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「か〜!奢りで食う飯は最高だなっ!」
「容赦なく食いやがって……」
「禅輝の食べっぷりはいつみても凄いね」
午前中の授業を終えた亮太、禅輝、ミズキの3人は皇城大附属高等学校の敷地内に存在する、4つの皇舎の中でも選ばれた者しか入る事が出来ない「天」の15階屋上のテラス席で食事を摂っていた。
私立皇城大附属高等学校。
「家柄、学力、上に立つ者の資質」を認められた者にしか門を潜る事が出来ないとされる、日本の頂点に君臨する高等学校。
その中でも家柄を最も重視しており、通っている生徒の殆どは大会社の社長の子供や、財閥の御曹司。
当然ながら会社や財閥にも規模や年商にも差があり、それによって生徒達は成績とは別にある【階級】が定められている。
「にしても、予約無しでテラスの最上段の席を優先して案内してもらえるとか……【有明】の力は偉大だよなぁ」
「七光だって言いたいのか?」
「そんなんじゃねーよ。つか、そんな事言ったら俺らみんな七光みたいなもんだろ」
「そうだね〜(笑)。結局の所、家系が偉大だから僕達はこうやって良い思い出来てる訳だしね」
「癪だが……間違いねえな」
ミズキと禅輝の言葉に複雑な表情を浮かべる亮太。
七光という言葉に納得いかないまでも、自身の家が持つ力の大きさは十分に理解していた。
有明財閥。
日本三大財閥の一角で、実質日本の頂点とされる財閥。
事業は多岐に渡り、日本の企業の4%は有明に関連していると謳われている。
その歴史は古く、財閥と名称されたのは今から150年くらい前の話しだが、有明の名は1000年も前から「商い」の世界において名を轟かせ続けている。
ちなみに今の有明の当主は第49代目で、次の代で50代目。
そして亮太はその【50代目候補の内の1人】なのだ。
「そういえば亮太、依頼の件は大丈夫なのか?」
「ああ。今の所は問題ない」
「有明の後継者候補に課される、有明会長からの特別依頼だったっけ?亮太も大変だね〜」
「爺様の依頼なんざ、あの変態を撃退する事に比べりゃ気楽なもんだ」
「言うね〜!流石、現会長が特別目を掛けてる【5人の子】の1人って所かな?」
「それを言うんじゃねーよ。あの4人と一緒にされるとか、マジで勘弁だわ」
「まぁ……亮太の言いたい事は分からんでもないな」
「禅輝は他の候補者を知ってるんだっけ?」
「2人だけだけどな。亮太もクセが強いが、その2人も大概やべーぞ」
「だからアイツらと一緒にするなって……」
亮太は禅輝の言葉に深く溜め息を吐いた。
その道を極めたり、頂点に立ったりする者は何処か頭のネジが外れていたりする。
そしてその道が険しく、頂という場所が高ければ高い程、普通とは掛け離れていくものだ。
その中で覇を競うという事は並大抵な事ではない。
亮太も他の候補者に負けない様に日々努力を……あまりしてはいない。
「つかそんな事よりも、あの変態を叩き潰す方法だ。ミズキ、何かいい案はないか?」
「あるよ〜!前々回のデータ参考に打ち出してみたんだけど、こういうのはどうかな?」
大企業の後継問題をそんな事よりもと吐き捨て、ユナを撃退する作戦をミズキと考える亮太。
そんな亮太を見て禅輝はこう思うのだ。
(結局の所……亮太が1番クセが強いんだよな)




