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お姉ちゃんゲーム

蓮奈れなお姉ちゃん、お誕生日おめでとう」


「ありがとう水萌みなもちゃん。隣の妹さんが私のことジッと見ながら何か考えてるけど何かあった?」


 よりが知らなくてよかった真実を知ってしまい、紫音しおんに慰められている間に水萌と愛莉珠ありすが蓮奈の元にやってきた。


 だけど愛莉珠は蓮奈のことを見つめて何も喋らない。


 多分どうでもいいことを考えているんだろうけど、何を考えているのか。


「ありすちゃん、お姉ちゃんにおめでとうは?」


「あ、考え事してて忘れてた。蓮奈さん、お誕生日おめでとうございます」


「ありがとう。それで、私を見て何を考えてたの?」


「包容力強そうだなーって」


「どこ見て言ってんの!」


 愛莉珠が蓮奈のとある部分をガン見しながら言うものだから蓮奈が顔を赤くして隠す。


「隠しきれない包容力……」


「ありすちゃん嫌い!」


「なんか似たようなのさっき聞いたな。それよりもありす、本当の方をさっさと言わないと本気で蓮奈に口聞いてもらえなくなるぞ」


「それは困る。えっと、ありすは水萌お姉ちゃんの妹なわけじゃないですか」


「ナチュラルに言ってるけど、血の繋がりはないからな?」


 愛莉珠は水萌の妹ではなく、妹みたいな存在だ。


 最近の仲の良さを見てると本当の姉妹のように見えるけど、水萌の姉妹はレンである。


「先輩はわかってないね。血の繋がりなんて本当の愛の前には些細なことだよ」


「それもそうか。話の腰を折ってごめん。続けて」


「わかってくれて嬉しいよ。それで話を戻すけど、ありすは水萌お姉ちゃんの妹なわけで、そのお姉ちゃんが蓮奈さんをお姉ちゃんって呼んでるってことは、ありすのお姉ちゃんでもあるってことにならない?」


