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期待を裏切るプレゼント

「じゃあ次は僕が渡すね」


「良かったなレン。絶対にまともなプレゼントが貰えるぞ」


「その言い方だとまるでうちがまともじゃないプレゼントをあげたみたいじゃないか」


 よりが不服そうに言うが、確かにスカーフは良いプレゼントだけど、もう一つの方は何かわからないけどまともではないのがわかる。


 それにまともじゃないプレゼントを渡したのは何も依だけではない。


「俺はどっちかって言うと蓮奈れなのプレゼントに物申したいけどな」


「え? 恋火れんかちゃんと水萌みなもちゃんが絶対に喜ぶ最高のプレゼントを用意したはずだけど?」


「マジであんな写真一枚で済ませたんだな」


「だって二人とも満足そうだし」


 蓮奈からの誕生日プレゼントは結局俺の寝顔の写真ということになった。


 水萌には別アングルから撮られたやつだったけど、そんなものを貰って何が嬉しいというのか。


「多分これは何回も何回も言ってることだけど、舞翔まいと君が恋火ちゃんや水萌ちゃんの寝顔の写真をプレゼントで貰ったらどう思う?」


「普通に嬉しいが?」


「そういうことなの。そろそろ理解して」


 蓮奈にため息をつかれた。


 俺もそれは散々言われてるから言いたいことはわかるんだけど、捻くれ者の男の寝顔と可愛い女の子の寝顔では話が違うと思う。


 これを言ったら余計に呆れられるから言わないけど。


「先輩はねぇ、寝てると無防備で幼くなって、たまに無意識に手を握ってきたりしてくれるから可愛いしかないんだよ」


「普段がやばいからギャップがすごいってことか」


「起きてる時はかっこよさといじらしさが強いからね」


「寝てるありすが起きてる時の数倍可愛いみたいなことだよな」


 俺のことは置いておくとして、愛莉珠ありす達は寝てる時はいつもよりも幼く見えて可愛さが増す。


 要は『黙ってれば可愛い』というやつなんだろう。


 まあ、起きてる時は可愛さ以外のところも出てきて、寝てる時は可愛さが際立ってるだけなんだろうけど。


「お前らってさ、オレの前でなんでそんな堂々と一緒に寝てることを話せんの?」


「自慢?」


「よし、頭出せ」


「先輩、恋火さんがなでなでしてくれるって」


「レンの『なでなで』って過激だからやなんだけど」


 レンの『なでなで』は九割の確率で痛みをともなう。


 それを『愛情』と思えないのは俺のレンに対する愛が足りないからなのか。


「恋火さんは愛が重いからね」


「それだけ愛されてるって思うと嬉しいし可愛いだろ?」


「確かに。まあ、先輩の重さも結構だけど」


「そう? いつもレンに浮気を疑われるのに?」


「それは恋火さんの愛が重いからだよ。つまり二人は胃もたれするタイプのバカップルってこと」


 なぜか愛莉珠にまで呆れられた。


 この際だからバカップルなのは認めるけど、毎回呆れるのをやめなさいよ。


「舞翔くん、しーくんからお料理の本貰ったー」


「ちゃんと話を待って偉いね。紫音は待つのがめんどくさくなって先に渡してるけど」


「だってまーくん達って脱線するとそれだけで十分は話すじゃん」


 ぐうの音も出ないとはこのことだろうか。


 確かに俺達の脱線が元に戻るのを待っていたら終わるものも終わらない。


「それでなぜに今更料理本?」


「料理って言うよりは、手作りスイーツの本かな。水萌ちゃんがスイーツ巡りしてるって言ってたから」


「自分で作った方が安く済むもんな」


「それに、まーくんに作ってもらう口実にもなりそうだし」


「それは紫音が作って欲しいって意味で言ってんの?」


「それもある」


 紫音がニコッと俺に笑顔を向ける。


 別に作れと言われたら作るけど、正直紫音には作りたくない。


 絶対に紫音の方が作るのが上手いから俺みたいな素人の作ったものなんて恥ずかしくて食べさせられない。


「私が最初に食べるの!」


「うん、最初は水萌ちゃん。次が僕ね」


「それならいい」


「なあ、あいつらオレのことは眼中にないのか?」


「レンは食べたいの?」


「サキの作ったものなら?」


「素直に認めんな」


