表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

苦情の知らせは必殺キック




 一応、百合の仕事の経過具合も確認しておかなければなるまい。ついでにこの怪音もどうにかしてもらおう。あまりうるさいと近所迷惑だ。

 しかしそれよりも、まずはこの箱を明日の朝までどこに置いておくかを考えなくては。

 あいつらの事だ、きっと今日の夜にでも中身を回収しに1階を根こそぎ探し回るに違いない。生半可な所に隠したらすぐに見つかるのは確実だろう。

 かと言って隠し通せそうな場所が早々思いつくはずもなく。

「さて、どうすっかねぇ……」

 とりあえずリビングに持ってきたものの、ここには隠せそうにもない。というか隠せるスペースがない。

 ソファーは座る部分が開いて中に色々入れられる構造の物なのだが、あいつらなら必ず探りを入れるはず。見つけて大喜びするあいつらの顔を想像するのは難くない。他の隠せそうな場所も、全てあいつらが手をつけそうで隠せない所が殆どだ。

 ──仕方ない、とりあえず今はリビング(ここ)に置いといて百合の様子を見に行こう。

 はぁ、と溜息を吐くと段ボールをリビングの端に置いて、作業中であろう百合の所へ向かう。ちなみにあいつが仕事をしているのは1階の奥、あえて名付けるなら謎空間だ。

 そこは母親曰く、この家を建てた際に建設側が間取りをミスるという致命的なミスをしでかした結果産まれた空間で、北側の廊下の横一部分にぴったり畳1畳分のスペースがぽっかり空いているのだ。

 しかもタチの悪いことに畳で言う長い方の辺ではなく、辺の短い方が廊下側。棚を置くと奥行きが余ったりとかで有効活用が全くと言っていい程出来ない迷惑千万なスペースで、一時は某番組に劇的ビフォーアフターを頼もうかと思った程だ。

 そんな理由もあってベニヤ板と壁紙で壁と同化させて封印していたのだが、地下への入り口を作れそうな所が他にないとの事で急遽俺が壁を蹴り破って封印を解除。2ヶ月ぶりにその姿を現した。

 百合も間取りを気に入り、勇み足で作業を開始してくれたのだが……。

「あー、くそっ!! どうやったらこんな音が出るんだよっ!!」

 その結果がさっきから響いている怪音である。

「絶対これ近所から苦情くるだろ……。こちとら言い訳考えないといけないってのに、百合のやつ覚えてろよ……っ!」

 流石に音源に近付くと音圧も強くなってきたので、両耳を塞いで百合の元へ向かう。耳栓でもあればよかったのだが、生憎(うち)に耳栓は置いていないのだ。余程の事がない限り毎日寝不足なしの快眠だし。

 でも、今日からその"余程の事"が起きるかもしれないから後で買いに行こう。保険は掛けといて損はない。

 ──キュオォォォォォォゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴシュピーンッカカカカカカカミワワワワワワワワワワワッ………………。

 そんな事を思っていた矢先、突然怪音が止まった。

「あっ、誰かと思ったらご主人様でしたかにゃ!」

 それとほぼ同時に、曲がり角から百合が顔を出した。こちらからでも確認できるほど汗をかいているので、どうやら仕事をサボっていたわけではなさそうだ。

「よー、百合。仕事はどうだ、順調か?」

「もちろんにゃ! あと10分もあれば内装はほぼ終わりますにゃ!」

 地下の内装というホームデザイナーでもほとんどない境地を"10分で"完成させられるのかこいつは。

「まぁ、内装終わっても強度の補強とか色々しないといけないから、終わるのは占めて1時間後くらいにはなりそうにゃ」

「それは別にいいんだが……お前、一体どんな作業してんだよ。さっきからずっとうるさいぞ」

「え、本当かにゃ!? 作業に夢中になってて気がつかなかったにゃっ!」

「ったく、作業に夢中になるのはいいが周りの事を考えろ。下手したら近所中から苦情が──」




 ピンポーン。




「──来たじゃねぇか」

 ビシッ!

「ふぎゃっ!?」

「今んとこは俺が謝っといてやるから、音をなんとかしとけよ! また苦情がきたら今の倍の威力で喰らわせるからな!」

「わ、わかったにゃ!」

 お仕置きで凸ピンを喰らわせて注意勧告すると、急いで玄関へと向かう。注意を受ける身で出るのが遅れるなんて礼儀がなってないとか思われるから、できる限り避けたい。

 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。

「はーい、今出ますよっと」

 4回目のチャイムが鳴ったところで玄関に着き、扉を開ける。

 どうせ怒られるのは眼に見えている。だったら素直に怒られてやろう。それが事態を穏便に済ませる最適の策だ。

 ──そう思っていたのだが。




「どぉうりゃぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




 何故か必殺キックが飛んできた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