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卒業パーティから数日たった。
世間は夏季休暇である。
数日間こもり、泣きにないては思い出して泣いて、やっと少し落ち着いたところだ。
「エマ様、旦那様よりお話があるために執務室に来るように言伝がありました」
マリーが言った。
「え、なんだろ・・・こもっていたから?」
「内容は存じ上げません」
ため息をつきながら、晴れた瞼を冷やしていたタオルを取り執務室へ向かった。
コンコンコン
「エマです」
「入りなさい」
「失礼いたします」
執務室に入ると、そこには、父、母、兄のカイルがいた。
なんだか重苦しい雰囲気だ。
「あの・・・要件とはどのようなことでしょうか」
「お前に縁談の申し込みがきた」
「・・・はい」
(覚悟してたけどもうか・・・失恋の痛みを冷やす間もないなぁ)
「ローズ辺境伯ご子息、辺境騎士団長からだ」
「お受け・・・・はぁ!?」
こほんと母が咳払いをした。
「失礼いたしました。辺境騎士団長を務められているロイ・ローズ様ですか」
「そうだ」
「なんで・・・」
「なんでとはこちらが聞きたいよ」
「辺境伯家からの申し込みだ。原則断ることはできない。ただ、お前の気持ちを聞きたくここに呼んだ」
「・・・お受けする前に、ロイ様とお話しすることは可能でしょうか」
「先方に問い合わせてみる。数日待て」
エマは部屋を出、ドアを閉め、自室のドアを開け、椅子に座った。
「・・・現実?」
ほっぺをつねった。
「・・・痛い」
「・・・」
「なんで!!?」




