表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

③餓鬼

一歳になりました。

「や(暇)ーー」

快晴たる空を眺め、俺はひどくつまらない心境に立たられた。

それも仕方がない、ネットのない世界、ゲームのない年齢。

俺は異世界生活などこれっぽっちも望んでいなかった。

ラノベではよく無双やら知識チートやらが書かれるが、現代に生まれただけでそれらができんのなら、俺もトイレひとつで喜ぶ必要などなかった。

正直、たとえ知識に精通しても、恐らくどうにもならなかったんだろう。

インフラというものは、個人の便利のためのチート能力では生み出せはしない。

砂糖と紙、水道と電気、ガスと灯り、これらの普及、全てが社会の安定、経済の裕福、技術の革新の基に成り立っている。

個人どうこうでは築けない。

仮に農業に精通するものがいたとしよう、高校生でも博士でもいい。

ソイツの知識は必ずしも社会に影響を与えるとは限らない、

が、人の探究心を擽れば、概ね成功すると思う、某ワンペースの海賊のように、、、ね?

まあ、どんな影響が出るのもわからない。

農薬と火薬は表裏一体のように、農薬は自国を富み、火薬は他国を貶め、利権のためならば国同士も戦争する。なおさら火薬とか銃とかの知識を散布したらどうなるか言う必要もないでしょう。

倫理観が乏しいならついでに使い方も拡散すりゃいい。

つまりいい影響は結果に辿り着くまでは長く、しかもどう足掻いても人が死ぬ。

悪い影響ならば自分も死ぬ可能性さえある、娯楽の為にすべてを捧げる賢者は少ない、それならもっと簡単で気軽な恋沙汰のほうが安全でチープ。

道理でみんなお盛んなわけだ。


ママは昼寝である。俺はひとり退屈していた。

そういや、魔法とか、そういうものをまだ見ないね。

トイレも水洗式なせいで、すっかりファンタジー感無くなっちゃったが、

やはり異世界だから、魔法がないとつまらんよ。

「(status!)」

心で強く念じた。数秒が経った。何も出ない。

時折鳥の囀りが窓を通過してくる、声が出たらさぞ恥ずい気持ちでしょうね。

そりゃそうだな。

魔法があるのなら人間が生き残るはずないもんね、魔法特化の動物が世界制覇しとるじゃん。

鳥が鳴けば効力を発揮するタイプの魔法とか作れば、もうおしまい。

魔法はない、なら異世界も現実も大して変わらんな。

そう思ってまた寝ようとした瞬間、声が聞こえてくる。

「リア坊ちゃま、いけません!いけませんぞ!」ジジイのカスカス声。

「うるさい!とっとと開けろ!」子供、いや餓鬼大将かな?


うん?なんだ?ドア前うるさいな

鉄の扉が開いた。開いたのは一人の執事らしきジジイである。

ジジイがはあはあと汗を垂らし、その後ろにもう一人が姿を現す。

声と違わぬクソ餓鬼の感じ、けど顔はいい、この家族のなかで一番かもってレベル。

およそ7、8歳の金髪餓鬼がニコニコしながら、部屋に入って来る。

俺は体を起こし彼を睨みつき、精いっぱいの殺意を籠って。

「ギャ!(俺の聖域に踏み込むな小僧!)」

効果はなし、餓鬼は俺に近づいた。挨拶がわりと俺はパンチを繰り出した。


ディープインパクトーーーーならず。

パンチは餓鬼の鎖骨辺りに届くが、ダメージは皆無の模様。

ママはまだ寝ている、この天然め、人が入って来たというのに、起きないとか!

餓鬼は俺をじっと見つめる。そして俺のほっぺを指で突いた。

「うわ、なんだこの生物、可愛いんだけど」

餓鬼はそう言って、後ろのジジイに笑顔で尋ねる。

「リア坊ちゃまの妹君、シュヴェルティナお嬢さまでございます」

カスカス声で答えるジジイ、俺ってそんな名前でしたっけ?

「ほう、コイツが父上が言ってる転生者というものか」

もうバレてーら、なんてこった、アイデンティティー崩壊しちまった。

仕方ないから、俺はゆっくりと頷く。

「スゲー、マジで俺の言葉分かっちゃった、こんなに小さいのに!」

興奮する餓鬼、片や驚いて目を開いたジジイ。

「お嬢さま、失礼いたしますが、本当に我々が言ってる言葉がお分かりになりますか?」

もう一度ゆっくりと頷く、それからシーと「黙って」というジェスチャーを送った。


「誰にも言うなってことか、いいぜ。爺もだ、誰にも言うなよ?」

「かしこまりました、リア坊ちゃま。」

嬉々としてジジイに命令する餓鬼とそれに従順するジジイの図。

しかし誤算だな、まさかいきなり転生者という秘密がバレるとは。

悩むな、もともとは何こともなくニートとして生き続けようと思ったのに、

転生者と知られたらきっと何かしらの形で理由されちゃうかもしれないな。

「で?爺、僕の妹の転生者は誰だ?」

「まだ判然しておりませんが、この歳で言葉を会得するところを見れば、かなり聡明な方かと」

「む、分からないの?」

「申しわけございません」

「ふむ」俺をつんつんしながら考え込む餓鬼。

痛いんだけど、やめてくれない?

こんな可愛い赤ん坊をいじめてたのしいか?


三十秒我慢し続ける俺。涙がもうでそうになった時、餓鬼は急に止まった。

「でもこのちっこいのが僕の子供を産むのか、無理じゃない?」

「今ではございません、将来のことでございます」

「想像できないな、まあどうせ抗えないし」


うん?今、なんつって?

え?誰が、誰の、何を、産む?


俺?、、、、


マ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