ダメだからと言ったのに、手を離してくれなかった【第1話】
はじめまして。
この作品を開いてくださって、ありがとうございます。
これは、
「ダメだと分かっているのに、拒めなかった夜」
の話です。
夫がいる。
ちゃんと分かっているのに、
ほんの少しの距離と、
たった一言で、
全部が揺らいでしまう瞬間があります。
この作品は、
そんな「崩れる直前」の感情を描いています。
できるだけリアルに、
その時の空気や温度まで伝わるように書きました。
第1話は無料で公開していますが、
この先は、もう戻れなくなっていきます。
もし少しでも続きが気になったら、
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
「ダメだから…」
そう言ったのに、
彼は手を離さなかった
夫がいるのに
こんな距離で話すなんて
おかしいのに
逃げるべきなのに
動けなかった。
私はミホ。ごく普通の専業主婦だ。結婚 5 年目。23 歳の時に結婚した。
夫のミナトさんは、5 歳歳上の 33 歳。総合商社に勤務している。
側から見ればまさに『理想の夫』だけれど…
私は彼に対して一つの不満を抱えている。
それは…
「おい、行ってくるぞ」
「あ、はい。行ってらっしゃい。今日もお夕食いらないですか?」
「どうだろうな、分からん。時間がないんだ、飯ごときで俺の時間を奪うのか?働いてい
ないのだから、それくらい臨機応変に対応できるようにしておけ。 」
「っ…はい、ごめんなさい」
このようにモラハラが過ぎることだ。付き合っているときは優しかった彼、いつ変わって
しまったのだろう。私ももうすぐ三十路。子供だってそろそろ欲しいのに、もう 2 年もシ
テいない。
それが故に…
「はあ、あ、ふぁ」
こうして夫が出社した後、オナニーに勤しむようになった。
彼がかつて抱いてくれていた、ベッドで私は毎日汗を垂らしながら彼を求めていた。
一度だけ、ミナトさんを誘ってみたことがあった。
『なんだみっともない格好して。それよりも、飯は?』
『風呂の準備は?』
『今日一日何していたんだ。』
『全くお前は本当に使えないな』
この有り様だった。心が折れずにいるのは彼のプロポーズの言葉が頭に残っているから。
『この先何があっても俺がお前を手放すことはない、着いてきてくれ。愛してる。』
その言葉に縋って 4 年。それがこの結果か。
「はあ、なんか泣けてくる…」
洗い物しよう。
いつまでこの生活が続くのやら…。
________________
「帰ったぞ」
「あら、おかえりなさい。ごめんなさい、お食事まだできていなくて。 」
「は?もういい、風呂に行く。」
「ごめんなさいお風呂もまだ…」
「はあ?!お前は今日何をしていたんだ!!働いてもないくせに!!」
「っ!」
「働いてきた主人を労わるのが専業主婦の務めだろう!それなのに飯はおろか風呂まで準
備していないなんて…!」
「ご、ごめんなさい」
「「ごめんなさい」じゃなくて、「申し訳ございません」だろう!社会の常識だ!!まあ、
働いたこともないお前には分からんだろうがな!!」
「も、申しわけ「もういい」…え?」
「出ていけよ、お前。もう用済みだわ。」
「…っ」
もうダメだ。こんな生活続けられない。
その後のことはあまり覚えていない。
何かを叫んでいるミナトさんの声がかろうじて記憶に残っている。
家を出ても、行く宛なんてどこにもないのに。
夜中なのに明るい駅前を歩いていると、
「ミホ…?」
突然声をかけられた。
なんだか懐かしい声色。
もしかして、
「ハヤトくん…?」
そこにいたのは大人びてもなお、『あの頃』の面影が残っている、
元彼のハヤトくんがいた。
「久しぶりー!綺麗になったなあ!こんな時間にこんなところで何してるんだよ?」
「あー実は夫と喧嘩して…家でしてきたところ。 」
「え!こんな夜中に!?とりあえずどこか入ろうぜ。ここじゃ寒いし。お前薄着だし風邪
引くぞ。 」
「…それじゃあ、いつも行ってたファーストフード店に行きたいかな…しばらく行ってい
なくて…」
「おし!そうすっか!」
ニカっと笑う彼は高校の時から変わらず眩しかった。
