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⑭異能

☆☆☆

三人衆は店から出てすぐ、道の脇へと歩いた。

子分二人はボロボロなアニキを支え、後ろについてくる'ナニカ'にビクビクしていた。

慕ってるアニキをあんな風に痛めつける奴、本来憎むべきだったはずの相手が、

可愛らしく鼻唄を混じりながら後ろについてくる。

不気味で仕方がなかった。


猫がゴキブリに勝ったとして、それはごく普通なことだが、

もし猫に勝てるゴキさんが現れたら、それはただただ怖いでしかなかろう。

子供と大人の差は、それくらいにある。

それ故に彼ら二人、いや三人ともに、リアーー子供の皮を被った'ナニカ'に恐怖心を抱き始めた。

親分に叱られることを覚悟した上で、彼らはリアの言葉に従った。

それを、リアは見抜いてる。

しかしあまり関心を持たなかった。


一同はさらに風俗街の南へ歩いた。

途中からアニキさんの痛みも緩和して、漸く歩けるようになった。

店がどんどん減っていき、街灯だけが隣り合わせるよう灯ってた。

光が薄くなっていく。

木々の葉っぱが時々おでこに張り付いてくる。しかしまだつかない。

郊外までいくようだ、リアがそう思ったとき、四方から人が近づいてくる。

足音しか聞こえないが、少なくて数十人はいる。


囲まれたな。リアは軽く首を鳴らした。

「結構だ、遊んでやるよ」


「待って!そうじゃない、彼らはここスラムに住んでる物乞いだ!」


「物乞い?」

適当に一人に向かう。

五、六歳の男児が、目をパチパチと光らせ、リアの顔を見つめる。

脅威には見えない。本当みたいだ。


「この辺りはスラムなのか?郊外だと思ったよ」


「もともと公園として扱う予定だった場所が、

たまたま貧しい人たちがここに集まってて、次第にスラムと化した。

俺らも親分も、みんなここ出身なんで」

ガリガリくんがそう言って、彼らに挨拶をかわす。

リアはどうでもいいと思いながらも、剥き出しの殺意を抑えた。


「もう少しで着くから」

デカブツは震えた声でそう言う。

リア頷いて、男児の頭を撫でる。

男児はなんの返事もしなかった。


光が見える。三階建ての建物がそこにいた。

中からは人の影が見える。アニキさんは前に出て、ドアをノックする。

三回、停まって、もう三回ノックした。

ドアが開くと、褐色の髪に濃いクマ、それからタバコを咥えてる若い女性が現れる。


「あら君たち、もう帰ってきたのか。

うん?この餓鬼は何?」


「すいやせん、親分、金は恐らくもう取れないと思います、、、」

アニキさんはドアの前で土下座する。

「「申し訳ございません」」

続け様に、下っ端二人も土下座した。


「それはもういい。で、この餓鬼はなんだ?」

どうやらこの若い女性が親分らしい。

どうでもいい、早く終わって帰って寝るか。

そう思ったリアだったが。


女は立ったまま、腰から妙なモノを取り出した。

ソレに関する知識は、リアが持ち合わせていない。

だからこそ、脅威とも、恐れとも思わなかった。おもちゃのようなモノ。


「異能持ちか、それも結構ヤバイ系、、、仕方ない。

『殺』してから対策するか」


小さな声でつぶやく女。

リアは当然ぜんぶ聞き取れたが、大して問題視にはしなかった。

女はゆっくりと、ソレをリアに向けた。

小さな筒の先が、リアの頭を捉えた。


リアは口を開けてあくびする、恐ろしくノロマ。

こんな奴が親分って、冗談にもほどがある。

つうか、この女、何をしようとしてんだ?


「親分!コイツは、あの娼館が新しい雇った用心棒なんだ。

めちゃくちゃ強くて、アニキも一撃で倒されてて、

それで親分のところへ連れてくれって言われて、

俺ら、怖くなっちゃって、、、本当に、、本当に、申し訳ございません!」

言い訳を並べるデカブツ。


「ハア」

ただ溜め息をする。

「もういいわ、許すよ、あんたらがポンコツってのも一日二日でもあるまいし」

それを言い終わると、女の指が小さく動く。


「あの?」

茶番を飽きたリアは口を効く瞬間。

ゾッとした。

ヤバイ。ヤバイ。

直感で足が動いた。

上へジャンプする。十メートル、二十メートル。

飛ぶように。

が。音はない。何もない。

トリガーは、まだ引いてない。


だがリアはソレが何なのかすら知らない。

トリガーのことも知らない。

迂闊。慢心。

空へ高くジャンプする自体、悪手でしかない。

女はソレを瞬く間に上へ向く、微調整の域。


鳴らす。バン!

音が、ソレを耳したリアは、意識を失う。

それから、空の中、落ちる前に、忽然と消えた。


ピチャっと。

土下座するデカブツの首に、何かが落ちた。

雨かと思った。

デカブツは手で拭きとると、部屋の光を借りて、それが血であることがはっきりする。

地面にも、数滴の血痕が残ってる。


「死んだな。

けど次からはこうはいかない。

まずは住所を変えようか。

ったく、私だけがチートだと思ったのに、どうもこの異世界、変だわ。

電気があるのにスマホがないとか、異能があるのに、魔法のマもないとか。

ハア」

再び溜め息をする女。


「お前ら、早く上がってこい。

いつまでそこにいるつもり?」

☆☆☆

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