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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

狼獣人の罰ゲームのせいで人間の恋が始まったそうです

作者: 天球

どこかの人獣共通高校で、狼獣人の先輩と人間の後輩がドタバタするお話―――

「ヤッバ見て見て!俺の下駄箱に入ってた!!」


同じクラスの友達たちに言って回るのは俺――時矢 翔猿(ときや しょうえん)。れっきとした人間で、花も恥じらう高校1年生だ。165cmとそこまで高くない身長と短くツンツンにした髪の毛のせいでいつも猿呼ばわりされているが、そんな俺にも遅咲きの春が来たのようだ。


「自分でネタ仕込むなんて哀れすぎて何も言えねぇぞ」


「流石の俺たちもフォローできねぇわ。もうちょっと笑える嘘にしとけ」


虎獣人と人間のツレ達が路肩に捨てられた子犬を見るように俺を見てくる。ガタイのいい獣人とキラキラしたイケメンにため息をつかれているが失礼千万ではないだろうか?俺のモテエピソードを羨ましがらず嘘扱いとは、流石に怒っていいだろう。


「お前らな…」


ワナワナと拳を振るわせるとおぉ怖!と笑い出しやがる。ヘラヘラと悪びれる様子もない。恋愛警察はこの辺パトロールしてねぇのかよ、コイツらしょっぴいてくれていいんだが。


「今時ラブレターって、誰かの悪戯じゃねぇの?」


「猿に出す手紙なんて秘境の温泉チケット1泊2日とかだろ。他のお猿さんと一緒に入れるやつ」


まーたバカ笑いが始まった。あとで椅子に画鋲撒き散らしてやる、うん。心に誓った。


「けっ、お前らには俺の気持ちなんてわかんねーよ!ピュアな心を失ったヤリチンどもめ!」


ビシッと指を刺してやったがはいはいと華麗にスルー。校長の長話を聞いているような興味ゼロの様相だ。コイツらに話したのが失敗か、俺は心の中でちょっと泣いた。


「んで愛しのあの子からのラブリィレタァにはなーにが書いてあるんだよ」


「そうそう、これがお前のお遊びだったらファミレスメニュー全奢りだからな」


あ、そうだそうだ、興奮しすぎて中身を確認するの忘れてた。どれどれ…



茜色の夕暮れ。呼び出されたのは校舎の屋上。待ち合わせ場所はベッタベタだがそれっぽさが相手の本気度を匂わせる。俺は早めに着いたようで、愛しのあの子はまだ来ていない。や、やばい、自分でも心臓がツーバス踏んでるってわかる。相手の登場も直視できなさそうだ…とりあえず後ろ向きで待っておこう。


程なくして…

ガチャ


ド、ドアが開いたー!どんな子だ?!ちっちゃくて可愛い系か?すらっとした美人か?!できればおっぱいが大きい子がいいな、な!な!!


「えぇ〜…」


あれ、なんかすげぇハスキーな声だ…もしかしてカラオケで歌いすぎちゃったかのかな?


「あのー…すんません」


…うん、うん?ハスキー過ぎやしないか?というかえらい声が低いぞ。これはこれでイケボだけど…なんだろう、今求めてる声色じゃない。固まった身体に油を刺してギギギと顔を動かした。


「呼び出しておいてなんですが、誰ですか…?」


振り返ったらあら可愛い女の子…ではなかった。イケボイケワンの男の子。いや、「子」として評したら失礼だ。目の前の獣人は俺より身長が高くガタイもいい。やだやだ最近の女の子はこんなに背の高い男性なのね!って…


「…んなわけあるかぁぁぁぁあああ!!お前こそ誰だ!!??」


俺渾身の喉枯れ確定ボイスはグラウンドのサッカー部まで轟いていたらしい。



「で、どういうことなんすか先輩」


「わりぃ…実は…」


俺は目の前のイケワン、もとい狼獣人に詰め寄った。この獣人は2年の先輩で大神 湊斗(おおがみ みなと)というらしい。180cmくらいで獣人としては小柄らしいが、顔も声もガタイも全て俺に勝てる要素がない。

