第5話 繋がり
ぴくりと動く尻尾が緊張を伝える。
その隙間から見え隠れするルーンの秘部に、蓮花の興奮は最大まで高まったーー同時に覚悟も固められていった。
「あっ...」
蓮花はルーンの手を取り、振り向かせると、恥じらう彼女の顔に唇を近づける。
触れるか触れないか程度の接触、それからゆっくりと唇を奥まで押し付ける。
何度目かの衝突で、ルーンがようやく唇を前に突き出すのだと理解した頃、今度は舌をねじ込むと、ルーンの切れ長の目が驚きで見開いた。
ルーンはすぐに口を大きく開いて蓮花に応えるように、舌を必死に動かす。
そのぎこちなさと一生懸命さが、蓮花の心に薪をくべていく。
やがて蓮花とルーンの舌の動きが合い始め、互いの舌が複雑に絡み合い始めた頃、蓮花がそれを解くと、ルーンは忘れていた呼吸を思い出しながら、とろけた表情で蓮花を見上げた。
それが合図であったように、蓮花がルーンの肌着を脱がせようとしたが、ルーンがわずかに抵抗を見せる。
たが、蓮花にとっては何の問題もない、頭の上の耳を軽く咬んでルーンの力が抜けるや否や、両腕を上げさせ肌着を剥ぎ取ると、入り口に放り投げた。
蓮花の目の前に現れたのは、豊満な身体に絹のような真っ白な肌とそこに浮かぶ銀色の模様ーーその芸術的なグラデーションを塗り潰すように左肩から右足にかけて広がる真っ黒の模様。
「お見苦しいものを…すみません…」
ルーンが両腕で身体を隠すと、俯いたまま呟いた。
蓮花は、ルーンが指しているものが、この黒い模様のことで、それが呪いで、"黒葉"のことだとすぐに分かったが、これまでの経験から、肌を重ねる直前の女が、いきなり抱えている事情を告げてくることには慣れていた。
男の度量が試されているのだ。
「めちゃくちゃ綺麗...」
そう言うと蓮花は、ルーンの両手を剥がし、再び唇を重ねると舌の根元から絡ませる。
興奮を伝播させるように身体を密着させ、ゆっくりと身体に触れていくと、その手が目的地にたどり着いた頃には、すっかりと水気を感じさせ、雨上がりの道路を歩くような音がした。
「す、すみません。初めてで不慣れで...」
蓮花の唇が離れると、ルーンが呟く。
「ううん。」
「私で本当によろしいのでしょうか?」
「もちろん。」
「でも、呪いが...」
蓮花はルーンの口を三度唇で塞いだーーそれ以上の言葉は不要だった。
今度はルーンの方から唇を離すと、再び背中を向いて蓮花に尻を突き出す。
「お願いします...」
初めてという言葉からは遠い位置にあるその姿に、蓮花は一瞬戸惑ったが、今から場所を変えてこの雰囲気を崩すのも嫌に思い、郷に入ればと、ルーンの尻を両手で持った。
「あっ...」
ゆっくりと狭い洞窟の隙間を縫って入るような感覚ーーその感覚は、ルーンの経験の少なさがもたらすものなのか、種族の違いからなのかが蓮花には分からなかった。
「痛くない?」
「はい...あたたかいです。」
緊張が解け、柔らかさを得たその身体は、徐々に蓮花に合わせて、ぴったりと包み込むように姿を変えていくーー互いの隙間がゼロになっていく。
ゆっくりと、ほぐすように蓮花が身体を動かすと、ルーンの口からは吐息ではなく、声が漏れ始めた。
幾度目かの往復の時、ルーンが艶やかな声を上げると、紅潮した顔で振り返り、蓮花の方を向く。
「す、すごいです...」
ルーンのその言葉に、蓮花の何かが振り切れたーー紳士的な振る舞いができたのはここまでだった。
興奮を、怒りを、悲しみを、不安を、苦悩を、生死のやり取りを駆け抜けた喜びを。
この一日に沸き出た感情をすべてぶつけるように、何度も何度も腰を打ちつけると、やがてルーンの体内にそのすべてを吐き出した。
「「はぁっ、はぁっ。」」
脚が震えたルーンを蓮花が支えるように腰を下ろすと、抱き合う形で2人は息を切らす。
ルーンは艶のある顔で、自ら蓮花に何度も唇を合わせにいく。
