表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/31

⑯女神のしゅくふく

☆☆☆

「き、キス?」

「うん。

君にしか、、、

オレを呼び覚ましたリアくんにしか、

シュヴィを救えるんだ」


キスと聞いて、滑らかなそのピンク色の唇を、じっと眺める。

唾を呑んだ。


「救う?'シュヴィ'に何かがあったのか?」


顔をしかめてる'シュヴィ'、しばらくして頷く。

「そうなんだ。実は、シュヴィが、ピンチに陥ってる。

それを救うには、リアくんの力を借りるしかない」


それと、キスとは何の関係がある?

何かヤバイことしたから、ピンチに陥ったじゃないの?

ーーー本来の僕は、こう問うべきだった。

しかし、このとき、僕はなぜかずっと、彼女の唇しか目にいない。


綺麗な人だ。この人、の下。あの切れ目から、あの娘と同じ匂いなのか。

そう思ってしまった。おぞましいくらいに、乱暴な想像をした。

'シュヴィ'は一瞬、笑みを浮かべる。が。すぐに消えた。

苦しそうな顔で、僕に近づく。


「だから、オレとキスしてくれない?

それだけでいいんだ」


また唾を呑んだ。

「べつに、いいけど」


「え?ほんとに?!

、、、でも、

リアくん、婚約者がいるでしょ?

そんな簡単に受け入れて、いいのか?」


僕は彼女の顔を思い出す。躊躇してしまう。

そしたら、'シュヴィ'はおずおずと後ろへ下がった。


僕はそれを見て、思わずそう言ってしまう。


「'シュヴィ'も、僕と将来結ばれる、、

父上がそう言った。

だから、何も問題はないよ」


「問題がないって、それじゃあ、あの娘が可哀想じゃない、、、

もしあの娘が他人と結婚と言われても、それでいいの、、、?」


切なそうな声でした。

それを聞いて、僕は何故か凄く変な気分になった。


なんかモヤモヤする。


「……よくない」


「それは、、、父上と歯向うってこと?」


「そ、それは、、、」


僕は黙り込んだ。言えないものだ。

父上に、抗うなんて、とてもできないものだ。


「ああ、ごめんね。変なこと言っちゃたね。」


ほっとしたように'シュヴィ'は目を瞑った。


僕は気まずくなった。

駄目だ、僕は。

歯向かうことはできないよ、父上には。

父上に言われたら、僕は婚約者である彼女さえも捨てられる。

たとえ嫌であっても、それでも従う。

僕には、何かを決めることなんて、できない。


「ふーん、


、、、大して好きじゃないはずなのに、こんなに真剣に考え込んで、、


いいな。やっぱり、リアは可愛いな」


'シュヴィ'が静かに言いました。


僕がまだ悩んでいると、

顔が抱きしめられた。


近づく彼女の口、その目を、

僕は止められなかった。


見つめる。

優しい雰囲気を漂わせながら、冷たく思えるその顔を。

初めての感触が、ただ冷たいと思った。


それからだ、頭痛が始まった。


『しゅくふくをさずける:


たいしょう:りーずあるふぃん·しるゔぁー


いのうのなまえをきめてくださいーーー』


動けない。頭のなかに、女の声が響く。

体が痺れて、何もできない。

徐々に離れていく'シュヴィ'の体。

また青年の声に切り替わった。

'シュヴィ'は僕に向かって、微笑んだ。嘲笑いではない。

それから体を屈むと、妙な感触が襲ってきた。


声を出そうとする。無理だった。

無理やりに動こうとした。

動け、動けーー


腕が、動いた。しかし命令を聞かない。

勝手に、彼女の頭を掴んだ。人形みたいで、規則正しく動いた。

人形みたいに遊ばれてる。

何コレ、なんだよコレ!?


しばらくして、彼女はあそこから口を抜くと、

こう笑った。

「お返しだ、リアは、

無理やりが好きでしょ?」

違う!

「違わナイナ、オレにそんな辱めを受けさせて、


まあ、別に怨みはないけども? しかし、当時は結構むかついたよ、


殺したいって思うほどにな」


コイツ、僕が何を考えてるのを、わかってる、、、

じゃあ!

何故、なんでこんなことをする


「何故?ただそうしたいから。

だって、オレ、リアのこと好きだし」


手で掴かまれた。頭は動けないから見えないけど、感触がある。

僕のことが好き?

何を、、、!


「オレもね」男から、女の声になった

「昔はリアのことを嫌いだったよ?うるさいただの餓鬼だと思ったよ。

でもそうじゃない。そうではない。

何もかもを失って、オレは初めて、ハア、、、ハア、、

リアのことが好きになっちゃった。


これはきっと、恋だよね?」

汚らしい効果音と共に、'シュヴィ'の声が耳に届く。

何を、言っている。。。


「だから。オレは、ワタシはリアを死なせたくない。

ずっと生きてほしい。」


『いのうのなまえをきめてくださいーーー』

まただ。


「名前か、どうしてほしい?」


勝手にしろ、早く、あの声を止めろ!


「じゃあ、、、本のなかで習ったものにするか、

かっこいいのがちょうど思いつかないよね、うふふ」


どうせ選択なんて端から存在しないから


『いのう:永劫回帰(エイゲヴィーダークンフト)


がいとう の いのう は ありません


せーぶでーたをきめてくださいーーー』


「では、こっちも、早く、イってくれたら助かるのだが」


終わってくれ。頭が、くあらくrあ、あああーーー

なんだ?痛い。なんだよ、なんだコレ。




、、、、、


『せーぶさくせいします


とちゅうで でんげん や こたい の らいふちっぷ を ぬかないでください、、、


せーぶ かんりょう しました


、、、

せーぶでーた は はそん しました』


、、、、、



頭痛がようやく終わった。


目を開ける。朝だ。

爺が僕の隣りで立っている。


「ずいぶん魘されておりましたな、坊っちゃま」

その声に不思議と安心感を覚える。


喉が渇いた。カップを持ってくれと言う前に、カップが目の前にいた。

僕は一口を飲んだ。さすが爺だ。


「ところで、夢の中でずっとゼフィーヴィエのお名前を呼んでいらしゃいましたが、

もしや今日のお出かけも夢に見ましたか?」


「そういえば、昨日そう約束していたな。

時間は?」


「昼の十時にございます」


「午後に約束したはず、早く支度するか。

アイツ、口がうるさいしね」



僕は爺と馬車に乗って、アイツとの約束のところへ出た。

が、途中。盗賊に捕まった。


爺は殺され、僕は売られることになった。


一緒に捕まったの中の人に、アイツもいた。


ボロボロで、盗賊ドモのおもちゃのように、目の前に現れた。


僕は鎖を無視して彼らに突進した。が、地面に倒れた。


声が聞こえる。

おぞましい声が、地獄の中のような声が、ずっと耳のそばから離れなれない。


「アアアあ、アアああアアーーーーー」

僕の声だ。僕の声でないものが喉からでてきた。

泣いてた。彼が、アレが、僕が泣いてた。


血が見える。切断された、首の切断面が見える。

地面を爪で抉りとる哀れな子供の残骸が、

見える。


☆☆☆


『せーぶでーたによみこみちゅう



いのうにより、せいこうしました』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