ep4-2
ゴボゴボ・・・
「ん?」
ゴボゴボゴボ・・・
自宅のシンクで水を流すと水の流れとゴボゴボという音が聞こえる
これはつまるところ詰まりである
排水管に何かが詰まった
何かというと大体は油である
油が管の中で固まり水が流れなくなる
こういう時素人は水回りの業者に頼むのが普通だ
水道のトラブルいつでもOKみたいな業者
しかし中には悪質な業者もいたりして高額な請求書を突きつけてきたりする
そこで信幸は考える
詰まったのなら自分で何とかすればいいんじゃないかと
幸いな事に今時はネットがある
詰まりの解決策もまたネットで調べられたりする全く便利な世の中になったものだ
という訳で自分で色々調べてみて出来そうなものを採用してみる
それでパイプクリーナーを購入
これはワイヤーを排水口から入れて中の汚れを落とすというもの
早速試してみると途中で止まる箇所があって何度かガリガリやっていると抜けて更に進めた
引っかかった部分辺りを念入りにガシガシやって更に進んだが後は特に引っかかる箇所はなくてスムーズに進む
ある程度ワイヤーを入れて引き抜いた
そして水を流して試すとゴボゴボ音は消えて水も滞りなく流れるようになった
ついでに排水トラップも購入していたので新品に替えて完了
そこからの水漏れは無しで作業は終わった
費用は1万弱
業者に頼むと中には何十万と取られる場合もあるので実に安くつく話だ
ただし今回は排水管のごく入り口付近を清掃しただけであり室外の酷い詰まりは業者に高圧洗浄してもらう必要なんかも出てくる
水プシャーは素人では難しい部分もあって信幸も試した事がないし一軒家ならともかくマンションだと個人でする訳にはいかず管理人に言って業者にやって貰うしかない
しかしとにかく直ったのだから良しとしよう
ウィーン
「・・・・・・」
カサッ
「・・・・・・」
ウィーン
コンビニに入って商品を手に取りレジにて代金を支払い、そして出る
無言な店員による無言なレジ支払いでの一コマ
本当に一言も喋らない
いや、まてよ・・・もしかしたら喋らないんじゃなくて喋れないだけなんじゃないかと思えなくはないがそういう事でもなく一回やる気のない兄ちゃん店員君と喋っている所を見かけた事があって一応喋れるようだ
何かよく分からないがとにかく妙な店員である
もしかしたら亜衣のようにホログラフィックなんじゃないかと疑いたくなる
コンビニを出ていつもの公園へ
ベンチに座りパンと牛乳を取り出す
野良どもは相変わらず少し距離を置いて信幸を見つめ続けている
日々の信幸を見つめ続ける野良猫どもだ
こいつらもひょっとすると実はもしかしてホログラフィックの可能性も捨てられない
実は死んでいて目の前にいるコイツらはもう実在していないデータ上の存在なのではないかと
つまり闇の組織の手先として信幸を監視しているのではないかと
「あーうまい」
チーズクロワッサンを食べながら信幸は満足する
今日はチョコクロワッサンではなくチーズクロワッサンだ
チョコばかりは食べていられない
チョコだけでは飽きてくる
単なるクロワッサンも好きだ
しかし不味いクロワッサンは嫌いだ
パン屋によってはクロワッサンが不味い店がある
そういう所には2度と行かず美味しいクロワッサンがある店に行く
もっとも今食べているチーズクロワッサンはコンビニで売ってる工場で作られている余り美味しくない方のクロワッサンだが
「おかえり信幸」
「ただいまー」
公園で一服してから秘密基地マンションにやってきた信幸
シンクの詰まりゴボゴボ音を無事解決した信幸に死角はない
最近は秘密基地に来る事が少なくなっている
何せ敵が動かない以上信幸の出番はない
今日は亜衣に呼ばれたから来たのだ
「用事って何だ?」
「最近VRゲームのとあるゲームで死者が増加中よ、信幸」
「VR?」
「そうVR」
VR、Virtual Realityの略
ゴーグルをはめて仮想現実空間を楽しめるものだ
もちろん信幸はやった事がない
信幸がやった事があるのは昔懐かしいピコピコレトロゲームぐらいなものだ
「VRってあの目に何か付けるあれ?」
「そう、飛び出す立体メガネよ」
そういえば昔カラーセロハンの片方が赤で片方が確か緑だったかのメガネを付けて絵や文字が浮かび上がってきたのを信幸は思い出した
「それがどうしたんだ?」
「その中の人気ゲーム『ダークネスバタフライ』というゲームをプレイしているユーザーの不審死が目立つわね」
「それってもしかしてエリカと何か関係が?」
「確定じゃないけどね」
確定ではない、しかし亜衣が目を付けているという事は少なくとも確定的な何かがあるのだろう
それにしても今度はゲームとは
「不審死って?」
「ゲームプレイ中に亡くなっているわね、大勢が」
「なるほど」
ゲームプレイ中に突然死で亡くなる・・・事はあるかも知れないがそれが続くという事はそのゲームに何らかの即死性効果が付与されているという事である、知らないが
「え?、それって・・・」
「どうかした?、信幸」
「もしかして俺がそのゲームを?」
「その通りよ信幸、準備は出来ているわ」
「いやいやいや、なぜ死ぬかも分かっていないんだよな?」
「そうよ」
「そうよ・・・て、いや…何か死ぬのは嫌なんだけど」
「大丈夫よ、あらゆる状況を想定してセキュリティーの高いマシーンを開発したから」
「え?、独自に開発したマシーン?」
「そうよ」
独自に設計・開発したマシーン、その言葉に信幸は弱い
設計も開発もした事は無いが、いや、した事がないからこそその言葉にカッコ良さを感じる
まぁ、単に何も出来ないおっさんの憧れである
それで亜衣の案内でとりあえずそのマシーンのある部屋に行った
「デカ‼︎」
部屋の中央に置かれたマシーン
ズングリとしたシルエットだ
そしてそのマシーンの上部が上にスライドしてコックピットを思わせる内部が現れた
あるいはアーケードにある座席に座って操作する筐体みたいな感じだ
ゲームセンターピコピコインベーダータイプの丸ボタンと十字キー操作型のそれとは格が違う
しかし信幸は怯まない
かつて若かりし頃に格闘ゲームで鍛えた腕で死亡ゲームの謎を解いてやるぜ‼︎という闘志が沸き起こってくる
実際はヘボい腕前しかなく乱入してきたプレイヤーに瞬殺されていた人間だが
「これってVR?」
思っていたモノと違う
信幸の知るモノはゴーグルみたいなのを目に付けて遊ぶモノだった筈だ
「高セキュリティーのウイルス対応のマシーンよ」
「はぁー」
まぁ、コンピューターウイルスなんぞ人間に感染するモノではないが実際に何が原因で死んでいるか分からない以上何でも搭載しておいてもらった方が安心ではある
「さぁ、信幸座って」
「え?、何の説明も無し?」
「ぶっつけ本番で力発揮するタイプでしょ?」
「いやいや、そう言われても」
何か知らないが実に得体の知れない事をいきなりする事になって信幸は困惑した