第1話~ぼく~
「心が空っぽ」「孤独」といった現代社会で生きる中年男性の「メンズエステ」という小さな選択が、人生を変える運命の一歩になる―純愛ラブストーリー
白衣を脱いで自宅に戻る頃には、また今日もひとりか…とため息をついていた。
43歳、独身。周囲は結婚して子どももいる。僕は医師という職業に就きながら、人生のパートナーだけはずっと見つからずにいる。
医師ならモテるだろ?って思われているかもしれないが、確かにそれなりに誘いを受けることもあった。でも、これまでの人生で恋愛をしたことがなく、彼女ができることもあったが、だいたいは知り合ってすぐにHして、それからしばらく付き合ってみるものの、すぐに飽きて分かれるの繰り返し。
勉強が好きで医師になったが、人に興味をもてず、生産性のない会話が何より苦手なので、大勢が集まる飲み会とか女子との会話が楽しいと感じたことがなかった。
それでも人並みに性欲の周期は回ってくるわけで、人肌恋しくなると、面倒な前置きを省くことができる風俗にお世話になっていた。
行為そのものよりも、会う前のドキドキ感が好きであったが、会った瞬間にガッカリすることが多かった。また、行為が終わった後には何故だか背徳感や罪悪感、虚無感に襲われることもあった。
誰かに本気で必要とされたことがなく、人として大事な何かが欠落していると漠然と感じていたある日のこと、某有名風俗サイトを開いたが、好みのタイプをみつけることができずにいた。
―(店長のおすすめってさ…気さくだとか、安心感あるとか、会話が弾むとかは、結局、容姿で褒めることができない女の子への言い訳なんだよな。可愛い子には、ストレートに可愛いって書くよな)
サイトを閉じようとしたが、サイト脇の【メンズエステ】という文字が気になった。
(マッサージなんて中途半端だよな)
そう思いながら、サイトをクリックしてみると、モザイクはかかっているが、胸が大きくて好みのタイプの女の子が目にとまった。
(デリへルも飽きてきたし、電話してみようか)。
思い切って電話をしてみたが、好みの子はすでに予約でいっぱいであった。気持ちは高ぶっていたため、少し考えたあと普段は選ばないような少し派手目な女の子を【ラブ】をお願いした。
この時の僕は、この出会いが自分の人生を大きく変えることになるとは思いもしなかった。。。
ここまで読んでくれてありがとうございます。次回第2話は【出会い】です。お楽しみに!