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死んだと思えば、なんだってできる! 世界を変えられない僕は自分を変えることにしました。  作者: ほしのしずく


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勇者と魔王

 遥か昔、魔族、エルフ族と人族、ドワーフ族、獣人族が争いを繰り広げ世界には五つの国があった頃。


 それぞれの国は度重なる戦により、民は疲弊し、土地は荒れ、飢餓に苦しむ人々が続出していた。


 争いの理由は、魔王が持っていた巨大な魔石が原因だった。

 魔石は、人と変わらないくらいの大きさで莫大な魔力を秘めており、その魔力を利用すれば、世界のあり方すら変えられる物。


 ところが、ある事をきっかけに事態が動き出す。


 それは、今まで王として君臨し続けていた魔族の王が代替わりをした年。


 当時、王子で勇者一行と世直しの旅に出ていたロイ・ラインハルト王子の耳に、魔族が何かを画策していることが舞い込んできたのだ。


「なんだ。これは……」


 野営地のテントの中、王子は密偵から得た情報を前にして頭を抱えた。


 その計画は新たな魔族の国の王が膨大な魔力の宿った魔石を使い他国へ侵略するものだった。


(このまま放置はできない……)


 この事を重大な事柄と捉えたロイ王子は、勇者一行に一言告げて、馬を走らせた。


 間に合え、間に合え、間に合え!

 馬が息を吐くたびに、鞭を打って。


 それに応えるように、愛馬は草原を空を駆けた。音を置き去りにするような速度で。


 そうして、一晩が過ぎた頃。

 ようやく城に着いた王子は、すぐさま王宮に駆け込み、国王に進言した。


 ”このままでは我が国はおろか他国まで侵略される”と。


 その鬼気迫る王子の表情と話を聞いた王は他国の王と連絡をとり、魔族との全面戦争を持ちかけた。


 そんな一触即発の事態の最中。


 王子がダン! と机を叩いた。


「全面戦争など、民が苦しむだけではないか!」


 その声に各国の重役たちは、ざわめき、互いに顔を見合わせた。


(馬鹿らしい。こやつらも利権が欲しいのか……)


 戦が始まれば、一番被害を被るのは民。

 それは当然のこと。

 だが、王族や貴族の中では、議題にすら乗らなかった。


 一国家として、民は資源と同様。

 もちろん、被害が出ないことにこしたことはない。 

 しかし、国としては犠牲はありきで、より大きなメリットを得られればいい。


 そんなことが当たり前となっていたのだ。


 王子も王族。

 その考えが全て間違っているとはいえないことを理解していた。


 国家を存続させるには、残虐性と理性を持ち合わせていないといけない。

 でないと、他国に領地を民を奪われてしまう。

 だから、利権を欲する者を上手く使い、侵略を考える国を牽制する。


 それが常識であった。

 

 けれど、王子は少し違った。

 辺境の地出身であり、親友の勇者。

 他種族からなる仲間たちと旅をしてきたこと。

 旅先で異文化に触れたこと。

 彼らにも意志があり、人生があることを目で、耳で、その肌で感じてきた。


 だから、王子は思考を巡らせて、自らが考える最適解を捻り出して、


「皆さん……私に案があります! この馬鹿げた戦を最小の犠牲で終わらせることのできる案が!」


 拳を握り締めて、口にした。


 それは各国の代表を決め、一騎打ちによって勝敗を決めるという案。


 初めこそ、この保守的な案に乗り気でなかった各国の王達だったが、長年の冷戦状態のせいで飢餓や国力の低下を無視出来なくなっており、王子の案に賛同せざるおえなかった。


 そして、それは魔王の治める魔族の国も例外ではなく、王子の案に乗じることになった。


 その一ヶ月後。

 

 魔族の国、エルフの国、獣人の国、ドワーフの国、人族の国による六カ国の王の取り決めにより、各国の代表と魔王率いる幹部の一騎打ちが行われることなった。


 人族からは、蒼炎(そうえん)の使い手である片田舎町出身の勇者。


 最強剣術と謳われる二大流派の一つであるオトノハ流の使い手。


 この一騎討ちの見届け人であるロイ王子。


 エルフの国からは、氷魔法の使い手である女性。


 獣人の国からは紫電(しでん)を使う珍しい種族の女性。

 風魔法を得意とする鬼人とエルフのハーフである女性。


 中立の立場であったドワーフの国から双方へ武器の提供がされた。


 対して、魔族側は空間魔法を使う魔王。


 真紅の魔法の使い手である魔族。


 闇魔法の使い手である魔族。


 回復魔法と肉弾戦が得意な魔族。


 短剣の名手と双剣の名手である二人の魔族であった。 


 実力も人数もほとんど差のない両者の戦いは熾烈を極める。


 魔法を使用し、何度も空を駆け、ぶつかる度に雲を切り裂き、大陸に轟音を響かせた。


 それは三日三晩に及び、戦いの地は地面が割れ地形が変わり、天候すらも変わっていった。


 この命を使い切るような死闘の果てに一人、また一人と命を散らしていき。


 最後には魔王と勇者の二人となった。


 勇者は自身の持てる全てを魔王にぶつけ、魔王の持っていた魔石を破壊することに成功する。


 だが、勇者はその全て出し尽くした反動で命を落とした。

 また、同じく勇者の凄まじい一撃を貰った魔王も無事では済まず、勇者に遅れること数秒後。


 その命を散らした。


 この戦いの見届け人として全てを目にした王子は、一念発起し、国戻ると争いを招くような思想を持つ貴族を排除した。


 そして、魔族領と人族の領を統一した新しい国を建国する。


 その名もライン王国。


 魔族も人族もどの種族であっても争うことを禁じ、平等に扱うことを謳った初の多民族国家。


 これがこの世界で語られる実話に基づいた【勇者と魔王】という有名な物語である。


 そこから五十年後の世界。


 世界樹の国(ドレイン)ドワーフの国(アイアン)、ライン王国、獣人の国(アルフレザ)


 五つから四つに変わった国々は争うことなく、それぞれの文化を築いていた。

 

 けれど、そんな平和となった世界で不思議な病が流行っていた。

 その病は、魔力欠乏症。


 なぜか水属性の魔力を持つ者に発症し、本人の意志と関係なく漏れ出てしまい、発症した者は成人を迎えることなく命を落とす。


 特に水辺の周辺に住まう子供たちは、十歳まで生きることが出来なかった。


 そしてその病は、祖父と旅をする少年リズ・ヴァートリーとも無関係ではなかった。


 それは、リズが六歳となったある日。

 

 祖父ゴードン・ヴァートリーが、ついにその真実を打ち明けようとしていた。

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