「それを言ったらしーくんもだね。みんな家族だ」


 確かに愛莉珠の言い分をそのまま受け取るなら、血の繋がりは些細なことだからみんなが兄弟姉妹けいていしまいということになる。


 そして紫音と依が結婚したら水萌達と依が義理の姉妹になる。


 つまり俺とレンだけが含まれない。


「あれ? だけど水萌とレンって姉妹なのか」


「なんかオレと水萌の関係が一番薄く感じるよな」


「最近絡み少ないしな。でもそっか、俺とレンが結婚した場合はみんなで兄弟姉妹になるんだな」


「うるさい兄弟姉妹だな」


 確かに七人兄弟なんてやかましそうだ。


 だけど俺達はみんながいるから楽しく生活できている。


 つまり七人兄弟はいいことしかないということだ。


「でも実際は歳を取っていくと関係も崩れてくんだよね」


「リアルなこと言うなよ。しかも今日歳を取るやつが」


「言い方がやだ。女の子に歳の話するなんて嫌われる……嫌う人いなかった」


 蓮奈が周りを見てため息をつく。


 嫌われないのは嬉しいけど、確かに女の子に歳と体重の話は厳禁と母さんから貰った本にも書いてあった気がする。


 まあ多分俺はするんだろうけど。


「まあでもさ、みんな私の妹と弟ってことだよね?」


「話の流れ的にはそうだな」


「お姉ちゃんゲームを始めよー」


「いきなり意味のわからないことを言うのやめな、お姉ちゃん」


 蓮奈が楽しそうに拳を挙げる。


 なんとなくだけど、ろくでもないゲームが始まりそうな気がしてならない。


「説明しよう、お姉ちゃんゲームとは、お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのゲームである」


「一切説明になってない説明をありがとう。要するに王様ゲームのお姉ちゃんバージョンで、なおかつお姉ちゃんである蓮奈だけがお姉ちゃんになれるゲームってことか?」


「勘のいい弟は大好きだよ」


 つまり一生蓮奈が王様の王様ゲームをやろうとのこと。


 まあ今日は蓮奈の誕生日だから主役の蓮奈のやりたいことをやるのはいいけど、何かしたいことでもあるのか。


「じゃあ始めるよー、お姉ちゃんの言うことはー?」


「ぜったーい」


「なんで舞翔まいと君しか言ってくれないの!」


「いや、合わせられるサキがおかしいだけ」


 レンが呆れたような顔で俺を見てくるが、今のはイージー問題だ。


 多分依もわかってはいたけど、今はまだ傷心中だから言わなかっただけで。


「あれかな、舞翔君は合コンに通いすぎて王様ゲームのノリがわかるから」


「それを言うなら蓮奈も通ってるってことになるからな?」


「そうやって揚げ足取るのは駄目だよ。私はアニメ漫画で勉強してるだけだから」


「そっくりそのまま返そう」


 俺達が変なところで理解し合えるのはオタク知識によって偏った情報を得ているからだ。


 最近知ったのだけど、普通に生きている分では『シュレディンガーの猫』を知らないらしい。


 まだ半信半疑ではあるけど。


「仲良しアピールはいいんで」


恋火れんかちゃん冷たい。名前はあったかそうなのに」


「別に水萌の『水』と対になるように『火』を入れられただけですよ」


「水に萌えて火に恋するって、どっちもアブノーマルな恋愛しそうだよね」


「それは確かに……」


 おかしいな、なんかレンが俺のことをジト目で見てきてる気がする。


 まるで俺が普通ではないから自分が好きになったのはアブノーマルな相手みたいな。


 その通りだからいいけど。


「まあいいや。それじゃあお姉ちゃん命令を発令するよ。まずはねぇ、依ちゃんごめんなさい」


「あぁ、やば」


「どしたサキ」


「俺さ、蓮奈のああいうとこめっちゃ好き」


 多分ずっと依が顔を赤くして紫音な慰められてるのを見て罪悪感を感じていたんだろう。


 だから謝る機会を伺っていたけどタイミングが見つからなかったから『お姉ちゃんゲーム』という謎のゲームを始めた。


「やばくない? 命令って言っといて謝るんだよ? 普通命令なら『許して』とかなのに」


「サキってほんとにツボがおかしいよな。蓮奈さんのああいうところが好きなのはオレもわかるけど」


「私も蓮奈お姉ちゃん大好きー」


「ありすも優しいお姉ちゃん好きです」


「結構真面目に謝ったるんだから茶化さないでよ……」


 別に茶化してるわけではなくありのままを伝えてるだけだけど、蓮奈が頬を赤くしてしまった。


 だけど確かにこうして俺達が騒いでいたら依も返事をするタイミングを逃してしまう。


「ほら依ちゃん、まーくん達が空気読んでくれたらからお返事しよ」


「……もう聞かない?」


 紫音に言われた依が顔を半分だけ蓮奈に向けて聞く。


 少し拗ねているように見えて普通に可愛い。


「ここは『聞かない』って言うのが正しいんだろうけど、私は嘘がつけないから聞きます」


「やっぱり嫌い!」


「私は依ちゃんのこと好きだよ?」


「うちもほんとは好きだもん!」


 どんな喧嘩なのか。


 いや、喧嘩でもなく……よくわからない。


「じゃあ聞かれたくないようなことは依ちゃんのお部屋でやろ」


「聞かれたくないこと……」


「こらありす。話がまとまりそうなんだから突っ込むな」


「はーい」


 せっかく依が元のめんどくさい依に戻りそうなのに変な茶々を入れて拗ねられても困る。


 拗ねた依は可愛いけど、静かでなんか落ち着かない。


「紫音くんのばか」


「だって僕は依ちゃんのこと大好きだから」


「うちの方が好きだもん」


「嬉しい」


 依と紫音がクスッと笑い合う。


 そこで俺は愛莉珠の口を手で塞いだ。


 言いたいことはわかる。


 だけど今は言うな「何を見せられてるんだ」なんて言ったらめんどくさい依はまた拗ねるから。


「何を見せられてんだよ」


「レンはもう少し女心を学んだ方がいいよ」


「サキに一番言われたくないことを言われたんだけど?」


「今のは舞翔君の言う通りだよ。恋火ちゃん、空気読も」


「恋火ちゃんだもん」


「恋火さんだもんね」


「恋火ちゃん、次は気をつけてね」


 ということで振り出しに戻り、依は紫音の腕の中に舞い戻る。


 散々言われたレンも、依のように拗ねてしまったので頭を撫でておいた。

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