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おねショタ

「ちょっとはしたない姿を見せちゃった♪」


「楽しそうでなによりです。俺はもう色々削れて元気ないです……」


 蓮奈れなを子供扱いした罰でスイッチの入った蓮奈に襲われた俺は尊厳を失い、男としてのプライドを全て無くした。


 まあ元からどちらも大して持ってないのだけど。


「女の子に体ペタペタされるの嫌?」


「蓮奈なら別にいいけど、蓮奈の触り方って卑猥なんだよ」


「えっちと言いなさい。卑猥だとリアルすぎるんよ」


 よくわからない価値観だけど、蓮奈の触り方は、体のラインを這うように上がってきて、そして反対の手は俺の頬に優しく触れてくる。


 あれは完全に卑猥だ。


 エロいと言ってもいい。


 口には出さないけど。


「じゃあ次はえっちって言ってもらえるように加減するね」


「やるな」


「え、もっと激しくして欲しいってこと?」


「それはほんとにやめて。知らないと思うけど俺ってそういうのに耐性ないから普通に困る」


 俺は今でこそ美少女に囲まれているけど、それはここ一年でのこと。


 それまでは女子どころか人との付き合いがなかった。


 だから女子から卑猥な触られ方なんてされたことがあるわけもなく、もっと言えば女子と触れ合うこと(肌同士)に耐性がない。


「みんな知ってるよ」


「そのわりに君達は俺への接触多くないか?」


「え、だって照れてる舞翔まいと君可愛いし」


 なんかさも当然のように言われる。


 頭を撫でることは大丈夫なんだけど、正直手を繋ぐことも俺は恥ずかしさを覚える。


 俺以上に相手が恥ずかしがってくれたり、水萌みなものように無邪気に喜んでくれたりされると大丈夫なんだけど、多分俺をからかうように手を握られると照れるかもしれない。


 そういう子がいないからバレてないものだと思っていた。


「結局さ、私達が先に照れちゃうから舞翔君が照れられないんだよね」


「別に照れたかないわ」


「可愛いのに」


「そのまま返そう。というか、そろそろ蓮奈の不安の内容聞かせてよ」


 俺が蓮奈からのいじめを甘んじて受けた理由は、蓮奈から最近蓮奈の感じている不安の内容を聞く為。


 そうでなければあんな醜態を晒すこともなかった……か?


