俺の貞操観念は世界一ぃぃぃぃっ──だといいな
と、3人についてふと気になった事が。
「てか、お前ら部屋どうすんだ?」
「え、部屋……ですか? それはもちろんこの家の空き部屋を使おうとは思ってますが……ねぇ?」
「そうですね」
「うちら元よりそのつもりにゃ」
なんか勝手にこいつらの中では家の空き部屋を使う算段になっていたらしい。
まぁ、普通考えるとしたらそうだろう。アニメなんかの居候のお決まりは空き部屋か押し入れと相場は決まっている。そう考えれば確かに合理的だな。
──だが無意味だ。
「あー、そう考えて貰ってる中悪いんだが──この家空き部屋無いんだよな」
「「「な、なんだってー!?」」」
「わざとらしく驚くな。んで、ついでに言うと押し入れも大概物が入りきってるし、空いてても押し入れ自体が狭いから寝泊まりは不可能なんだよな……」
「で、ではマスターの部屋に3人で寝るのは」
「あの部屋に3人分も布団敷けん。かといってベッドに入れたら俺の理性が持つかどうかが分からんし──」
まぁ俺だって男の子ですし? 美少女3人と一緒の部屋で寝たいって願望はありますよ。
──だがそれによって俺の理性が保てるかと言われれば、それは保証できない。
仮にも俺は17歳の高校二年生。エロ知識や性欲は一般人並みにはあるんだ。エロ本だってベッドの下にゲフンゲフン、いやそんなことは関係ない。
もしそんな理由で致してしまったら、それは最早畜生の所業。俺は自分で自分の命を絶ってしまうかも知れぬ。
故に、「ヤるのは18歳になって結婚出来るようになり、独り立ちして相手と自分をきちんと養えるようになってから」と固く心に決めているのだっ!!
しかしそんな信念も、あまりに多くの誘惑が続けば、その思いもブレてしまう──
多くの誘惑を掻い潜って──俺は、自分の信念を貫き通す事が出来るのか!?
率直に言おう──出来ない。
だから、悔しいが神楽の意見は却下せざるを得ないのだ。
どーせ俺は豆腐信念ですよ、ええ。
「ご、ご主人様がお望みでしたら、その……いっこうに襲っていただいて構いませんよ?」
「その俺が望んでねぇんだよ理解しろよおいっ!」
「ひ、避妊薬くらいならすぐできるから今晩から襲っていいですにゃ!」
「襲わねぇしそんな物作んな! その技術と努力を別の方に向けろよっ!?」
「私の身体の発育が悪いのでしたら、マスターが満足出来る身体になるように誠心誠意発育に力を注ぎますが」
「いやお前は充分成長してるからね!? それ以上大きくなられても困りますからっ!!」
心なしか頬を赤く染めて発情している3匹にそれぞれ突っ込みを入れてやる。「下半身で物事考えるな」と後で命令しておかなければ。
と、気付けば皿の上のサンドイッチは跡形もなく姿を消していた。げに恐ろしや獣耳っ娘。今日からの食費が心配だ。
「んじゃ、3人で後片付けしておいてくれ。俺はちょっと母さんに連絡入れてくる」
「「「承知しました、ご主人様♪」」」
3人にそう告げてリビングを出ると、自室に戻って母親に電話を掛ける。
俺の両親は海外で事業をとある事業を展開していて、今はそちらで暮らしているのだが、結構儲かっているようで俺へのお金の羽振りもいい。この家だって俺が高校生活始める際に俺用としてキャッシュで買ってくれた物なのだ。しかも良物件。
しかし俺が美少女3人と同居することを許してくれるかどうか……。生活費は確実に捻出してくれるだろうが、かなり心配だ。
若干緊張で胃を痛くしながらも、スマホの電話帳を開いて、母に電話を掛ける。
『──葛城洋子ですよぉ?』
「あ、母さん? 僕だけど」
