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「亮太様、おはようございます」
「大迫さん、おはよう」
リビングに入った俺は、部屋の中にいた高齢で品の良さを感じさせるスーツを着た男性に挨拶を返した。
彼の名前は【大迫玲司】さん。
うちで働いてくれている執事で、今は俺の専属になってくれている。
大迫さんは2代前、今は引退した俺の祖父の代から「有明」に仕えてくれている大ベテランで、俺の事も昔から何かと世話を焼いてくれた。
俺の事をよく分かってくれている数少ない理解者の1人だ。
そして俺の頼もしい右腕でもある。
「今朝の罠の設置箇所はいかがでしたか?」
「完璧だったよ。あいつの行動をよく分析してくれているね、流石大迫さんだ」
「亮太様からそう言っていただけて光栄でございます。ただ、今朝のユナ様の叫び声的には電流が少々弱かったご様子……次からはもう少し強めに調整した方がよろしいかと」
「その通りだ……あいつの肉体強度のデータをAからA+に上方修正しておいてくれ」
「かしこまりました」
大迫さんはタブレットを取り出し、情報入力を開始した。
あの変態は精神も肉体も常軌を逸している。
その上変態のくせに、いっちょ前に成長もしていくのだ。
最近では同じ罠が連続した場合、通用しない事が多くなってきている。
故にこちらも様々な罠を駆使しながら、あの変態の相手をしなければならなくなっており、日々のデータ収集は必要不可欠なのだ。
「亮太様。昨日、海外から取り寄せたセンサー式のギロチンなんですが、少々錆びついており、ユナ様の肉体には通用しない可能性が高いと思われますが、いかがされますか?」
「まぁそれでも擦り傷を負わせるくらいは出来る筈だから、刃の部分に痺れ薬を塗っておけば足止めくらいにはなるだろう」
「そう仰られるかと思い、痺れ薬を1ケース注文しておきました」
「流石大迫さん、頼りになるよ」
仕事が出来る男はやはり違う。
こんな有能な人物を俺の専属執事にしてくれた親父には感謝しかないな。
「ユナ様ですが、電気ネットからは恐らく後20分程で脱出されると思います。次の罠も用意しておりますが、今のうちに朝食を取られるのがよろしいかと」
「そうだな、早速用意をお願いするよ。食べ終わったら、午後の為に用意している罠の確認を済ませるとしよう」
「かしこまりました」
これが平日、俺が起床してから通学の為の準備をするまでの流れである。