この時私は胸の高鳴り気が付かないでいた。
「いやあ、食ったなー!実は俺もハンバーガー食うの久しぶりなんだよな」
「そうなの?あの頃は毎日のように食べていたのに…」
「大人になるとさ、無性にお袋が作ってくれるような飯が食いたくなるんだよなあ…だか
ら俺、行きつけの居酒屋のおばちゃんにいつも煮物リクエストしてる ww」
「なにそれ(笑)お店の人に迷惑でしょ」
「可愛がられているから許されてんの!そんなことよりこれからどうするんだよ?」
「いくとこないなら俺んち来る?すぐそこなんだよ。」
実はミナトさんからは生活費として月 10 万円をもらっているだけでそこから食費、光熱
費、水道代、生活必需品を購入していて、手元にお金なんてない。
早くに結婚して、新卒で会社も辞めてしまってからはお勤めもしていないから今本当に一
文なしだ。
家にも帰れない。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えてもいいかな…」
「その前に、コンビニ寄って行こうぜ」
そう告げた彼の後ろを歩いていると、
「何後ろにいるんだよ。」
こっちこいよ、と手を引かれた。
胸の高鳴りが抑えきれない。
思わず顔が赤くなる。
俯いた私に彼が続ける。
「俺実は、別れてからお前のことが忘れらんなくてさー」
「高校の同級生ヅテにお前が結婚した話聞いてから、めっちゃ落ち込んで。でもあきらめ
きれなくて。お前が住んでるっていうこの街に引っ越してきたんだ。いつかお前に会え
て、幸せな姿を見たら踏ん切りがつくと思った。だけど、久しぶりのお前ボロボロで。そ
んなんさ、」
俺が掻っ攫ってもいいよな?
徐々に小声になる彼の背中は相変わらず大きいが、握られた手は汗ばんでいた。
不思議とそう言われても、嫌な気持ちにならない自分がいる。
けれど、
「でも、夫が…」
「忘れろよ。そんなやつ。今日だけでいいからさ。」
「…」
彼が振り返り、強く私の手を握りながら見つめてくる。
そんな顔をされたら断れないじゃないか。
「…」
「沈黙は了承と捉えるぞ?」
また、強く手を引かれ彼の家へと続く坂を登りながら
夫への罪悪感は月明かりによって昇華されつつあった。
「ふぁ、ん、ちゅ、 」
「ん、は、は」
玄関に入るなり交わされた熱いキス。
約 3 年ぶりであったがまさか夫ではなく元彼となんて、皮肉なものだ。
「は、ぷ、ぅ」
「はーお前、エロ過ぎ…我慢できねー」
「…ダメだから」
そう言ったのに、
彼の手を振りほどけなかった
玄関のドアが閉まった音が、
やけに大きく響いた
「ほんとに嫌?」
低く囁かれて、
答えられない
嫌なはずなのに
どうしてか、
離れてほしくなかった
「ミホ…」
名前を呼ばれた瞬間、
胸が締め付けられる
「やめて…」
そう言ったのに、
声が震えていた
拒んでるはずなのに
どこか、期待している自分がいる
――もう、戻れない
そう思った瞬間、
目を逸らすことができなかった。
「え?ふぁっ…」
「かるっ、ちゃんと飯食ってんのかよ。」
身体の奥が、じわりと熱を帯びていくのが分かった。
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どれくらい時間が経ったのか分からない
静かになった部屋の中で、
自分の呼吸だけがやけに大きく聞こえた
「……大丈夫か」
優しく声をかけられて、
小さく頷くことしかできなかった
どうしてこんなことになったのか
分かっているはずなのに、
考えたくなかった
どうしてあのとき、
ちゃんと拒めなかったのか
今でも分からない
ただ一つ分かるのは
あの夜から、
もう元には戻れなくなったということだけだった
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
この先、
彼女は「戻れない一歩」を踏み出してしまいます。
本当は止めたかったのに、
分かっていたのに、
それでも——拒めなかった理由が、ここから明かされていきます。
この物語の続きは、
有料で公開予定です。
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