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「ごめんごめん!(笑)まぁでも仕方ないんじゃない?あの見た目の子で、好意を持たない方が不自然だからね」
「あれはマジの気の迷いだ……」
「ああ……記憶から全て抹消したい汚点だ……」
2人は震えながら力無く呟いた。
ユナは亮太とは生まれた日から、禅輝とは小学校からの付き合いだ。
そして亮太は物心ついた頃、禅輝は初めて出会った時にユナの事が好きになった。
ユナは小さい時から評判の美少女で、人形の様な容姿に誰もが頬を赤らめた。
その可愛らしい見た目に惹かれてしまう事は謂わば男としての本能……逆らえる筈がなかったのだ。
「ゆなちゃん、大好き!」
8年前、こう言ったのは禅輝。
出会って2ヶ月が経った頃、彼は意を決して告白した。
彼が7歳の頃である。
彼にとって人生初めての告白。
まだまだ小さな子供とは言え、その思いは本物だった。
勇気を出した言葉……
それに対するユナの返事はこうだ。
「ユナはりょーたくんいがいの男の子はさかりがついたお猿さんにしか見えないから、ごめんなさい!」
これが流堂院禅輝の初めて告白した相手からもらった返事だった。
当時の彼はまだ7歳。
盛りのついた猿にしか見えないという言葉はそれから数年後に理解する事になるのだが、この時の彼はそのクソッタレの言葉の意味を知るよしもない。
だが、意味が分からない事が功を奏し、彼は一回振られただけで彼女を諦める事はなかった。
「今は」亮太の事が好きなだけで、頑張っていけば俺の方が好きになるかもしれない。
その一心で彼は何度も何度も彼女にアプローチを繰り返した。
そして彼は2月14日……彼女の異常性を目の当たりにしてしまった。
「りょーたくん!私を貰って!!」
全身をチョコレートで塗りたくって彼女は亮太にそう告白した。
これは彼らが小学1年生のバレンタインの事だ。
漫画でもありえない小学生のブッ飛んだ告白を目の当たりにした禅輝は今でもその光景の事をこう口にする。
正気の沙汰ではない……と。
こうして彼の初恋は終わりを告げた。




