二 [4/4]
「っつのガキ!」
ソティスは相手が見た目が幼い相手でも気にせずに掴みかかろうとする。
楽遊に抱えあげられた独呼に、逃げるすべはない。ぼんやりとした様子の楽遊も、かわそうとはしてしないようだ。
他の神々も動かない。
助けようと思ったが、無転もとっさのことで動けなかった。彼ができたのは、目を閉じることのみ。
しかし、その耳に氷のように冷たい声が聞こえてきた。
「読呼に触んな」
一瞬無転には、その声が誰のものか分からなかった。
目を開けて、ごっつい力の神の胴に叩き込まれた強い蹴りの主を見て、やっと楽遊がしゃべったのだと気付く。
さきほどまであらぬところを見ていた目に強い光が宿っている。
「俺の天女に触れていいのは、俺だけだ」
楽遊が低い声で言い、なぜか華伝が黄色い悲鳴を上げる。ああいうのが好みなのか、と無転は兄として心配になったが、それは口に出さなかった。
「読呼ちゃんにひどいことしたら、楽遊がとっても怖くなるから気をつけて」
ティアが巻き込まれないように少し距離をとりながら言う。
「やっちゃえ! 遊くん、苑くん」
読呼は自分を抱える楽遊と、なぜが参戦している守護の神玉苑に声援を送っている。
力の神ソティスは見掛け倒しか。無転は逆らってはいけない人リストの第一位を、ソティスから読呼に書き換えておくことにした。
* * *
ティアはその後も神々を紹介してくれた。
ちょっと気取った感じで竪琴を引く金髪碧眼の友の神。その背にもたれて歌う陽光のように明るいオレンジの髪の美女、光の女神。その脇で笛を吹く風の女神。東岸の笛と西岸の竪琴がこんなに合うとは、東岸と西岸両方を旅した無転も知らなかった。
心配げにソティスいじめを観戦する長髪で東岸出身らしい水の女神に、剣を担いで大斧を研ぐ褐色の肌をした大地の女神。
知恵の神は紙と木炭で何か計算しており、勘の神と名づけられた仙人は瞑想している。
亀の甲羅を火であぶり占いに興じる予知の女神の様子を、好奇心旺盛に見つめる少年神――成長の神。彼が邪魔をしないように適切な距離に引きとどめる、お姉さん的存在の命の女神。
魄の女神とこの個性豊かな神々を治める、神々の女神は談笑していた。
他にも、雪の神、空の神、時の女神などなど――。人だろうが精霊だろうが、ティアにかかれば誰でも神様になれるようだ。
「それで、ティアちゃんは何の神様なの?」
一通り紹介し終わって華伝が尋ねた。
「うちら? うちらはね、最高神だよ。最高神フリティラリア」
ティアはにっこりほほえんだ。




