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浮気デート

「先輩、可愛い後輩と浮気デートしてる気分ってどういう感じ?」


「レンが合意してるから浮気じゃないし、そもそも俺は追い出された可哀想なやつなんだからな?」


 夏休みが始まり、今日も特にやることがないから宿題を済ませたり、みんなと雑談をしたりして過ごそうと思っていた。


 だけどレンと水萌みなも、そして愛莉珠ありすが家にやって来ると、レンに「ありすと一緒に浮気してこい」と言われた。


 今まで散々俺に「浮気をするな」と言ってきたレンが何を言ってるのかと思ってるうちに俺は愛莉珠によって連れ出されていた。


「一応言いたいのはさ、あそこは俺の部屋なんだよな」


恋火れんかさん酷いねー。やっぱりありすに乗り換える?」


「レンとグルのありすも俺の敵だからな?」


 レンが何を思って俺と愛莉珠を追い出したのかはわからないけど、愛莉珠は絶対にその理由を知っている。


 じゃなきゃあんなにすんなり俺を連れ出したり……


「いや、するか」


「先輩とはいつでも逃避行する準備はできてるからね」


「さいで。それでどこか行きたいとこでもあるの?」


「先輩とならどこまでも」


 絶対に言うと思った。


 俺と愛莉珠は今、特に目指すところもなく適当に歩いている。


 今は最近はあまり来なくなったゲームセンターの近くをぶらついている。


「恋火さんは浮気してこいって言ってたからホテルでも行く?」


「あぁ、漫画喫茶とかって行ったことないんだよな。暇つぶしにちょうどいいかな?」


「ありすの話を聞いてるようで聞いてない感じを出しながら話が逸れてない絶妙な返し。せっかく恋火さんからの許しも出たんだから恋人ごっこしようよー」


 愛莉珠が俺の服の袖を掴んで引っ張る。


 頭がぐらつくからやめなさい。


「恋人ごっこするのはいいけどさ、絶対にレンには怒られるからな?」


「ちゃんと録音あるから」


「それでも理不尽に怒るのがレンだろ?」


「先輩はそういうめんどくさい恋火さんが?」


「結構好き」


 レンとしては追い出す理由として『浮気』と言っただけで、本当に浮気してこいなんて言ってない。


 だけど言葉は言った本人と違った捉え方をされることはよくある。


 俺達は全部をわかった上で揚げ足を取っているけど、レンもそろそろ学ばないといけない。


 俺も愛莉珠も自分の都合のいい方に捉えることを。


「ありすは先輩と恋人ごっこができて嬉しい。先輩はそれを知って怒る恋火さんを見れて嬉しい。ウィンウィンだね」


「ちなみに怒られるのはありすだからな?」


「大丈夫、先輩も巻き込むから」


 笑顔でとんでもないことを言う子だ。


 いつものことだから別にいいけど、あんまりレンを怒らせて遊ぶのはやめさせないと。


 まあ一番怒らせる理由を作ってるのは俺なんだけど。


「恋火さんって小さいことでもすぐ怒るけど、怒る理由がだいたい先輩が取られそうになるからなんだよね」


「嫉妬深いところもまた可愛い」


「独占欲強いメンヘラなんだろうね。恋火さんじゃなかったら普通に嫌いなタイプ」


 真顔でとんでもないことを言う子だ。


 言いたいことはわかるけど、それも捉え方によっては勘違いされても仕方ない言い回しだ。


 まあ俺もレンじゃなかったら「よくあんなめんどくさい人と一緒に居られるな……」とか思うんだろうし。


「隣の芝生は青いの逆みたいなもんだよな」


「隣の人が持ってるものの方が良く見えるってやつね。じゃあ今隣にいるありすの方が恋火さんよりも良いってこと?」


「そうやって思うから浮気ってあるんだろうな」


 自分のものよりも隣の人が持ってるものの方が良く見える。


 実際は隣の人の持っているものに新鮮さを覚えて良く見えているだけなのに。


 恋愛に関しても、自分の恋人ことは良いところも悪いところも知っていて、隣の人は良いところしか知らないから良く見えるというだけ。


 だったら悪いところまで好きになってしまえば隣の芝生が青く見えることなんてない。


「天才的な考えだ……」


「自画自賛して自惚れてる先輩可愛い」


「別に自惚れてないけど?」


「知ってる。でも実際、それができたら確かに浮気なんてないけど、先輩みたいに有言実行できる人って少ないんだよ?」


「そういうものなんだよな。紫音しおんよりは……大丈夫か」


 ふと、知り合いにバカップルがいたことを思い出したけど、紫音の悪いところはからかい癖があるところで、それは依にとってご褒美でしかない。


 だから悪いところも好きなわけで、あの二人も浮気の心配はないだろう。


 依の悪いところもからかい癖があるところだけど、依が紫音をからかえる時は多分一生来ないから気にする必要はないと思う。


「先輩と紫音さんって、むしろ相手の悪いところが好きだよね」


「それはあるかも。やっぱりギャップに勝てるものはないってことだよ」


「恋火さんが怒ることにギャップを感じるのは先輩だけだと思うよ」


 愛莉珠に呆れたような視線を向けられる。


 レンは確かに怒りっぽいけど、それは俺達がそうさせてるだけで、本当は人をからかって遊ぶ小さ……幼さも持つ可愛い女の子だ。


 まったく誰だ、レンを怒りキャラにしたのは。


「じー」


「自覚はあるからそんな目で見られても可愛いとしか思えないんだよな」


「そうやってナチュラルに『可愛い』って言うから恋火さんは怒るんだよ?」


「だってレンに言うと怒るし」


「それは照れ隠しね。というか先輩って『可愛い』って言わないと死ぬ病気なの?」


「別にそういうわけじゃないけど、俺って嘘つけないから」


「それが嘘、って先輩には言えないんだよね。先輩って本音が服を着て歩いてるみたいな存在だから」


 俺は嘘をついたことがない、とは言わないけど、基本的に俺は嘘をつかない。


 良い言い方をすれば嘘をつかない誠実な人なんだろうけど、実際は嘘がつけない、思ったことが全部口に出るめんどくさいやつだ。


「そのせいで浮気の心配されるんだもんね」


「どうしたものかね」


「先輩はそのままでいいよ。恋火さんだってなんだかんだ言っても今の先輩を好きになったわけだし」


「それならいいけど。でも、これからは愛想を尽かされないようにレンだけに愛を囁いた方がいいのかな?」


「それいいかも。毎日可愛い恋火さんが見れるじゃん」


 愛莉珠が目をキラキラさせている。


 いつからだろうか、レンがいじられキャラになったのは……


「楽しみが増えちゃった。まあそれはそれとして、話をしてたら着いたよ」


「歩き疲れたし帰るか」


「まだだめー。じゃあいこー」


 愛莉珠に腕を引かれる。


 なんか俺の部屋を出る時もこんな状態だった気がするのは気のせいだろうか。


 まあそんなことはどうでもよくて、さすがにここはレンがとか関係なく駄目だろう。


「ありす、真面目に──」


「はい逮捕」


「現行犯、有罪、夏休み中先輩と触れ合うの禁止の刑!」


「めんどくさいのが出てきた」


 愛莉珠の腕を掴み、俺を抱き寄せて色々なことから救ってくれた双子の警察が現れた。


 ということで、俺がレンに本気で幻滅されるころは無くなったのでした。

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