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男女比1:100の世界で生き延びる  作者: 功刀


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23/35

西園寺家の財力

 沈痛な空気が流れる教室で、不意に麗華が顔を上げた。

 その瞳には諦めではなく、燃えるような闘志が宿っていた。


「……そうですわ」

「え?」

「学校の修学旅行に行けないなら、わたくしたちだけで行けばいいんですのよ!」


 麗華はバンと机を叩いて立ち上がった。

 俺と静は目を丸くして顔を見合わせた。


「修学旅行の代わり? 自分たちだけで?」


 何を言っているんだこのお嬢様は。


「待ってくれ麗華。ボクが許可されないのは『安全が確保できないから』だぞ?  個人的な旅行なんて、もっと危険だと言われるに決まってる」


 俺の指摘に、麗華はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「ふふん、甘いですわ龍弥。一般の旅行プランだから危険なんですのよ。わたくしにかかれば、国家予算並みのセキュリティレベルでバカンスを提供できますわ!」


 そういってスマホを取り出し、どこかと連絡を取り合っていた。


 放課後。

 麗華は俺の家にまで押しかけ、桜さんを呼び出した。

 リビングのテーブルを挟んで、日本屈指の財閥令嬢と、国家公認の最強メイドが対峙する。


「単刀直入に申し上げますわ、桜さん。龍弥と静、そしてわたくしの三人で、西園寺家所有のプライベートヴィラへ旅行に行かせてくださいまし」

「……却下です」


 桜さんは即答だった。紅茶を置く手つきすら乱れない。


「龍弥様の安全が最優先です。個人の所有地とはいえ、外部への移動にはリスクが伴います」

「ですが、このままでは龍弥の心に傷が残りますわ! 一生に一度の思い出を奪う権利が、国にあるんですの!?」

「心の問題と生命の危機を天秤にかければ、答えは明白です」


 鉄壁のガードだ。

 俺も横で聞いていて、これは無理だなと思った。

 だが、麗華は怯まない。鞄から分厚いファイルを取り出し、テーブルに叩きつけた。


「ご覧になって! これがわたくしの考えた『特別警護プラン』ですわ!」


 桜さんが眉をひそめつつファイルを開く。


「目的地は、西園寺家が所有する南の孤島『セレスティア島』。島には関係者以外、蟻一匹侵入させません。移動は西園寺家のプライベートジェットを使用。もちろん対空ミサイル防御システム搭載機です。現地では、我が家の私設部隊『黒百合隊』五十名が二十四時間体制で警備にあたります。さらに、島の周囲十キロ圏内の海域封鎖を海上保安庁へ要請済みですわ!」

「……」


 桜さんの目が、ファイルの上を高速で走る。

 俺は開いた口が塞がらなかった。

 別荘ってレベルじゃない。要塞だ。

 海上封鎖まで要請済みって、お前の家はどうなっているんだ。


「これなら不特定多数がいる京都の旅館より、よほど安全ではありませんこと? それに龍弥にはどうしても必要なのです。籠の中の鳥として生きる彼に、せめて空の広さを教えてあげる時間が!」


 麗華の言葉は熱く、そして真剣だった。

 単なるワガママではない。俺のことを本気で思いやってくれているのが伝わってくる。


 桜さんはしばらく沈黙し、ファイルを閉じた。


「……少々、失礼します」


 そして席を外し、どこかへ電話をかけ始めた。

 漏れ聞こえる声は低く、緊迫している。


「はい……西園寺家からの申し出……セキュリティレベルはSランク相当……精神衛生上の観点からも……」


 数分後、戻ってきた桜さんは、ふうと小さく息を吐いた。


「……許可が下りました」

「本当ですの!?」

「ただし、条件付きです。期間は二泊三日。私の同行はもちろん、政府側の護衛部隊との連携も許可すること。そして、万が一の事態が発生した場合は即時撤退すること。よろしいですね?」

「もちろんですわ! ありがとうございます、桜さん!」


 麗華は満面の笑みでガッツポーズをした。

 静も「よかったぁ……」と涙ぐんで喜んでいる。

 俺は震える声で言った。


「すげえよ、麗華……お前、本当にすげえよ……」

「おーほっほっほ! 感謝なさい! さあ、そうと決まれば準備ですわ! 最高の修学旅行にしましょうね、龍弥、静!」


 こうして、俺たちのための、俺たちだけの特別すぎる修学旅行が幕を開けることになった。

 学校のみんなとは行けないけれど、最高の親友たちと過ごす時間は、きっと何にも代えがたい宝物になるはずだ。

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