表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

第3話 揺れる火の剣

「目立つかな?」


蓮花(れんか)の白いシャツは返り血と砂埃で赤黒く染まっていた。


「このようなもので良ければ。」


女から渡されたローブを借りて羽織ると、中に刀を隠して広場へと向かう。

家を出る時、視界の端に映った扉の村人は満足した表情で既に事切れていた。


『頼まれたわ...』


歩みを進める蓮花(れんか)の目に、鼻に、そして耳に、惨状が届けられる。

焼け焦げた家、倒れている村人たちの呻き声、そして既にその命を終えたのであろう、無惨な姿、それらが至るところに点在してた。

土の地面は血と涙が滲み、焦げた木材と鉄の匂いが鼻を突く。


「地獄やな…」


蓮花(れんか)の胸の中を渦巻く感情は、怒りか、悲しみかーーそれとも無力感だろうか。

えもいえぬ感情を引きずりながら、蓮花(れんか)は広場へと進んでいく。


「おらっ!いけよっ!」


目的地の広場であろう場所が近づいて来た時、あまりにも場違いな、まるでお祭りのような活気のある声が聞こえてきた。

そこでは、ニ十人程の男たちが輪になって、わいわいと騒いでいる。

蓮花(れんか)が後ろからそっと加わると、輪の真ん中では二人の男の戦いが繰り広げられていた。

片方の男はこの村の者なのだろうーー背は高く、頑強な体つきで、他の村人と同じく獣の耳と尻尾の特徴を持っていた。

剣を持ちながら肩で息をしているところを見ると、どうやら状況は芳しくないらしい。

そして、もう片方の男ーーゆらゆらと揺れる赤く染まった剣を片手で振るう男。

蓮花(れんか)は最初、剣が燃えているのかと思ったが、どうやら違うらしい。

剣自体が炎で出来ていて、それがゆらゆらと揺れているようだ。


「おいおい!!もっと頑張れよっ!」


近くで一人の男が叫び、皆がゲラゲラと笑う。


『どうしよか。』


蓮花(れんか)が悩んでいると、村人の男は、大きく声を上げて剣を振り上げた。

そして、勢いそのままに相手に向かって振り下ろす。

だが、男はにやにやと笑いながら、村人が振るう剣を簡単に避けると、周囲の男たちは大笑いする。


「ぎゃはははっ、どこ見てんだ!」

「目ん玉付いてんのかぁ?」


周囲を囲む男たちの不快な笑いが耳をつんざく。

振り下ろされた剣は地面を抉り、当たりさへすれば、その男に致命傷を与えるのであろうが、当たる様子は全く無い。

捕らえられた動物のように囲まれ、その中心で戦わされている村人の姿が蓮花(れんか)の目に焼き付けられていく。


「もう終わりか?」


「ハァ、ハァ、、、」


「居場所も言わねーみたいだし、そろそろ幕締めだな。」


次の瞬間、火の剣の男が一瞬消えると、村人の体は炎に包まれ、膝から地面に崩れ落ちた。


「カシラッ!」


いつの間にか倒れた村人の横に立った男に向かって、わっと周囲の男たちが歓声を上げて駆け寄って行く。

どうやら、中心で戦っていた男がこの男達の首領だったらしい。


「流石だぜ!カシラッ!」


蓮花(れんか)も他の男達に紛れて、真横からジリジリと近付いていく。


「よーし、お前らこいつを吊るせ。この村で"祝福"があるのは、こいつくらいだろう。」

「「へいっ!」」


威勢の良い返事と共に、周りの男たちが倒れた村人の方に集まっていく。

それに紛れて、蓮花(れんか)は首領のすぐ隣まで近づいた。


「んっ?」


刀の射程に入った瞬間、首領が一声漏らす。

蓮花(れんか)はすぐに一歩を踏み出し、迷いなく刀を下から上へ縦に振り抜く。

紛れもなく、最短距離で命を刈り取る一振りだったが、その瞬間、首領は驚くほどの反応速度で後ろに飛んで、蓮花(れんか)との間に距離を取った。


「ちっ...!」


吐き捨てたその一言は、蓮花(れんか)の一撃が命までは届かなかったことを示す。

蓮花(れんか)は、上に伸びた身体の勢いそのままに、刀を横に回転させると、周りにいた数人の部下たちの肩や首から上を刎ね上げ、盗賊たちは血しぶきとともに力なく地面に崩れ落ちた。


