①転生という理不尽
☆☆☆
果てさてここはどこなんだろうか?
何も見えない、何も感じない、ぼんやりと意識だけが「生き」てるような現状である。
光も何も存在せず、妙に眠気と似た感触が周りを包み込む。
なんだこれ、もしかして夢とか?夢にしては実に不思議だな。
そう思ったら、忽然目の前に映像が出た。
最初は赤ん坊の声、それに伴って現れたのは誰かの手、画面いっぱいに赤くなった。
映像が切り替わる。
今度は喧嘩の声、男性と女性が喧嘩してる、でっかい人間二人が喧嘩してる。
何を言ってるのかさっぱりわからないが、どうも見覚えがある。
男の巨人は映像の一人称視点の首を掴んだらしい。悶え声と女の叫びが耳にくる。
映像がまた切り替わる。時計の音がやたらとでかい。
(うるさい)
心で言った途端、映像の一人称視点も「うるさい」と言い放ったのだ。
気が合う。声の持ち主は男の子らしい。坊やが目が開けた先は、天井である。
これもまた、見覚えがある、遠く昔で見たような、しかしはっきり覚えていない。
いつ見たんだろうか。
マダラ模様が白い天井に張り付いて、人の顔の形をしていた。
坊やは壁の上の時計へ目線を向けさせる。この後はもう「思い出した」。
彼は椅子を時計のしたまで置くと、その上に立ち、時計めがけて頭突きした。
時計も彼も一緒に地面に落ちた。
また意識が失うのかと思ったが、彼は立ち上がって、何度も何度も時計を踏み潰した。
もううるさいものはいない。すっきりした。
足音がする、とても不気味で、怖い足音が近づいてきた。
どこにも逃げられない、ドアが開いた、男だ。
けどその顔は黒く潰されて、よくわからない、知ってはいるはずなのに、知らない人がそこにいた。
「てめえ、深夜で何をやっている?」
不機嫌そうな男の声に、彼は萎縮してしまう。
それから、すっごい臭い。映像越しでも伝わるほどだ。
ますます不思議な夢だ。
あ。蹴られた。映像がまた切り替わる。
何もない。くらい、いたい。
何コレ
凄まじく痛い。痛い。全身が寒くて動けない。
血だ、死ぬ、何で、、、?
あれ、映像はまだ?
え?
もういいの?
そっか。もういいのか。
☆☆☆
神というものはどこまでも理不尽な存在だ。
ありもしないのに、虐殺の旗として掲げられて、偶然の賜物も神の奇跡と謳われて、
どこまでもふざけた存在だ。
しかしもしも奇跡が神とやらの仕業なのなら、俺は絶対にソイツをぶっころしてやる。
「はい、シュヴィちゃん、乳だよ~」
騒々しいと思って目を開けたら、目の前に女がいた。母だ。
名前はわからん、名乗られたことないし。
でもすっげー美人である。
銀髪で目は悪いが、面だけはアイドルのトップを狙えるレベル。
「どうしたの?腹が減ってない?」
あーもう、さっきから乳首を唇辺りに当たってくるな、鬱陶しい!
俺は息を飲んで、乳輪ごとしゃぶった。
ひたすらしゃぶった。
憎き神とやらを殺す思いで乳を喉に通して、精いっぱいにしゃぶった。
しゃぶりながら思った。
俺は確かに死んだはずだよな?
理由は覚えてないけど、死んだのは間違いない。じゃあ、これは、転生か?
何で、、、
『死にたいのに』