終 [3/4]
* * *
「全く異世界に飛ばされたって感じがしなかったな」
高波による沿岸に住む人々への被害を防ぐためにまで力を使い、ヘロヘロで黒天に運ばれてやってきた無転を迎えたのは、力の神ソティスのそんなぼやきだった。
確かに、無転の補助をした陣の残骸が、火の粉のように降ってくる以外は、いつもの大陸と変わらないように見える。
「おい無転。この人の気持ちを考えられないような馬鹿を、もう一度向こうの世界に置いてこないか?」
守護の神玉苑が言う。
「無転は疲れてるんだ。やめろ」
黒天はちゃんと無転をかばった。
「そうだよ。やめて」
ティアも言う。
「ちょっとまずい状況なんだから」
心なしか、顔が青ざめている。
「どうした?」
ソティスがティアを見下ろして問う。
「この世界はね、今たくさんの天力使い達がやってきたから、天力のバランスが崩れて、精霊たちが天力に毒されかけてるんだ」
ティアの声は、いつもと変わらず明るく軽かったが、内容は深刻だ。わざと明るく言って、この場にいる人々を安心させようとしているのかもしれない。
「説明しろ」
今までふざけていた玉苑が真顔になって言う。
「天力は人や精霊によって一人一人違う。そうだね?」
ティアはそう話しはじめた。
その場にいる全ての人がうなずく。
確かにそうだ。人によって能力や天力の色が違うのは、それぞれが違う天力を持っているから。
そして、自分のものと違う天力を吸収しすぎると、自身の天力バランスが崩れて最悪の場合死に至る。
「この世界はもともと、無転の天力でできていたけど、天地創造で色んな天力が一度に入ってきて世界の天力量が安定してないんだ。天力に急な偏りができて、人間よりも外部の天力に左右されやすい精霊は、不安定な天力に毒されて危険な状態にあるってこと。
使役している精霊は、主人と天力的につながってるから大丈夫だけど、そうでない精霊はやばい――。――って、あれ?」
「……天力が安定したな」
黒天が呟いた。人間達は自身を取り巻く大気中の天力に鈍感なので気付けないが、精霊や半精霊ははっとした。
「うちら様子を見てくる!」
ティアは言い、青黒い翼を広げ大きな羽音と共に飛び立った。あっという間に空高く舞い上がり、見えなくなる。
「誰かが、人柱を立てたんだ」
魂の神読呼が呟いた。
「皆がささやいてるもん。大陸に人柱を立てて、結界を張ったんだ」
彼女は、読心天女。全ての生き物の心を読めるらしい。