「クソッ、騎士団には見えねぇが...獣人の味方なんぞ、酔狂なことで。」


首領が蓮花(れんか)を鋭く睨みつける。

蓮花(れんか)の攻撃は完全に外れたわけでは無く、その左腕からはかなりの血が流れ落ちていた。


『"鬼月(きづき)"による"吸印"を開始します。』


蓮花(れんか)の頭に活路となる文字が響く。


「なんだ?」


首領は、何かを感じ取ったのか、左腕の傷口を一瞥した。


「何をした?...邪魔するなら殺す。」


首領が再び臨戦態勢に入った時、頭に文字が流れた。


『"敏捷"を獲得しました。』

『適応性ありのため、刻印可能です。刻印しますか?』


蓮花(れんか)は既にこの意味を理解し始めていた。


『ああ。』


『承知しました。"敏捷"を刻印します。』


すぐに右の胸から熱を感じる。

その場に居た全員が次の動きを感じ取った時、倒れていたはずの村人が突然起き上がり、首領の腰に抱きついた。


「クソっ!?てめぇっ!!」


その隙を見逃すはずが無かった。


「"敏捷"...」


呟いて一歩、蓮花(れんか)は全身の異様な軽さを感じる。

そのまま、二歩目で大きく蹴り出し、首領との距離を一息で詰めると、真横に胴を切り裂いた。


『"剣術"と"焔心(えんしん)"を獲得しました。』

『"剣術"は刻印済みのため統合されます。』

『"剣術"が"剣術Lv.Ⅱ"になりました。』

『"焔心(えんしん)"は"鬼月(きづき)"へと統合されます。』


蓮花(れんか)の頭に文字が響く。

統合の意味は理解できなかったが、鬼月(きづき)は分かった。

蓮花(れんか)が右手で握り締めているこの黒い日本刀のことだ。


「なに...しやがった....」


首領は最後の力で蓮花(れんか)の足を掴み、恐ろしい形相で睨みつけたまま瞬く間に息絶えた。


「ひっ!?」


周りの男たちが一斉に静まり返る。


「カ、カシラ....?」


崩れ落ちた首領の身体から流れた血が地面を赤く滲ませるーー静寂が訪れた広場の中で、蓮花(れんか)は先ほどまで立っていた場所を振り返った。


「ば、化け物だっ....」


誰かのその一声で盗賊達が一斉に逃げようと踵を返すが、蓮花(れんか)は一瞬で男たちの背後に回って次々と首を刎ねていく。


「たっ、助けてくれー!!」


残った数人は腰が抜けて、地面に座ったまま泣き叫ぶのみだった。

蓮花(れんか)がその男達へと向かう途中、地面に倒れた村人が視界に入るーー首領と戦っていた男だ。

男たちは、頭を地面に擦りつけながら命乞いを始めていたが、蓮花(れんか)は容赦することなく、その全ての首を刎ねた。


「楽に死ねるだけええやろ?」


男たちを全て始末し、広場の中央に戻ると、村人の男は首領の足を抱きかかえたまま息絶えていた。


「お陰で助かったわ...。」


日差しはやや傾き始めていた。


「ふーっ。」


静寂の中で、蓮花(れんか)はようやく腰を下ろすと、途端に意識は無くなり、その場に倒れ込んだ。


最後までお付き合いいただき感謝します。

もし「続きが読みたい」と思われた方は、ページ下部よりブックマークと評価をお願いします。


皆さまの「いいね」が心からのモチベーションでございます。

応援、お待ちしております↓

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