そしてこの悪辣な告白劇は仲間内のゲームで負けてのことと言う。所謂罰ゲームというやつだ。やり口はこうである。まずラブレターを書く、次に後輩クラスの靴箱に赴く、最後にテキトーなところに投げ込む。この3つを命じられ、粛々とこなして今に至ったのだ。


「ホップ・ステップ・ジャンプ!的な?お手軽3ステップだったわけよ〜」


「わけよ〜じゃないっすよ!俺のトキメキ返してください!!てか普通下駄箱も男子のか女子のかくらい調べないっすか?!」


「んーだってさっさと終わらせたかったし、どーせ罰ゲームだし断られてお終いじゃん?あわよくば付き合えたりしたかもだけど、もーめんどくさかったしよー」


手と耳パタパタしてんじゃねぇよ…笑い事じゃねぇんだよ…。俺の腹ん中、マグマも泣いて逃げ出すくらい爆発してて今にも口から火ぃ吹きそうだわ。


「騙しちまって悪かったな。これで罰ゲーム終了だし、何かの縁だからファミレスでなんか奢ってやるよ」


ほう?そんなことで俺の繊細な心が癒やされるとでも?そもそも飯で釣られるようなヤツに見られてるのか?クソっ、何か仕返ししてやりたい。このワンちゃんにも一泡吹かせて…そうだ。


「いや、いいっす」


「そ、そうか?ホントごめんな、この埋め合わせは」


「付き合いましょ?」


「…は?」


「だーかーら、付き合いましょって!先輩からのラブレターにOKするっつってるんす。告ってきたんだから今更NOなんて言えないっすよね?」


人差し指を立てて先輩の胸元にツンツンと押し付ける。先輩はたじろいで後ろに下がるが俺は無遠慮に追随した。


「なっ、何言ってんだお前!俺たち男同士じゃねぇか!」


「そっすよ?でも今時別に珍しくもないっすよね?先輩から告ってこれたから付き合うのもやむなしってことですよ。文句あ・り・ま・す?」


とうとう先輩を壁際まで追いやった。ドン!と壁に手をつき壁ドン、ガン!と壁に足をつけて壁ガン。先輩はヤバい奴に絡んだと思ったのだろう、オドオドし始めていた。…ここで逃してなるものか。デートと称してファミレスだろうがスイーツだろうが行き散らかしてやる。この際男でも構わない。奢らせまくるだけまくってやって、こっぴどく振ってやるのだ。


「…なら1週間だ」


「はい?なんすか?」


「1週間だけ付き合ってやる!それで終わり!いいな?!」


お、承諾したぞ。いや断らせるつもりもなかったけど。それにしても期限付きか、まぁ変に長くならなくていいけど。どうせ友達?先輩後輩?の延長みたいなもんだし、タカるだけタカってさよならしちまおう。


「いいましたね?後悔しないでくださいよ、せーんーぱーい」


きっと俺は極悪非道な顔をしていただろう。さぁ楽しい楽しい1週間の始まりだ。



金曜夕方に決行された地獄の告白劇も幕を閉じ、土日に向こう1週間のプランを決めていく。先輩とはメッセージアプリのIDを交換したから、こちらからやりたいことリストを送りつけてやった。内容は「彼女が出来た時にやりたい120のこと(俺作)」からピックアップしたのだが、ふざけんな!とガチ目の文句が戻ってきた。イチャつかずにほどよく金を搾り取れるプランだったがゴネにゴネられ結局オジャンだ。

その後もアプリ上で生産性のない白熱教室バリの議論がなされていく。そして結論として数個のプランが確定し、月から金の放課後にデート(笑)してくれることになった。幸いにしてこの1週間は先生達が研修とかでポロポロといなくなり、部活もない。フルで先輩にタカれるのだ。ふっ、法案を無理やり通した政治家の気分だぜ。


