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ep4-4

ゾンビ映画を観たりゾンビを倒すゲームはやった事がある

つまりゾンビに対する耐性はある

しかし実際に目の前に現れて倒せといわれれば対応できるものではない

何より信幸は素手だ

素手でゾンビと戦うキャラは…格闘家キャラならいるかもしれないが残念ながら信幸は格闘家ではないし喧嘩最強でも徒手空拳の得意者でもない


「何でゾンビなんだ⁉︎」


「何が?」


全力疾走の信幸にレナが涼しい顔で横後ろから付いてきて聞いてきた


「いや、昭和後期が舞台でゾンビが徘徊する世界って」

「ゾンビ?」

「そうゾンビ」

「違うわよ、ゾンビ型ロボット」

「へ?」

「有機生命体ではなく機械生命体」

「てことは、あれはロボット⁉︎」

「そう」


またロボットである

しかもゾンビロボットである

ゾンビとロボットという全く関係なさそうな2つの融合体である

悪意のAIエリカはロボット好きである

どのぐらい拘っているのかと思わせられる程である


「倒す方法は?」


「ショットガンやライフルといった武器が各地に配置されているわ」


「そ…そうか」


街中に転がっている物騒な銃の数々

銃弾もまたあちこちにあって補充していくのだろうか?

ロケットランチャーや戦車なんかもありそうだ

というかマグナムなんかもあるだろうがロボットゾンビに果たして効くのか?

