ!俺の爺さんが最後にどうなったか知ってるだろ!研究職なんてつきたくねぇーよ!逆恨みで殺されるなんて真っ平だ!」
俺の爺さんは車で移動中にボカンと1発爆弾を投げ込まれてそのまま昇天しちまった。俺がまだ2歳ぐらいの時だ。記憶は定かではないが俺の家はすごい慌てようだったらしい…
「それはそうだけどさ…今平和だし、問題ないんじゃない?」
「た、確かにそうかもしれないが、いや。それだったら俺の爺さん死なねーよ。爆弾使われたんだぞ。どこが平和だよ。」
騙されてたまるかってんだ。俺の能力は研究している人なら喉から手が出るほど欲しいだろう。実際この能力が発現してから多くの研究者から声をかけられたが、その声をかけてきた奴らの目がめちゃくちゃ怖い。
アレは俺を人間としではなくモルモットととしか見ていないだろう。そんな奴らと一緒に仲良く仕事なんか出来るわけないだろ。
「まぁ、そうだろうが、俺らももう高校2年だし、そろそろ互いに進路考えなきゃな。っと、もう駅か。俺反対側だからそれじゃまた明日な!」
そんなこんなで話しているうちに駅に着いた。正人は俺に手を振りながら反対側のホームに向かう。
「おぉ、じゃまた明日な!」
軽い挨拶をして俺もホームに向かう。数分後には電車が来て何事もなく最寄駅についた。
駅から出て駅前にある商店街を抜け、細い路地に入った時にそれは起きた。
「ん? なんだこのPSI粒子の集まり。こんなに集まってんの見たことねーぞ。」
道のど真ん中にPSI粒子が集まっていた。粒子密度が濃く、光を発するほどになっていたが、不思議と神秘的な光景に明人は見えていた。
「これ程粒子が集まって暴発し無いのは凄いな。普通なら何かに変質して暴発してもおかしくない。」
そんなことをぶつぶつ呟きながそれに触れた瞬間、PSI粒子が明人の体にまとわりついてき、手脚を締め付けるほど強い力が明人を襲った。
「うぐ、なんだこれ!まさか触っちゃヤバイ奴だったか!くそ!なんでPSI粒子がこんなん動きすんだよ!これじゃまるで…」
俺の能力みたいじゃねーか、そう思いながら自分の能力を使おうとするが時すでに遅し、視界すらもPSI粒子に奪われ、膨大なPSI粒子がまとわりついて自分の扱えるPSI粒子すら知覚できないほどになってしまった明人には為すすべはなく、ただこの粒子の流れに身をまかせるしかなかった。
「くそ!くそ!くそ! なんでこんな訳わかんねぇー
事になったんだよ!」
叫んだところで何も変わら無い。明人は粒子の締め付けがさらに強くなった事に苦痛に顔を歪ませなが、その意識を闇に落とした。