互いの息が整うまでそれは続き、ようやく蓮花がゆっくりとルーンを引き離すと、二人の繋がりはぬるりと解けた。
「あっ...」
『経路が作成されました。"黒葉"の吸印を開始いたします。』
蓮花は、その目的などとっくに頭から離れていた。
洗い場に落ちたいくつの鮮血の後を見て、お湯を掬うと二人の身体を洗い流す。
「も、申し訳ございません!」
ルーンはそれを蓮花の優しさとは受け取らなかったようだ。
急いで立ち上がって頭を下げると、そのまま風呂場から出て行った。
「えっ...?」
『一定の距離が離れたため、吸印を中断いたします。』
「あれ...?」
蓮花が考えていた事後のお風呂というイベントは起こらなかった。
まるで狐につままれたような気分で、洗い場に腰を下ろしたまま唖然とする。
『やってしまった...?やってはしまったけど。』
そんなことを考えながら、再び湯船に浸かると、蓮花はしばらくの間、天を仰いで呆けた。
『なんかアカンかったかな...』
不規則な木目が視界に入る。
どれくらいの時間そうしていたか、蓮花は分からなかったが、ぐるぐると回る無音の喧騒の中で、急に部屋の方にある人の気配を拾った。
「"探知"」
思い出したかのように呟くと、部屋には白い点が二つ。
『ルーンと...?誰やろ?』
風呂場の外に積まれたタオルで身体を拭き上げ、用意されていた服に着替える。
服はタオルと同じくごわつきがあり、泥染めしたような茶色の長袖と長ズボンだった。
『怒られたら...謝るしかないよね。』
そんなことを考えながら部屋に戻ると、予想に反して、玄関口に立っていたのは2人の村人だった。
一人は髪と髭が白く染まった小柄な老人、一人は屈強な壮年の男だったので、蓮花はすぐに美人局だと考えた。
蓮花と目が合うと、二人は深く頭を下げてから口を開く。
「レンカ様、この度は村をお助けいただき誠に感謝申し上げます。」
蓮花は、自身の名前を二人が知っていることにまず驚いた。
「この村の長のドレイクと申します。そして、彼は助役のグレッグでございます。」
「れ、蓮花って言います。こちらこそ色々と...」
二人は嬉しそうに顔を綻ばせる。
「レンカ様...我々に敬語は不要でございます。良ければ入らせていただいても?」
「ああ、どうぞ...」
「ありがとうございます。」
そう言うと二人は靴を脱ぎ、板床に置かれた小さなテーブルの横に座り込む。
「早速ですが、レンカ様は大変高いご身分の方とお見受けしますが、どちらからいらっしゃったので?」
「日本、東京、京都....そういった国や街の出身ですが聞き覚えは?」
二人は首をかしげる。
蓮花は、言葉が通じるので、もしかしたらと淡い期待があった。
「うーむ...聞いたことはございませんなぁ、ここはベヤリス王国の端の田舎ですゆえ、申し訳ございません...」
助役のグレッグが申し訳なさそうに答えると、村長のドレイクが続く。
「儂も長く生きておりますが、聞いたことはございませんなぁ...」
「ベヤリス....王国?ですか。」
蓮花の質問に、助役のグレッグが頷く。
「はい。ここは、ベヤリス王国の南端に位置しておりまして、東の大森林を抜けるとローレン帝国、ここより更に南に行けばアゼム連合国となります。」
何かを確かめるような丁寧な説明だったが、今出た国名を蓮花は聞いたことがない。
「そうなんですね...どれも聞いたことは無いですね。」
「どうやら、レンカ様は随分と遠くから来られたのかも知れませんなぁ...」
ドレイクが言うと、グレッグも静かに頷く。
「でも、言葉は通じてますよね?」
蓮花がそう言うと、二人は動きを止めて顔を見合わせ、再び蓮花の方を向く。
「どうやら、本当に遠いところからいらっしゃったのかも知れません...」
「失礼いたします。」
その時、家の扉を叩く音と女の声が聞こえてきた。
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