ゲームである以上一定のダメージを与えたら倒れるか弱点を狙うのか

よく分からないがやるしかない


「弱点は分かるか?」

「頭」


実に分かり易い定番の弱点だ

それにしても…


「はぁ…はぁはぁ…」


疾走して息がキレた

しかしゾンビロボはもう撒いた筈だ


「はぁ…、ここまでくれば安心かな?」


「何が?」


「ゾンビのロボット」


「索敵した結果、この周囲には18体のゾンビ型ロボが存在しているわね」


「おいいぃぃぃぃ!!」


18体のゾンビ、そんなのに襲われたらひとたまりも…


「あれ?、そういえはあいつらゾンビって強いの?」


「火器は装備していないけれど握力は強力」


「どんな感じ?」


「例えば手を握られたらその手は潰される」


「そりゃ大変だ」


怪力のゾンビだ

昔ヨタヨタ歩くゾンビの映画は観た

ヨタヨタどころか思いっきり走ってくるゾンビ映画もあった

このゲームのゾンビはヨタヨタゾンビらしいので此方が走れば対処は可能だろう

ビックリして逃げてきたが性質さえ解れば怖くない


「このステージ…ステージで合ってるかな?、クリア条件は何か分かるか?」


「信幸君の宝を見つける事」


「宝?、宝って何だ?」


「タイムカプセル」


「え?、あ…」


そういえば小学生の頃に埋めた記憶がある

確か当時住んでいた家の近くの林に埋めた


「ここからなら30分ぐらいの距離だ」


「ならば行きましょう」


「いや待て、行くまでにゾンビがいるかも?」


「いるわね、ボスもいるわ」


「ボス?、そうか…」


各ステージにボスが配置されているという事だ

ならば武器は必須だ


「銃が無いと倒せないだろうな」


「そこまで強くはないけど次のステージからは必要になってくる」


「なら武器を取得しよう、場所は分かるか?」


「案内する」


案内されたのはスーパーの屋上だ

今は多くの場所で閉鎖されている屋上だが信幸の子供の頃は解放されていた

屋上の屋内にはゲームセンターが

そして屋外には小さな子供達が遊ぶ為の遊具があった


「懐かしいな」


子供の頃に何度も見た場所だ

やがては屋上は閉鎖され、このスーパー自体も無くなってしまった

今ではマンションが建っている筈だ


「何か?」


「いや、何か懐かしいなと思って」 


「あれが武器よ」


信幸を無視してレナが屋外の隅っこを指差す

そこには宙に浮いたシャボン玉のようなまん丸の泡があって、中には銃が入っている…ように見える

とにかく近づいてみた

確かに銃が入っている

これはハンドガンだ

信幸も知っている昔の奴だ


「これって触っていいのかな?」


「触れば取得できるわ」


「そ…そうか」


泡に触れてみた

弾けて消え去る泡

その瞬間信幸の体に異変が起こった


「な…なんだ!?」


腰の辺りにホルスターが現れている

そして拳銃が刺さっていた


「リボルバー、装弾数6発、32口径ね」


「リボルバーって回転式のヤツか?、連射できないんじゃ?」


「よく狙って撃つ事ね」


「外したらヤバいんじゃ?」


「ゲームだから反動はないし照準も補正が入るから大丈夫」


「そ…そうなのか」


まるでガンマンである

武者の次はガンマン

西部劇のガンマンか

別に憧れてはいないが何かカッコいい気がする


「ていうか6発だけ?」


「そう6発だけ」


「予備の弾は?」


「遠くにある、取りにいくとゾンビが増えるわ」


「何で?」


「人が噛まれてゾンビ化」


「え?、中身はロボットなのに?」


「ゲーム設定」


ゲーム設定で全て片付けられてしまう世界

せめて歯に人間をゾンビ化させるウイルスなりが仕込まれていて、噛まれた人間はロボゾンビの配下となって襲ってくるぐらいの説明は欲しいトコロだ


「なら途中で襲ってくる敵には使えないな」


「回避しながら進みましょう」


そのまま信幸のかつて住んでいた旧家までの30分間はレナが索敵をしつつ細い路地を曲がりながらゾンビを避けながら進む


ゾンビの足は遅い

ヨタヨタのヨタちゃんなら何ら恐れるに足らない

いわば俺のスピードには付いてこれまいであり、世界最速のスピードの中に俺たちはいるであり、遅い遅い遅い遅い遅遅遅遅遅遅遅遅ーーーー!!である

これならば銃など使うまでもない


そして懐かしの家に

しかし懐かしがってはいられない

なぜならゾンビが多いからだ

ボスの近くにはゾンビが多く配置されている…というよりボスを中心にゾンビが増えているといったトコロか

そのまま家を素通りして林へ


「あれか」


確かに埋めた場所に少し大きめのボスらしきゾンビがいる


「ここから届くか?」


ホルスターから銃を取り出して狙いを定める


「もう少し寄らないと無理ね」


「そうか…」


流石に距離が離れ過ぎているかと考えた

ならば寄る

寄って頭に狙いを定める

ボスゾンビは気づいていない

そのまま引き金をひいた


カンッという音と共に弾はゾンビの頭に当たる

しかし倒せない

ボスゾンビはゆっくりとこっちを見た


「当たったよな?、倒せないぞ」


「あと2発」


「なるほど」


更に引き金を引く

眉間に命中したが多少体を揺らした程度でボスゾンビは鉄パイプを掴んで少し早いスピードで迫ってきた

通常のゾンビとは動きが違う、流石はボスゾンビだ

しかも鉄パイプ

あんなもので叩かれたら大怪我は必死だ

ヤバい、焦ってきた


「あと1発、よく狙って」


「分かった」


信幸は集中する

外せば鉄パイプボカンか

いや、普通にかわせそうでもあるが

速いといってもヨタヨタゾンビに比べればの話でありウスノロであるのは確かだ

しかし鉄パイプドカンは避けたい


「…!!」


3度目の引き金

そしてボスゾンビは倒れた


「やった」


ゾンビを倒す事がこんなに嬉しいとは思わなかった

所詮はゾンビであり信幸の敵ではなかったとも言える


銃をホルスターに収め信幸は息を吐いた


「序章はクリアね」


レナが言う

そういえばゲームは始まったばかりなのを思い出す信幸

とにかく序章はクリアだ

何と言われようと信幸はやったのだ


「地面が光ってるが」


「宝を取得してクリアよ」


「タイムカプセルか」


何を入れたかは忘れている

一体何が入っているのか

子供が入れたものだ、大したモノではあるまい

そう思いながら信幸は光る地面を掘り起こした

そしてカプセルを手にする

平べったい木の箱

開けて見ると…


「あ…」


中にはシール入れのファイル

ファイルには番号順にシールが所定の位置にそれぞれ入っている

当時流行ったビックリマンのシールだ

しかもほぼ集めていた当時の段階での全種類がコンプリートされている


「集めてたなぁ、そういえば」


必死に買って集めたり友達と交換なんかして集めたシール類

大体コンプしていたらしい

すっかり忘れていた

その後、興味が他に移って集めなくなったのだった


「シールが宝物?」


レナがファイルを覗き込んできた


「子供の頃のね」


信幸はそう言って開いていたファイルを閉じた

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