『明日から楽しみっすねーよろしくお願いしますよ先輩』


日夜にこれだけ返してやると、仁王と般若を足したようなスタンプが先輩から返ってきた。


***


【月曜日 - @ファミレス】


「うま!このハンバーグ超美味いっす!あ、あとこっちのパスタとこのピザも、あ!あとあと最後にこのデラックスパフェもおねしゃーす!」

「お前マジで遠慮ないのな…1週間の軍資金がもう溶けそうだわ」

「なーに言ってるんすかこんなの序の口っすよ!てか先輩は食べないんすか?」

「食べてんじゃん、ほら」

「そんなので足りるのかって聞いてるんすよー」

「お前が食いすぎなんだよ…猿じゃなくて豚じゃん…」

「…ふぅーんそーいうこと言っちゃうんだ。すみませーん!こっちのカツ丼と蕎麦のセットも追加でー!あ、あと餃子と麻婆豆腐もおねしゃーす!」

「おまっ!…はぁ万札飛びそう…」


「うっわマジで全部食ってるし」

「そりゃ食いますよ。食ロスはダメなんすよ〜」

「まぁそうだけどよ…胃袋が異次元と繋がってるんじゃねぇの?」

「それならもうちょっと追加し」

「あーもういい!俺が悪かったって!」

「ふっ、わかりゃいいんすわかりゃ」

「でもまぁ食いっぷりいいやつは嫌いじゃないぜ。見てて気持ちよかった」

「…何ニヤニヤしてんすか、こっちは気持ち悪いっすよ」

「うっせぇ!見応えあったって褒めてるんだから素直に喜べよ」

「へーへー、ありがとうございまーす」


…結局ほぼ万札が飛んでいったらしい。



【火曜日 - @ボーリング】


「んがーー!!また当たらなかった…」

「ふっ、へたくそめ。まー見てろ…よ!っと」

「はぁ?!ターキーじゃないっすか!」

「ふふん!どーよ、少しは見直したか?」

「…耳ピコピコと尻尾ブンブンがなければカッコいいんすけどねぇ〜」

「んなっ!よーしいいだろう、この回のトータルで点数低かったやつがジュース奢りな」

「うわー後輩いじめだー異議ありだー!」

「へっ、認めねーよ?ほらショウの番だぞ」

「なっ、いきなり名前呼びっ!」

「猿よりいいだろ、ほら投げろー」

「その2択なのかよ…。いくぞー…おりゃっ!お、おおお、おお?!おおーー!!ストライク!」

「おお、やったじゃん!ほいハイタッチ!」

「いえーい!…って、なにナチュラルにタッチするんすか」

「えーいいじゃん、俺だってお祝いくらいしてやれるんだぜ?」

「ったく調子狂うわー…ほら、先輩の番っすよ」

「俺のことも名前呼びしてみろよ。ほらほら動揺させてみー?」

「…はよう投げなされ大神先輩」

「名前呼びじゃねーじゃん、まぁいいや、おりゃっ」


…結局大神先輩の圧勝だった。クソ、ジュース代が…。



【水曜日 - @ゲーセン】


「…あの人形かわいいな」

「…欲しいっすね」

「…ショウ、クレーンゲーム得意か?」

「…そんな面構えに見えます?」

「「…」」

「…大丈夫だ、軍資金はプラスしてきた」

「大神先輩、流石にあれ取るのは無理ですって…これ1回500円すよ?」

「うるさいっ!ほらやるぞ、横から角度見ててくれ」


「と、取れた…」

「取れましたけど…いくら財布から飛びました?」

「…7,000円」

「いやいやいやいや普通に似たやつ買いましょうよ!圧倒的赤字っすよ?!」

「俺が取りたかったからいいんだよ!それにもう1個取らないと…」

「は?取ったじゃないっすか」

「何言ってんだ、俺とショウとで1個ずつだろ」

「なっ…に言ってんのはそっちじゃないっすか!また7,000円が財布から消えますよ?!」

「1個取れてるんだし大丈夫だって!ほらいいから横見ろって。キチンと誘導しろよ!」


「…で、総額は?」

「…15,000円」