「舞翔君は私に興味津々だもんね」


「そうな」


「てけとーな。そんな適当だと言う気起きないなー」


 蓮奈が両足をパタパタさせながら言う。


「どういうのがご希望?」


「お、私の望みを叶えてくれるやつか。じゃあエグいの頼も」


「なんでもやってやろう。その分後で仕返しするけど」


「えっちなやつ?」


「最近の君達ってなんでそんなにR指定付けようとしてくんの?」


 元凶は愛莉珠ありすだけど、愛莉珠と出会ってから水萌やよりや蓮奈や紫音しおん、そしてレン。


 みんなが『えっち』を求めている。


 ほんとに反応に困るからやめて欲しい。


「ウブな舞翔君の反応見るのが楽しいんだよ」


「俺も同じことしてるから何も言えないやつね。それで何がご希望なの?」


「うーん、じゃあまたショタになってよ」


「俺の黒歴史を掘り返すんじゃないよ。やるけど」


 蓮奈をお姉ちゃん呼びして遊んでたあれは、俺の中では黒歴史になっている。


 蓮奈が喜んでいたからやってたけど、あれを客観的に見ると相当痛い奴だ。


 思い返すだけで気持ち悪い。


「大丈夫、めっちゃ可愛かったから。正直お持ち帰りしたかった」


「蓮奈、ショタコンなのは蓮奈の自由だから別にいいけど、そこら辺のショタを家に連れて来たりするなよ?」


「私をなんだと思ってる。確かにおねショタの作品も好きだけど、私は年下相手でも人見知りするからお持ち帰りなんて出来ないよ」


 そういうことなら安心した。


 もしも蓮奈が年下男子が好きで、蓮奈の可愛さをもって連れ帰ったりするのなら本気で止めなければいけなかった。


「私がお持ち帰りしたいのは舞翔君だけだから」


「なるほど。蓮奈が変なことをしないように俺が蓮奈のショタになればいいと」


「……」


 蓮奈が無言で俺の手を握ってきた。


「聞きたくないけど聞く。何?」


「私のショタに永久就職してください」


「どんな告白だよ」


「でも舞翔君が私のショタになってくれないと私がショタを連れ帰っちゃうかもしれないよ?」


「自分で人見知りって言ってたろ」


「今の私がそうでも、未来の私がそうとは限らないよ。それに、好きな相手がいたら何がなんでも手に入れたいのが本物でしょ?」


 蓮奈の言いたいことはわかる。


 今の蓮奈なら犯罪を犯してまで年下男子を連れて帰ろうなんて思うとは思わない。


 それに人見知りだから犯罪を犯さないならこの世の犯罪はもう少し減っている。


 だけどそれを認めるのは俺が蓮奈のショタになることを認めるということになるけど。


「まあ蓮奈のならいいか」


「ついに私のものになることを決めたか」


「ぼく、蓮奈お姉ちゃんのものになるね」


「かはっ」


 蓮奈が吐血(見えない血)をした。


 こういうのは期待されてからやるよりも、不意にやった方がいい反応を見れるし、何より俺へのダメージが少ない。


 そして一回やってしまえば俺に歯止めは効かない。


「お姉ちゃん大丈夫? どこか痛い?」


「だ、大丈夫。舞翔君が可愛くてドキドキしすぎて心臓が痛いだけ」


「ぼくのせい……?」


 蓮奈に楽しんでもらう為に弱々しいショタを演じる。


 始める前はやりたくないけど、いざ始めてしまうと結構楽しくなってる自分がいて嫌になる。


 だけど少しは考えて話せば良かったと後悔するのはすぐのこと。


「ちが……いや、そうだね。聞いて」


 蓮奈が俺を抱きしめて俺の耳を自分の胸に当てる。


 確かにドキドキしてるのがわかるけど、このままは少しまずい。


「お、お姉ちゃん。痛いよ」


「本音は?」


「……恥ずかしい」


「可愛いがすぎる……。ほんとに私の弟にしようかな。合法的に弟にするならどうしたらいいのかな。やっぱり最近話題のスパイに頼んで書類のかいざんを……」


 なぜに俺をそこまで弟にしたいのか。


 蓮奈には紫音という可愛い弟がいるのに。


 まあ合法的と言いながら違法をしようとしている蓮奈に抱きついて止める。


「ぼくはお姉ちゃんの弟じゃないの?」


「そっか、そうだよね。舞翔君はもう私の弟だよね。あれ? つまり弟だから一緒にお風呂も入れる?」


「ぼく、恥ずかしい……」


 普通に考えて無理に決まっている。


 今の俺は精神年齢を五歳ぐらいを想定しているけど、中身はもちろん十六歳だ。


 そんな俺が蓮奈と一緒にお風呂なんて軽く死ぬ。


「……」


「ちょっと戻るぞ。蓮奈、マジでやめろ。蓮奈も俺も二人で死ぬだけだ」


「……蓮奈じゃないでしょ」


「マジかよ……」


 どうやら説得は失敗したようだ。


 このままではショタの俺と蓮奈がほんとにお風呂に入る状況になってしまう。


 こうなれば仕方ない。


「一緒にお風呂はぼくが大きくなってからじゃ駄目?」


「どこが?」


「あ?」


 蓮奈が意味のわからないことを言い出したから思わず精神年齢が年相応になってしまった。


 決して蓮奈が何を意味して言ったのかはわからなかったけど。


「すいません。なんでかな?」


「一緒にお風呂って結婚したらするものじゃないの?」


「姉弟で入るのは普通のことだよ?」


「でも。ぼくお姉ちゃんと結婚したいよ?」


「……事前練習」


 なかなか手強い。


 結婚は結構最終手段に近いのだけど、どうすればいいのか。


「……」


 俺は黙ってソッと蓮奈から離れようとしたけど、蓮奈が離してくれないのでとりあえずそっぽを向く。


「どうしたの?」


「いじわるするお姉ちゃんやだ」


「……心にグサッときた。そんなにお姉ちゃんと一緒にお風呂いや?」


「恥ずかしいの! お姉ちゃんは自分のことばっかりなんだよ」


 実際のところ蓮奈は弟に自分の考えを押し付けすぎだ。


 大切にしているのは伝わってくるけど、溺愛しすぎて弟のことを束縛している。


 それはもう、姉弟ではなく主従だ。


「ごめん。私がおかしかった。舞翔君のことを大切に思ってるフリをして自分の考えを押し付けてたんだね」


「ううん、ぼくも酷いこと言ってごめんなさい。お姉ちゃんのことはぼくも大好きだよ」


「……私も」


 どうにか丸く治まってくれた。


 俺と蓮奈はお互い抱き合い、こうして俺のショタ活動は終わりを……告げなかった。


 そもそも俺がショタになったのは蓮奈の不安の原因を聞く為であって、蓮奈とじゃれ合う為ではない。


 なのでもう少し気色悪い俺のショタは続く。

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