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放課後デートfeat.詩彩

「先輩と放課後デートしてる……」


「一応相談役ってことにしといてね? そうしとかないと浮気になるってよりに言われたから」


 思い立ったが吉日ということで、ちょうどバイトもなかったので詩彩しあさんに今日行けるか頼んだら二つ返事で了承された。


 とりあえず依と愛莉珠ありすにはレンと水萌みなもの誕生日プレゼントを買いに行く手伝いを詩彩さんに頼んだことは伝えた。


 まあ、愛莉珠と妹を心配するお姉ちゃんが少し離れたところをついて来てるけど。


「じゃあ詩彩はデートって思って、先輩は詩彩を相談の為の道具だと思ってて大丈夫ですよ」


「言い方ね? いや、俺がそう思うような奴って思われてるだけか……」


「ち、違います! ちょっとからかっただけで、先輩ほど優しい人なんていません!」


「ありがと」


 必死に否定する詩彩さんが可愛い。


 そして俺がからかい返したのがわかって顔を赤くするところまでが完璧だ。


「先輩のばか」


「先にからかったのは詩彩さんだからね?」


「わかってますもん」


 詩彩さんが口を尖らせて拗ねたように言う。


 いちいち可愛い子だ。


「そういえば詩彩さんと心彩さんの誕生日っていつ?」


「もう過ぎてますけど、三月の三十日です」


「じゃあお祝いは来年か」


「してくれるんですか?」


「せっかく仲良くなったんだしね。まあ、心彩さんとは仲がいいか微妙ではあるけど」


 詩彩さんがキョトンとする。


 これは俺が勝手に思ってるだけだけど、なんとなく俺は心彩さんに嫌われてるような気がする。


 今も背後から殺気に感じた、つい最近感じた感情が背中に刺さってる感じがしてならない。


「先輩?」


「なんでもない。それで、双子兼女の子目線で欲しいものってなんなの?」


 背後の殺気はとりあえず無視して、今は本題を済ませることにする。


「そうですね、とりあえず詩彩としては、彼氏から貰うなら特別なものが嬉しいです。双子だとペアのプレゼントを貰うことが多いので、彼氏からなら特別な、それこそ唯一無二のようなものがポイント高いです。あくまで詩彩はですけど」


「なるほど」


 やっぱり詩彩さんをアドバイザーに頼んで良かった。


 去年もだけど、俺はレンと水萌に繋がりを残したいからとペアで持っていられるプレゼントを考えていた。


 だけどそれだとレンを彼女として特別扱いできていない。


「でもさ、それって水萌、もう一人からしたらモヤらない?」


「その人も先輩のことが好きなんですよね? それなら少しはモヤモヤしますけど、もう結果は出てるわけじゃないですか」


「結果?」


「先輩は一人を選んでるわけで、彼女を特別扱いするのは当たり前じゃないですか。それをいくら双子だからって先輩にあたるのは違いますよ。嫉妬はするでしょうけど」


 レンを特別扱いして拗ねる水萌は想像がつく。


 だけど水萌の場合は抱え込む可能性があるから怖い。


 別に俺にあたるのはいいけど、抱え込んで前のようにいきなり爆発されるとどうしたらいいのかわからなくて困る。


「りーちゃんに聞きましたけど、先輩が彼女さんとイチャイチャしてる間はりーちゃんを含めたお友達に、水萌さん? のお祝いを頼むんですよね? 詩彩はそれで十分だと思いますけど」


「イチャイチャはちょっと何言ってるかわからないけど、そこを深く考えすぎるのが『優柔不断』なんだよな」


「詩彩は先輩との付き合いが短いからそんな図々しいことな言えないですけど、先輩のそれは確かに優柔不断ですけど、多分先輩は大切な人の悲しむ顔が見たくないんですよね?」


「うん」


「それはいいことなんですけど、先輩が一人を選んだ時点でそれは無理ですよ?」


 詩彩さんに断言されて再度考えさせられる。


 俺だってさすがにわかっている。


 水萌はこんな俺を好いてくれているから、俺がレンを選んで、俺はその気持ちを変えるつもりはない。


 だから水萌は新しい出会いがあるまで叶わぬ恋を続けなければいけない。


「別に先輩が彼女さん、恋火れんかさんでしたっけ。を選んだことは間違いじゃないです。むしろ優柔不断って言われてる先輩が選んだんですから褒められるべきことです」


「だけどそれならレンだけを大切にする覚悟を持てってことだよな」


「そうですね。お友達なんですからそこで関わりを断てって意味じゃなくて、誕生日とか、クリスマスみたいな恋人と過ごす日は他を捨ててでも彼女さんを優先するべきなんですよ。そうじゃないと、期待は消えないですから」


 詩彩さんがすこだけ寂しそうに言う。


 確かに詩彩さんの言う通りだ。


 クリスマスはレンを特別扱いしたけど、本来ならバレンタインとかもレンだけと過ごした方のが良かったのかもしれない。


 やっぱりまだ俺は女心がわかっていないようだ。


「まあ、先輩を悪者みたいに言ってたけど、先輩に彼女がいるのを知ってて告白したりアプローチしてる詩彩達の方がよっぽど悪いんですけどね」


「それは……」


「無理にフォローしなくていいですよ。結局先輩の優しさを優柔不断って言って責めてるけど、先輩の優しさに漬け込んで恋人ごっこをしてる詩彩も悪いんです」


「……」


 詩彩さんの自虐的な発言に何も言い返せない。


 俺が言うのもあれだから何も言わなかったけど、彼女持ちに本気アプローチはやめなさいよ。


 友達同士のじゃれ合いとして相手はしてたけど、挙句には優柔不断とか言われる始末。


 俺は何をするのが正解だったと?


「先輩って告白とかに関してはちゃんと断るか適当に流すから、脈ナシなのはわかるけど、諦めきれないからってアプローチは続けちゃうっていう」


「それで最終的には俺が責められるんでしょ? 別にいいけど」


「怒っていいのに。まあそこが先輩のいいところだからね。よし、とりあえずお詫びとしていっぱいアドバイスしますね」


「ありがと。詩彩みたいな優しい後輩ができて俺は嬉しいよ」


「そういうことを言ってるからみんな勘違いを……今なんて言いました?」


「ありがと?」


「その後です」


「優しい後輩ができて嬉しい」


「その前です! わざとですよね!」


 それはもちろん。


 可愛い子の百面相を見るのが俺の趣味の一つだから仕方ない。


「詩彩、ありがとう」


「……もう、ニヤニヤが止まらない」


「止める為にさん付けに戻そうか?」


「戻したら先輩の彼女さんに先輩とデートしたことをバラします」


「多分遅かれ早かれバレるから別にいいよ」


「じゃ、じゃあ、画像を加工して一緒のお布団に入ってるようにしたのを──」


「それはさすがに引く」


 きっとレンならそんな画像を見せられても信じないとは思うけど、そこまでされたらさすがに人としてどうかと思ってしまう。


「絶対にやりません」


「良かった」


 とりあえず俺が詩彩を幻滅することはなくなった。


 その後は二人でお店を回ってプレゼントを探し、いいものが見つかったので帰……る前にもう一イベントありました。

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