「大神先輩って頭良さそうに見えてアホですよね」

「おーまーえーなぁ!ここまできて1個しか取れないとかないだろ!それに」

「それに?」

「…ショウも欲しそうだったしよ」

「ちょっ!いきなりキュンとすること言わないでくださいよっ!ほら耳ピコしない!尻尾振らない!鼻ピスピスしない!!」

「うっさいわ!お前も顔真っ赤じゃねぇか!」


…この人形、大切にしよう。



【木曜日 - @カラオケ】


「カラオケなんて久しぶりだー、ショウはよく来るのか?」

「…実は初めてっす」

「…なんでチョイスしたんだよ」

「だってぇ…歌上手くないから初めては心許した彼女とって思ってた…んす…」

「ふぅーん、いつもの覇気がねぇな。ま、じゃあ俺から歌ってみるよ。あ、これいいな」


「上手いっすね…」

「そう?普通だと思うし初めて歌ったから歌詞間違えまくったぞ」

「いやそーいうことじゃなくて!美声というかイケボというか…」

「なぁーんだよ自信無くなっちゃったか?ふふん、今度はショウくんの美声が聴きたいな〜。あ、これ歌ってみろよ」

「げ!これムズいですって!無理無理恥かくだけっす!」

「だーいじょうぶだよ、俺も一緒に歌ってやるからさ。ほら始まるぞ」


「はぁはぁ…キー高…」

「いや普通に上手いじゃん。なんだよ謙遜だったのかよ」

「…昔音楽の先生に笑われて、それ以来ダメなんす…うわっ恥ずかしいっ」

「そんなことか…んなもん忘れちまえよ。1番近くで聞いてた俺が上手いっつってんだから自信持て」

「大神先輩…」

「あ、いいこと言った?いやー俺ってば後輩思いのいい先輩だなぁ〜」

「その一言が余計っす!ホントミナト先輩はそーいうところなんすよねぇ」

「んなっ!お前ここで名前呼びかよっ」

「へへ、ビックリしました?ミナトパ・イ・セ・ン」

「…ぜってーバカにしてんだろ。はぁーまぁいいや、ほら次これ歌おーぜ。デュエットだってよ」

「デュエットって…どっちが女役やるんすか?」

「どっちがいい?」

「に、ニヤニヤしないで欲しいっす!なら俺がやりますよ…こっちのパートの方が歌うところ少なそうだし」

「ならショウちゃんにお願いしよーっと、お、始まる始まる」

「ショウちゃんってなんすか〜!あっ、クソもう始まっ」


…色々と叫びすぎて喉が枯れた。



【金曜日 - @公園】


「最後これでいいの?」

「いいっすよ、ミナト先輩の財布もうオケラでしょ?」

「いや賭け事したわけじゃ…まぁ賭け事がキッカケか。はは、見事にスッカラカンだー」

「俺優しいっしょ?金欠のパイセンに愛の手をってやつっす」

「ぜーんぶショウがキッカケだけどなぁ!…それに愛の手っていうなら、ほら」

「えっ、ちょっ!」

「いいだろ別に。夕暮れだしこのベンチからなら誰にも見えないしよ」

「い、いきなりすぎるんすよっ、手ぇ握るなら一声かけてください!」

「かけたら引っ込めるだろ」

「んなこと…ないっす…」


「…結構楽しかったな」

「…はい」

「まさかあのラブレターがこんなことに化けるなんて思いもしなかったよ」

「…はい」

「ショウも楽しめた?」

「…うん」

「そっか…じゃあそろそろお開きにするか」

「…」

「1週間って約束だったしな」

「…」

「…おい、なんか言えよ」

「…嫌っす」

「え?なんて言っ」

「嫌だ!!」

「うおっ」

「嫌だ嫌だ嫌だ!これで終わりなんて嫌だ!!」

「お、おいどうしたんだよ…1週間って約束は」

「そうっすよそれで合意しましたよ!でも…ミナト先輩と過ごした1週間が楽くて…本当に本当にめちゃくちゃ楽しくて!…だから離れたくないんす、別れたくないんす、これで終わりなんて嫌なんす!!」