 レンなら否定するものかと思って聞いたのに、真顔で認められるとさすがに戸惑う。


 そんなことを言われたら真面目にやってみなければいけないではないか。


「しーくん、私達の時は嫌そうだったのに恋火ちゃんが言ったらやる気出したよ」


「ほんとね。あんなにあからさまだと悲しくなっちゃうよね」


「うるさいぞそこの腹黒コンビ」


「あー、舞翔くんが酷いこと言ったー」


「いけないんだー」


「腹黒が嫌なら大福コンビ」


「外側は真っ白だけどお腹の中は真っ黒。まさに大福」


 依が説明してくれた通り、水萌も紫音も基本いい子でピュアで優しいのに、人をからかう時だけは生き生きしている。


 まったく、誰に似たのか。


「「じー」」


「二人して俺を見るんじゃない。それよりも紫音はさっさとレンにプレゼント渡せ」


「あ、そうだった。恋火ちゃんにはピッタリの本をプレゼント」


「嫌な予感しかしないけどありがとう」


 紫音がニコニコ笑顔でレンにラッピングされたプレゼントを渡す。


 基本的に紫音がニコニコしてる時はあまり期待しない方がいい。


「……」


「開けてくれないの?」


「サキに聞きたい。紫音は絶対にまともなものをくれるんだよな?」


「紫音はなんだかんだでいい子だからプレゼントとかはネタに走らないと思う」


「信じていいんだな?」


「うん。ただ、紫音は真面目に選んでるけど、俺達から見たら『え……?』みたいなのが無いとは言えない」


「確かにそうなった」


 俺を信じたレンが話してる途中で中身を見て、そっとプレゼントを元の姿に戻した。


「いや、よりほど変なものではなかったけど、『え……?』とはなった」


「一緒に勉強しよ」


「そういう意味かよ。スマホで調べると情報多すぎてどれを信じたらいいのかわかんないから逆にこういう本の方がいいのか」


 レンがプレゼントの意味を理解して再度中身を取り出す。


 どうやら恋人との付き合い方について書かれてる本のようだ。


 そういえば俺も母さんから似たようなのを貰ったけど、本を読む習慣がないから全然読んでなかった。


 今度ちゃんと読んでみるかと、思うだけしてみる。


「じゃあ、ありすからも蓮奈さんにプレゼント」


「そういえば水萌だけにしか渡してなかったな」


「うん。どーぞ、先輩との夜に使ってください」


「よりと被せてんじゃねぇよ……」


 レンが愛莉珠からプレゼントの入った箱を顔を引き攣らせながら受け取る。


「でもぉ、必要ですよね?」


「いらないから」


「えー、でもいざって時に必要ですって」


「お前な……」


 愛莉珠のニコニコ笑顔を見たレンがすごい疲れたような顔になる。


 これは、あれだ。


 レンがからかわれている。


「レン、中身見てみ」


「いいよ、見なくてもわかるから」


「ありす的にはどっちがいいの?」


「うーん、先輩が後でそれを見た恋火さんの可愛さを教えてくれるなら後ででもいいよ?」


「いいんだ。絶対にリアルで見た方がいいのに」


 俺としてはレンには是非今すぐ中身を見て欲しい。


 そして愛莉珠にからかわれて欲しい。


「先輩がそう言うなら今すぐ見て欲しいな」


「ということでレン、開けて」


「今の話し合い聞いて開けると思うのか?」


「んー、じゃあ今ありすにからかわれるのと、後で俺とありすにからかわれるのどっちがいい?」


「何その究極の二択。そんなの今しかないじゃん……」


 レンがそう言って渋々プレゼントを開ける。


 そして中身を見て固まる。


「やっぱりエナドリですか」


「うん。先輩と恋火さんって一緒のベッドに入ると落ち着いてすぐに眠くなるって言ってたから」


「確かに」


「まあ恋火さんは何かと勘違いしてたみたいだけど、さすがにありすは買えないよ? はじゅかちいから」


 愛莉珠がわざとらしくモジモジしだす。


 一体何が買えないのかはわからないけど、全てを察したレンが俺のベッドに潜り込んだ。


 それからしばらくは愛莉珠が毛布の上からレンに「恋火さんはぁ、何が入ってると思ったんですかぁ?」みたいなことを延々と言い続けていた。

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