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男女比1:100の世界で生き延びる  作者: 功刀


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プライベート旅行③

 ディナーは海上のテラス席で振る舞われた。

 伊勢海老のグリル、和牛のステーキ、宝石のようなデザート。

 あまりの豪華さに舌鼓を打ちつつも、俺たちの話題は尽きることがなかった。

 風呂上がりの火照った体で、お揃いのパジャマ(麗華の用意だ)に身を包み、俺の部屋のリビングに再集合する。


「くらえ! ドロー4!」

「なんですってーっ!? 龍弥、鬼ですわ!」

「あ、ウノ」

「えっ、静ちゃんいつの間に!?」


 トランプ、ボードゲーム、そして漫画キャラになりきった即興劇。

 夜が更けるのも忘れて遊び倒した。

 不思議と眠気はやってこない。アドレナリンが出まくっているのだろう。

 だが、壁の時計は残酷にも深夜零時を回っていた。

 部屋の隅で控えていた桜さんが、静かに時計を見た。


「龍弥様、麗華様、静様。そろそろご就寝の時間です」


 楽しい時間の終わりを告げるベルだ。

 麗華と静が、名残惜しそうにカードを片付け始める。


「……もう終わりですのね。楽しい時間はあっという間ですわ」

「うん……おやすみなさい、たつやくん」


 二人が自分の部屋に戻ろうと立ち上がった時、俺はふと口を開いた。


「ねえ、待って」


 二人が振り返る。


「どうせならさ……三人で一緒に寝ない?」

「「えっ!?」」


 二人の声が重なった。

 麗華は顔を真っ赤にし、静は目を白黒させている。


「な、何を言っていますの龍弥!? だ、だだだ男女が同じ布団で寝るなんて……ハレンチですわ!」

「そ、そうだよ……男の子といっしょなんて、心臓とまっちゃうよ……」


 この世界の常識では、俺の提案はかなり破廉恥なものらしい。

 だが俺は真剣だった。


「だって修学旅行だよ? 本当の修学旅行なら、みんな同じ部屋で、布団を並べて寝るのが当たり前なんだ。夜遅くまで内緒話をしたり、枕投げをしたり……それが一番の思い出になるんだよ」


 俺は二人の手を取った。


「ボクたちもう家族みたいなものだろ? 男とか女とか関係ないよ。ボクは、朝目が覚めるまで、大好きな二人の親友と一緒にいたいんだ」


 これは本心だ。

 下心なんてない(と言えば嘘になるかもしれないが、今は純粋な友情が勝っている)。

 この特別な夜を、最後の一秒まで共有したかった。


 俺の言葉に、麗華と静は顔を見合わせた。

 その瞳の動揺が、徐々に温かな光へと変わっていく。


「……『家族』、ですのね」


 麗華が嬉しそうに呟く。


「うん……わたしも、たつやくんといっしょがいい」


 静がはにかむように頷く。


「もう、仕方ありませんわね! 龍弥がそこまで言うなら、付き合ってあげますわ!」


 麗華は照れ隠しに髪を払いながら、ニヤリと笑った。


「幸い、この部屋のベッドはキングサイズよりさらに大きい特注品ですもの。

 三人で寝ても余裕がありますわ。それに……」


 そういってチラリと桜さんの方を見た。


「そこのソファも広いですから、桜さんも一緒に休めますわよね?」


 桜さんは呆れたように溜息をついたが、その表情は柔らかかった。


「……承知いたしました。監視対象が一箇所にまとまっている方が、警備上も好都合ですので」


 許可が下りた!

 俺たちは歓声を上げて、巨大なベッドへとダイブした。


「わぁっ! ふかふか!」

「広いねぇ!」

「真ん中は龍弥ですわよ!」


 俺を挟んで、右に麗華、左に静。

 川の字というよりは両手に花の状態だ。

 布団に入ると、二人の甘い匂いと温もりが伝わってくる。

 ドキドキしないと言えば嘘になるが、それ以上に、圧倒的な安心感に包まれていた。


「では消灯します」


 桜さんが照明を落とす。

 部屋は暗闇に包まれたが、窓から差し込む月明かりが、二人の顔をぼんやりと照らし出していた。


「……ねえ、龍弥」

「ん?」

「大人になっても、またこうして旅行に来れますわよね?」

「もちろんだよ。中学生になっても、大人になっても、じいちゃんばあちゃんになっても行こう」

「ふふ、約束だよ」


 静が俺のパジャマの袖をギュッと握る。

 麗華も俺の反対の手を握ってくる。


 波の音が遠くから聞こえる。

 世界で一番贅沢で、世界で一番温かい夜。

 俺は二人の手の温もりを感じながら、幸せな眠りへと落ちていった。

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