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ep4-1

AI、一般社会ではその進化は早いと思われるが亜衣を知っている信幸からすればその進化は実に緩やかに見える

そうは言っても将来的にはAIによって人間の職は奪われていくのは確実であり、主に三次産業辺りは全部AIに取って代わられると思われる

二次産業はどうかと言うと職人や管理者以外は必要とされず生産物は全自動で大量生産可能になるだろうからこれも必要ない

一次産業は恐らくAIが苦手とする分野だろう

国民の大多数が農民化する時代が来るかも知れない



「あー、高いなぁ」


最近は商品の値段が高くなっている

パンだけではなく何か全体的に物価が上がっている

おにぎりも100円前後で買えていたモノが今や150円以上している

これはもう金持ちぐらいしか買えなくなりつつあるのであり低賃金非正規労働者である信幸の手の届く範囲からは遠くなってきている

しかし食べなければ死ぬのであり白米を食べさせて下さいであり、しかしなぜか米が売っていない惨状であり進退極まった感じの今日この頃である


いつものコンビニでパンと缶コーヒーを持ってレジへ

最近はセルフレジを利用する客もいたりして中々の文明開花ぶりを見せている

しかしまだ信幸の番ではない

おおよそ文明的でない生き方を余儀なくされている信幸に取ってはセルフレジなどという高度な操作を要求されるレベルが高いマシーンは使いこなせないだろう


「……」


信幸がレジの前に商品を置くと若いお姉ちゃん店員が無言で読み込む

信幸がお金を出すと受け取ってお釣りを無言で出してくる


「……」


終始無言の店員

いらっしゃいませもありがとうございましたも何も無い

袋は要らないから聞いてこられる面倒臭さはなくてよいが

この子は他の客に対してもこんな感じだ

最近入ってきたが一体どういう子なのかと思う

信幸は別に気にしないが客の中には不快に思う客もいるのではないかと

知らないが

店長、バイトは選べと思うが選べるほど応募者は無く猫の手も借りたい程の心境かも知れず下手をすればストレスが溜まって白髪になったり禿げてしまうかも知れない状況かも知れない

ちなみに前にいた女子大生は今は見かけないので辞めてしまったのではないかと思われる

この店員と違って愛想が良かったので残念だがコンビニバイトなんていつ迄でもやるモノじゃないとも思うのでそれは仕方がない

ちなみにやる気のない若い男のお兄ちゃん店員は未だに健在だ


とにかく無言の店員を背後にコンビニを出た信幸はお馴染みの公園へ

そしてベンチに座りリュックからチョコクロワッサンと缶コーヒーを出す

朝っぱら野良どもは虎視眈々と信幸の食べようとしているパンを狙って茂みからじぃーと見ている


そんな事はお構いなしで信幸は袋を開けてパンを齧りながら缶コーヒーの蓋をペコッとした


「……」


今更ながら信幸は昭和の生まれである

そして平成、令和と生きてきた

いつの間にか昭和の時代は遠くになり、その当時の事も今では忘れられかけてきている

思えば信幸のいるこの公園も昔は子供達がよく大勢遊んでいた

しかし今では子供達の姿は殆ど無く、犬や猫の散歩とかぐらいの人々しか利用していない

時代は確かに様変わりした

今ではおっさんの信幸も若い頃はあり、小学生の頃は公園とかで友達と一緒に遊んだりしていた

その頃はスマホは勿論携帯電話も携帯用ゲーム機もない

しかし何か楽しかったのは覚えている


昔を懐かしむと言う訳ではないが信幸の幼少時代から少年時代は本当に楽しかった

現代の方が遥かに便利にはなり昔は良かったなどと思い出補正に浸かる気はないが確かに昔は何か面白かった

何より活気があった

人々は多く、子供達も若い子達も多かった

今のように将来の不安が庶民を覆っておらず明日への希望に溢れていた

信幸の知る昔が現代より勝っている点を上げるなら活気を上げるだろう

これだけは自信を持って言える


「学校か」


小学生、中学生、高校生

それぞれが何かしら色々とあった

信幸は大学に進学しなかった駄目な人間だが、大学に行っていたらどうなっていたかは興味はある

もっともそんな事を考えたトコロでそれは遥か昔の事であり、今更やり直しなど出来る訳では無い

転生モノが一部で流行ったのは本気でやり直しをしたい人々の願望が強いからなのかも知れない

しかしジタバタしてみても人生にやり直しは無く、後はただ死んでいくだけだ

本気を出せば実は凄い自分などというものはどこにもない

それでもなお転生にしがみつきたいのは生まれ変わりやあの世の世界を信ずる心と共通する部分があるのかも知れない

死は全てのリセットであり、コンテニューは出来ない

自分が消えてしまう恐怖は時代を問わずある

だからあの世や生まれ変わりという話を作って自分は消えないという安心を得たいのだ


何も出来なかった自分自身

それは信幸もそうだ

少なくともAIと悪意のAIの戦いに巻き込まれるまでは信幸は何もせずに人生をただ無駄に生きて終わるだけの人間だった


パンプキン戦から暫く経つ

騒然としていた当時に比べて今は随分落ち着いた

首相も新しく選ばれ行政は滞りなく運営されている

悪意のAIエリカの真の狙いは不明だが少なくともこっちを殺す気で来ているのは確かだろう

しかしあれ以来何の音沙汰もない

もしかしたら諦めたんじゃないかと思わされる

それを亜衣に聞いた時があった


「ないわね」


即座に否定された

小休止を入れながらも着々と次なる攻撃の一手を準備している…らしい

向こうが動くまで待つしかなく、こっちから撃って出られないのは面倒だ

しかし考えようによってはエリカのベース基地をこっちが把握していないようにこっちの秘密基地とかもエリカは把握出来ていないという事で

素人考えでも衛星とかで動きを把握出来そうなモノだが何故かそれは無さそうだ

その辺り一体どうなっているのか…

いや、もしかしたら亜衣もエリカも相手の基地は掴んでいるのかも知れない


「敢えて放置している?」


…な訳は多分ない

亜衣はともかくエリカは何でもありの攻撃をしてくる奴だからそれはない

エリカは本当にこちら側の事を把握出来ていないのだ

その点に置いても亜衣の隠す能力はハンパではない

自分も個人情報などをエリカに盗まれないように気をつけなくてはならない

と言っても具体的にどうすれば良いのかは分からないが

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