「…」

「最初はちょっとした復讐心でしたよ!俺の心を弄んでー!って。だからたくさん先輩に貢がせましたよ!どうだざまーみろなんて思ったりもしました!でも、でも…。ごめんなさい、全部返します…のし付けて返します!だから延長してください…お願いします…」

「延長?」

「1週間…じゃなくてもっとずっと、俺のそばにいてください…ミナト先輩。…好きです。大好きです」


「…」

「…」

「…なんか言ってくださいよ」

「…ぶはっ!」

「なっ!なんで笑うんすか?!めっちゃ真剣に聞いてくれてたと思ったのに!」

「ゴメンゴメン、あーもう怒んなって、そんでほら、涙拭きな。俺からイタズラレター出したのに最後はショウから告られるなんて、なんだかアベコベだなーって笑っちゃった」

「なんすかそれぇ…」

「ゴーメーンって。しかしあれだけ不服感丸出しだったのにこの変わり様はなぁ〜」

「…ごめんなさい」

「しこたま食うだけ食いやがってー」

「……ごめんなさい」

「あの人形2体で15,000円だぜ?ありえねーよなー」

「………それ先輩が悪くないっすか?」

「ははっ確かに。そんで最後の最後でマジ告白とかよー。抱きついてくるかと思えば涙と鼻水でぐちゃぐちゃじゃんかよー。あーあ、俺の服デロデロだよ」

「ごめんなさい、ゴメンナサイ、こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛…」

「へへ、言いたいこと言ってやった。倍返しだーってな。…ほら顔上げな?答え出すからさ」

「え?ミナト先ぱ…んっ…」

「ん…んはっ…ん…ぷはっ!ははっ、鼻水の味がする」

「先輩…」

「これが答え。好きだぞショウ。俺からもよろしく!」

「〜〜〜!!せんぱーい!」

「うおっ勢い勢い!ベンチ壊れるって〜!」


…都会のくせに今日に限って星空が見えるなんてな。きっとこの光景を一生忘れないだろう。



***


【extra!金曜日夜~ - @???】


「ところで明日って土曜じゃん?何か予定ある?」

「いえ、特にはないっすけど…どうしたんすか?」

「…今日家に誰もいねぇんだ」


その誘い方は…そういう事だよな。


「…はい」

「うち、くる?」


答えなんて言うまでもない。


「…うん、行く」

「〜っ!おーまーえー!なんだよそのかわいいやつ!狙ってるだろ!」

「か、顔フニフニしないでっ!俺だって恥ずかしいんすよっ!でも…でも…」

「でも?」

「ミナト先輩にならワガママなところとかガキくさいところとか、見せてもいいかなーって、思っちゃったんす…」

「お前ホントタチ悪ぃわ…。だけどさ、なーんか忘れてない?」

「んえ?俺何か忘れ物しました?」

「アホめ。俺がオオカミだって事だよ」


うっわ悪い顔してる。ってことは俺はさしずめ赤ずきんってとこか。そういえばカラオケのデュエットの時も女役だったな。女役かぁ…大丈夫かな。


やっぱりちょっと怖いから一応言っておかないと。


「俺、は、初めてなんで…やさしくして…欲しいっす、ミナトさん」


ピンと立ったかと思えばピコピコと忙しなく動く耳、そのまま飛ぶんじゃないかと思うほどプロペラする尻尾、そして暗くても分かるほどの真っ赤な顔。ふふ、この先輩も大概可愛いよな。こんなオオカミなら喜んで餌食になってやろう。


すっかり暗くなった帰り道。握った手を恋人つなぎに変えて愛しのオオカミの巣へと赴くのだ。

読了いただきありがとうございました。

初投稿!ということで某サイトに書いていたものをこちらにも展開してみました。

「いつもの日常にそっと獣人がいるだけ」がモットーです。気が向けばこちらにもちょこちょこ投稿してみます~。

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