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⑫決意(何もしない)

赤ん坊は何かをつかみたいという本能が備わっている。可愛らしいが、鬱陶しいとも思う。

もちろん赤ん坊となった俺も、ついつい何かを掴みたくなる。

例えばおっぱいとか、

おっぱいとか、おっぱいとか。

赤ん坊ならの特権であり、三年間俺の生き甲斐と暇つぶしの主な手段だ。

それだからか、俺自身すら知らない癖が、

体に染み込んでいた。

どうも俺は誰かを抱いて、「何か」を吸わないと、寝れないみたい。


夜中になると、リナの声が耳に入った。

「もうすぐに仕事の時間です、

起きてください」

俺は寝ぼけて自分が呼ばれてると、勘違いしちゃいました。

目を開けて見ると、俺は餓鬼の腕を抱いて、その口をちゅーと吸っていました。

餓鬼も声に反応して目を開き、俺とチューを交わすと、体を起こし、離れようとした。

その時だった。

俺は、急に、どうしようも無い悲しみにつつまれて、

涙を零した。


寝ぼけてると言ったな。

実際の感じは、明晰夢のようなもの。

半分寝ているが、意識ははっきりしている。

このときの俺は、ただ一つのことを考えてた。

『いかないで』って。

子供みたいな、ただ子供らしい考え。

純粋に『ひとり』になることを悲しんでる。


しかしやはり捨てられる。

『また』捨てられる。

俺は声をあげて泣いた。


餓鬼は俺の顔をじっと見つめ、小さく呟いた

「やはり覚えてないか。

父上も、こんな奴を使って、転生者どもの争いに参加しようとか、ばかばかしい。」

泣きじゃく俺を余所に、

餓鬼はリナへ目を向いた。

「用心棒だったな、今いく」

そのときに、

俺はかつてないほどの怒りを覚え、

更に声をあげた。のみならず、

(てのひら)で彼の目を塞ごうとした。


「これは?」リナの声。

「嫉妬してる。」

餓鬼の顔が近く、キスされた。

安心感のような、禍々しいものを、胃袋に入った。気持ち悪い。

「い、いつもこうなの?」またリナの声。

「会ってから二年間、ずっとしてる。

昼間だと何も覚えてないみたいがな。

こうしてるほうがよっぽど可愛いのにね」

「もしかして、、、お兄ちゃんというのは、ウソなのですか?」ちょっと驚いたリナ。

「ウソじゃない。

家の問題で、コイツが危険に晒さることになりそうだったから、連れ出した。」


「そうなのですか。

てっきりあたしと同じダリットかと思いました、、、」

「名前はある。リアだ。」

「、、、リアさん?

えっと、じゃあ、あたしの名前って」

「コイツが適当についたんでしょ。」

「そ、そうですか 、、、」


「じゃあ行ってくる。コイツを頼んだ」

「わかりました、、、」



☆☆☆(せーぶ)

朝になりました。

目の前は餓鬼の寝顔。

昨夜餓鬼の姿を消えてから三十分、ようやく落ち着いて、リナのことを抱いて寝た。

明晰夢もそこで途絶え、その後のことは一つも覚えていない。


餓鬼の言う「二年間、ずっとしてる」なところ。

まさかだが、俺が覚えていないのか。

いやさすがに考えすぎか。


「夜でこっそり来たとか?」

一人でつぶやく。

記憶のどこか欠けたような気がする。

もし単に「夜しか来てない」なら、

俺はとっくに何かを使われて、

記憶を消されることになる。


いわゆる催眠ものだ。


それは、俺がもう堕ちてるかもしれない、

って意味でもある。


戦慄する。

いかんいかん、マイナス思考になってる。


「逃げる」

でも今じゃない。

まだまだ体は子供、せめて成長してから逃げる。今は屈辱を忍んで、餓鬼の寄生虫になってやる。

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