電話を掛けてきっちり3コールで母親のロリ声が耳に入る。
『んー、それだけだと私の奈央ちゃんか分からないなー? それじゃあ問題! 「お母さんの特徴を5つ挙げなさい」っ』
「『身長130センチ髪は茶、ロリコンホイホイ見た目10歳前後の36歳』」
『だーいせーいかーい! んもぅどうしたの奈央ちゃん? お母さんが恋しくなっちゃったの?』
「いや、別に恋しくなっては無いけどさ……」
しょっぱなから息子へのラヴ全開な母親に俺は頭を抱える。
実を言うとさっき挙げた特徴は全て本当の事なのだ。
どう足掻いても見た目は10歳前後の幼女。しかしその実態は、17歳の息子を育て上げ、父親の運営していた会社を数年で世界レベルの企業にまで成長させた36歳の凄腕女社長なのだ。
母親曰く外見と同じくらいから全く成長しなくなり、そのままここまで来てしまったのだという。その為色々と苦労してきたらしく、アルバイトもろくにすることができず、中々就職もできなかったとか。
ちなみに今でもその外見を悪用して電車や映画館を始めとする場所の料金を幼児一人分でちょろまかしてるのは内緒だ。
「で、早速本題なんだけど」
『了承』
「いや早すぎんだろまだ内容言ってないだろ」
『えへへ~冗談冗談。で、内容は?』
「あー、うん。女の子3人居候させていい?」
『あ、ゴムはリビングの棚の右から二番目にあるから』
「なんで避妊具の場所教えられなきゃいけないんだよっ!?」
どうも俺の周りの乙女の大半は物事を下半身で考えているようだ。どれだけ俺は性欲の塊と認知されているのだろうか。誠に遺憾である。
『んもぅ、分かってるよ奈央ちゃん♪ その3人とは仲良く出来そう?』
「ああ、なんとか」
実際命令1つで動いてくれるから心強い。かといって奴隷扱いする気は一切無いが。
『ならオッケー♪ 一時間くらいしたらお金入れるから、その3人の家財用具買ってあげてねぇ。あ、服は奈央ちゃんに着せようと思って買ってたやつがあるからそれ着せてあげて♪』
「えっ、なんすかそれ? 初耳なんすけど」
『えー? だって奈央ちゃん女の子の格好したら可愛いじゃない? だから定期的に着せてあげようかな──って』
母親のその言葉を聞かされ、俺の黒歴史が甦る。
あれは数年前。当時中学生だった俺は母親の策に嵌まり、賞金50万を掛けた女装コンテストに無理矢理出場させられたのだ。しかも俺の意に反して、結果はグランプリ。その結果、地元雑誌や新聞社の連中に追いかけ回される日々を暫く送らざるを得なかったのだ。
さらにそれを知っていた連中が去年の高校の女装コンテストに飛び入り参加させやがって、そこでもグランプリ。今度は女子やホモ軍団に追いかけ回された。
本当にその事実だけは隠蔽したいのだ。割とガチで。
『それじゃ、四人で頑張ってねー♪』
その言葉を最後に、母親の電話は切れた。
しかし、3人の同居を許されたのは嬉しい限りだ。これで気が楽になるというものだ。
──そうなれば次の行動は決まっている。
「花梨、神楽、百合っ!! 総員俺の部屋に集合っ!!」
声高らかに叫ぶと、物の数秒で3人は目の前に一列横隊で並んだ。
「ご主人様、何かご用でございますか?」
「うむ、今母さんに連絡したところお前達3人の同居許可を得た──そこでだ!」
3人に向かって右手を突きだし、俺は高らかに命じる。
「これより買い物に向かう! 3人とも着替えて即刻準備に取り掛かれっ!!」
お読みいただいてありがとうございますm(__)m
コメントや感想共にお待ちしております。
誤字脱字等ありましたら、ご遠慮なくお申し付けください。確認し次第修正しますm(__)m