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ハタオリ王子

作者: 無敗の藤原

前田まえだ 松生しょうせい17歳!容姿普通、学力普通、特技なし、どこにでもいる普通の高校生!


ではなく


容姿端麗、頭脳明晰、6歳で国際ピアノコンクールで優勝、7歳で剣道4段、8歳で将棋のA級棋士、9歳で数学オリンピックで優勝、10歳で50m走5.89秒等々……


とにかく個人で記録を出せるものは一年ごとにジャンルを変えて挑戦し続けた。誰もが認める天才。

それが俺、前田松生である。

しかしそれは13歳までのこと。神童と言われた俺は、あるものを知ってしまってそこから転落してしまった。



女だ。


13歳のときクソ下らん女に恋などという無駄な感情を抱いてしまっせいで時間を浪費した。

この話を聞くと大抵の人間は振られたんだと勘違いするのだが、それは哀れな頭脳しか持っていない者の単純変換とも言うべき粗末な結果だ。


当然俺はその女を手にした。しかし、これだけでは満足できなかった。常に世界のトップであり続ける俺はどんな女も手に入るという確証が欲しかった。

モテるためのあらゆるテクニックをマスターし会話を弾ませるために膨大な雑学を身に付け、バカ特有のノリも理解した。その結果



11股になってた。


気がつけば17歳。神童と呼ばれたあの勢いのまま過ごしていたらもう4つの種目で活躍していたのだ。

その事が悔しくてたまらない。

もう一度人生をやり直すんだ。もう一度。


そう思い立って、ようやく11人全員と別れることが出来た。そこが現在。


既に障害となる要素を見つけてしまった。それは俗に言う『恋愛フラグ』

学校の廊下で肩をぶつけた女が上目遣いで俺を見た。たったそれだけのことなのだが、あの目を知っている。数々の経験をした俺だからこそわかる。



恋に落ちてると!!



だがしかし!俺はもう女とは関わらないと決めたんだ!

「よそ見してんじゃねぇよ!ブタが!」

これで完璧。

あばよブタ女。二度と俺に触れるな。



とか思っていたよく翌日。

「私達、よくぶつかりますね!」

じゃねぇよ!

「いや、そんなことないんじゃないか……」

この場面、目を逸らすしかないだろ。

確かにあのとき恋愛フラグを折ったはずなのに……。

「運命かも……。」

ねぇよ。

しかしこの俺、前田松生は女に好かれるテクニックを熟知している。その逆もしかり。嫌われる方法も分かっているのだ。

ただ罵倒するのではない。


「おいお前、この学校に足りないものは何か言ってみろ!」

「足りないもの?……えーと、制服が可愛くないことですかね」

「甘いな!いいか、なにかが足りないと思うのであれば自ら行動しろ!お前はその他力本願な性格のせいで人生を棒に振ってきたのだ!制服が可愛いところに入れなかったのはお前の学力がなかったからだ!!」

女は自分の意見を否定されると相手を嫌いになる。そして一方的に長々と説教されれば尚のこと。

「この学校はうちの県で一番頭いい学校ですよ」

効いていない……だと……!?

……ならば次の手!


「おいお前、おっぱいが大きいな」

決まった!女は下ネタに対応できない。特に体のことを悪く言われて腹がたたないやつはいない。

流石のブタ女も顔を真っ赤にして俯いたままだ。

この勝負、俺の勝ちだな。

あばよブタ女。二度と俺の前に現れるな。


「待ってください!ハンカチ落としましたよ?」

なに?……ハンカチならこの胸ポケットにあるじゃないか。

「このハンカチ洗って返します!」

「しらん!そんながらのハンカチは見覚えがない!」

「確かにあなたのです!明日返しますから絶対受け取ってくださいね!」

「だから知らんといってるだろうが!!」

この俺が押されているだ……と……。



その翌日。

「ハンカチを受け取らないとここを通すわけにはいきません!」

「どうやら何がなんでもハンカチを渡す気のようだな……」

しかしこの間合い……。俺のフィールドといって差し支えない。

「俺は……剣道4段なんだー!!うおぉー!!」

「貴重な情報ありがとうございます!私はバスケ部なんです!ディフェンスが得意なんです!」

「やめろ!余計な情報を与えるな!」

「あなたは私と関わりたくないようですが、どんどん私のことを知ってもらいますよ!」

廊下を通るか守るかの攻防戦のなか、こいつは言葉で俺を撹乱かくらんしようとしている!?しかし、女と関わらないと決めた以上こいつの情報を得るのは耐えられない。

「何を言ったか聞こえんなぁ、俺は難聴なんだ!」

「聞こえていなくとも言わせてもらいます!私のバストは95センチです!」

何だと……!?こいつ………下ネタを克服しやがったのか!!?

「動きが止まりましたね!大人しくハンカチを受け取ってもらいますよ」


負けた……。

女は努力しない生き物だと思っていたのに……。まさか下ネタを克服するなんてことがあり得るのか……。


「……おいブタ女。ハンカチは受け取ってやるが、二度と俺に関わるんじゃないぞ……!」

「考えておきます!」



その翌日。

「お弁当一緒に食べましょー!」

「……。」

「どうしたんですか?お昼ごはんは親指の爪ですか?」

「違う!これはイライラしたときについ噛んでしまうんだ!」

「じゃあ早くお昼ごはんを出してください!」

おかしい……。昨日はもう関わらないと約束したと言うのになぜこいつはここにいる。

まさか、考えますっていうのは本当に考えただけだというのか?

ありえん、非常識だ。


このシチュエーションで嫌われるには……そう、他人の悪口!

とでも言うと思ったか!女は他人の悪口に共感する。この場合は逆効果。

ならばこいつの好きなものを否定する作戦だ。

「おいお前、好きなものはなんだ?」

「このお弁当の中ならミニトマトちゃんですかねー」

「俺は嫌いだ!」

「えーこんなに美味しいのに……」

たいしたダメージではなさそうだな……ならば。

「好きな芸能人とか歌手とかはいないのか?」

「私のこと気になるんですかー?」

「違うッ!!」

……思わず立ち上がってしまった。

作戦を変えるか。

「俺は趣味で株取引をしていてな、資本金が1000万貯まったら会社を立ち上げるんだ」

女は自慢話をうざがる。

「へぇーそうなんですかー」

「俺は過去に11人の女と同時に付き合っていたことがあるんだぞ!」

「そんなことを大声で喋ったら、私としてはライバルが減って嬉しいですが」

「なぜだ!!どうして嫌いにならんのだ!!」

「あなたは大きな勘違いをしています」

「なにぃ?」

「私があなたに好意を寄せているのは13歳のときからです」

「なんだと!?」

「あなたは私のことを覚えていないでしょうけど、別れたからって簡単に嫌いになれるわけないんですから」


ゴクリ。


「覚悟してくださいね」

女とは関わらないと決めた。決めたのに。こんなこと……。

テーマは『一度好きになったら、なかなか嫌いになれない』

逆の意見もあると思うんですけどね、100年の恋も冷める瞬間みたいな。

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