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バカップル認定

「あぁ、鬱。学校が謎の集団に占拠されて休みにならないかなぁ……」


「ほんとになって学校が閉鎖されたら最悪転校になって知らない人しかいないところに行くことになるけどいいの?」


「マジレスぅ……」


 蓮奈れなのいつものが始まり、新学期が始まったんだと思える。


 こうしてみんなで登校できるのも後一年ないのだと思うと感慨深いものがあるような無いような。


「うち的には、新入生の中に主人公が居て、主人公の巻き込まれ(巻き込み)体質のせいで入学式がめちゃくちゃになる系がいいかな」


「そういう系って生徒会が絡んでくるか、同級生の中に主人公をその道に連れ込むタイプだよね」


「そうそう。謎の権力を持ってる生徒会ってやっぱりアニメとか漫画の世界だけなんだよね。うちの生徒会って存在も知らないし」


「一般の生徒にバレるようじゃ謎の組織になれないし、俺達が知らないだけで何かやってる可能性だってあるだろ」


 俺も生徒会が実在したことを今知ったけど、結局生徒会なんていうのは体のいい雑用係なんだろう。


 内申点を餌にして教師に言われたことをやらされる。


 社会に出たら結局上の指示に従うしかないことを理解させるもの。


 恐ろしい恐ろしい。


「生徒会は社畜育成のもの……」


「色んな方面に怒られるようなこと言うのやめなさい」


「実際学校って社畜育成所だよね?」


「お兄様病んでる? あれか、昨日れんれんにいじめられすぎたのか」


「オレのせいにするな。サキは元から結構おかしい」


 俺は正論しか言ってないのに失礼なことを言われた気がする。


「うん、舞翔まいと君はおかしいよ」


「蓮奈まで言うか。それなら蓮奈なら学校はなんだと思う」


「そんなの、いじめの仕方と耐え方を学ばせる場所だよ」


「あぁ、それもあるか」


「うん、れなたそもおかしかったね」


 よりは呆れているが、それは自分がヒエラルキーの上にいるからだ。


 俺はいじめを受けていたみたいだけど興味がないから気にならなかったけど、実際に蓮奈のように学校に行けなくなる子だっている。


 それを放置するのが学校という組織。


 そして不登校になれば心が弱いからとか、こっちが悪いみたいに言い出す。


 それでいざ学校に行ったらそれは教師の手柄。


 最終的には『みんな仲良く』とか言い出して……


「くたばればいいのに」


「ほんとお兄様どうした? あれか、二年生デビューみたいな」


「闇堕ち舞翔君、かっこいい」


「いやいや、このままだとお兄様がダークサイドに堕ちて学校を滅ぼす側になっちゃうよ」


「あ、じゃあ私も一緒に闇堕ちして学校滅ぼす!」


「今日一の笑顔を見せるんじゃないよ。れなたそが闇堕ちしたら絶対にサキュバスみたいなエロいやつになって男共の理性が壊れるでしょ!」


 依はどこを気にしているのか。


 別に俺は闇堕ちしたとかではなく、普段から蓮奈と同じように学校という組織は嫌いだ。


 蓮奈のことがあって余計に嫌いになった。


 だけど学校があったからみんなと出会えたわけで、それがなければ今も蓮奈のように「いつか学校が滅びればいいのに」と思っていただろう。


「逆にさ、依は学校好きなの?」


「え、別に?」


「そういうことだろ」


「いやいや、好きではないけど学校が滅びればとかは思ってないから」


「俺だって本気で思ってはないよ。ただ本気で嫌いなだけで」


「舞翔君は優しいからね。私みたいな子がいるのが嫌なんでしょ?」


 その通りだけど、別に蓮奈だけの話ではない。


 この場にいる依以外の子はみんな学校で何かしらのことをされている。


 勝手な噂で居場所を奪われたり、勝手な噂で担ぎ上げられたり、容姿をいじられたり、間違いから下卑た視線を向けられ不登校になったりと。


「そっか、うちは学校が逆に自由にできる場所だったからそこまで思わないけど、お兄様と水萌みなも氏とれんれんはうちのせいで嫌な思いしてるもんね……。死ねばいいのに」


 依の表情が一気に暗くなって立ち止まる。


 俺のは俺自身がいじめを受けてた自覚がないからどうでもいいけど、確かにレンと水萌は依が原因で学校が嫌になっていたとは思う。


 レンに関しては依のせいとは言えないけど、水萌のは完全に依のせいだ。


 まあ今更気にしてるのは依だけなんだけど。


「紫音、依が今なら何してもいいって」


「ほんと? じゃあ依ちゃんがいつも恥ずかしがってさせてくれないことを全部やっちゃおっかな」


「誰か通ったら困るから気をつけてな」


「うん。じゃあまずはキスをしようかな」


「うちがこんなことを言っていいわけがないのは重々承知なんですけど、さすがに外でそういうことは恥ずかしいです……」


 勝手に落ち込んでいた依が頬を赤くして紫音に上目遣いを向ける。


 あんなことをしたら依のことが大好きな紫音には逆効果なのをそろそろ理解すればいいものを。


 まあ今更誰も気にしてないことを言い出した依ご悪いのだから助け舟は出さないが。


「つまり帰ったらいいってことだね?」


「いや、そういうわけでもなくて……そんなにしたいの?」


「依ちゃんは、嫌……?」


 今度は紫音が寂しそうに上目遣いを依に向ける。


「そ、そういうわけじゃ……帰ったらね」


「なぁ、オレ達は何見せられてんの?」


「空気を読まないレンさすがです。それともいたたまれなくなった?」


 空気を読まずにレンが喋るものだから依が爆発した。


 確かに俺も思ったけど、せっかく依が素直になったのだからもう少し泳がせばいいものを。


 これでは紫音に怒られ……


「蓮奈さん蓮奈さん、おたくの紫音さん照れてないですか?」


「あれはですね、依ちゃんが恥ずかしがって絶対に認めないから強気に攻めれてたけど、いざ許されるとどうしたらいいのかわからなくて恥ずかしくなってるんですよ。可愛いですよね」


 どこのコメンテーターなのか知らないけど、紫音の照れる姿なんて最近ではあまり見れてなかったから目に焼きつけておかなくては。


「ちなみに舞翔くんと恋火れんかちゃんも恋人さんになってすぐの時はあんな感じだっよ?」


「水萌も冗談を言えるようになったんだな」


「ほんと。隠し事はあるけど嘘はつかないと思ってたのに」


「蓮奈お姉ちゃん、なんで私が嘘つきみたいに言われてるの?」


「それはね、この二人が自分達のことを客観的に見ようとしないからだよ。水萌ちゃんは間違ってないからね」


 不思議そうな顔の水萌の頭を蓮奈が優しく撫でる。


 あれではまるで水萌の言ってたことが真実で、俺とレンがあそこのバカップルみたいなことをしてたみたいではないか。


「現実見よ」


「蓮奈まで冗談を」


「……ほんとな」


「はい、恋火ちゃんは自覚ありです」


「え、してたの?」


 レンの方を向くとあからさまに視線を逸らされた。


 どうやら俺はあのバカップルを馬鹿にはできないらしい。


 まあ、どうせ数分後には忘れて「バカップルしてる」という視線を向けてるんだろうけど。


 そうして俺達は微妙な雰囲気のまま学校に向かうのだった。

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