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恋愛問題の解決

「ねぇよりちゃん。なんか僕達のことを色々言ってた二人がイチャイチャしてるんだけど」


「それね。なんかうち達を利用してるよね? 対抗してうち達もイチャつく?」


 俺が蓮奈れなと遊んでいたら、さっきまで紫音しおんの猛攻に萎縮していた依が復活していた。


 そして調子に乗った依が返り討ちにあった。


「なんで依ちゃんって残念なんだろうね」


「それが依だから。まあ今回は依の方から誘ってるし仕方ないよな」


「そうだね。じゃあ若い子達が楽しんでるし、終わるまで私達も続きする?」


「しません。これ以上幼児退行すると俺の精神がやられる」


 蓮奈がむぅ顔をして不満を表しているが、さっきまでの俺かおかしかった。


 紫音から逃げる為に蓮奈をお姉ちゃん呼びして助けを求めてみたら思いのほかいい反応をくれたから楽しくなってしまったが、もう二度とやらない。


 だけど暇を持て余してはいるので、蓮奈の手を握ってみる。


「いきなりそういうことするよね」


「お姉ちゃんの温もりが恋しかった」


「続けるなら押し倒すよ?」


「やってみろ。今度こそやり返す」


「……さっき私やられてなかった? まあいいや。お望みなら私と裸のお付き合いを──」


 蓮奈が自分の服に手をかけたので抱きしめて止める。


 なんだかデジャブを感じる。


 それよりも……


「ねぇ蓮奈。蓮奈は見えてないから気づいてないのかもしれないけど、紫音が依を襲いそうだからそろそろ止めよ」


「そういうのは先に言ってよ。こらー、しおくん、高校生でそういうことしないの!」


 紫音がさっき蓮奈が俺にやって、今もやろうとしてたみたいに押し倒しているのを見て蓮奈が叱りに向かう。


 これが俗に言う『おまいう』というやつなんだろうな。


「別に僕はお姉ちゃんみたいに恋火れんかちゃんっていう彼女のいるまーくんを押し倒してえっちなことをしようとは思ってないよ?」


「……まいとくぅん」


 特大ブーメランが直撃した蓮奈が涙目になりながら俺に這い寄って来るので、とりあえず抱きしめて頭を撫でる。


「よしよし、ブーメラン痛かったな」


「痛い。多分私のお腹がパックリ割れたぁ」


「シックスパック?」


「ダブルパック。むしろ上半身と下半身が別れた」


「接着剤でくっつくかな?」


「あれがいい。不死身の人の血を離れた体に垂らすとくっつくやつ」


「そこでキスを求めないのが蓮奈のいいところだよな。だけど多分ブーメランで切れたのは精神の方だけだろうからもう大丈夫だよな?」


 蓮奈が小声で「その手があったのか……」と呟いたように聞こえたけど、とりあえず蓮奈の精神はくっついたようだから平気だろう。


 それはそうと、紫音がまた依に手をかけようとしてるのを止めないといけない。


「紫音、依の許可は取ってるんだよな?」


「まだ」


「じゃあ取れ。起きてるから」


「わかったー。依ちゃん、起きないとまーくんから教えてもらった依ちゃんを起こす方法を少し過激にして試すよ?」


「おはよう人類の諸君。うちはこうしてピンピンしているぞー」


 紫音の発言に反応した依が飛び起きた。


 言ってることの意味がわからないはいつものことだけど、今回のは特に意味がわからない。


「じゃあそろそろ返事をちょうだい」


「……依ちゃんやっぱり元気ないかも?」


「別にいいんだよ? 僕が依ちゃんに好かれてないのはわかってるから、今は断られても諦めることはしないから」


 紫音が真剣な表情で依の目を見つめる。


「いや、うちは別に紫音くんのことが嫌いとかじゃないよ? むしろ……だし」


 なんとなく言ったことはわかるけど、モニョモニョしすぎて「むしろ」の後が聞こえなかった。


「むしろなに?」


「それはいいの! とにかく、うちは別に紫音くんが嫌いなわけじゃないの! ただ、急だったから頭の整理がついてないの」


「じゃあ可能性はあるの?」


「それはもちろん」


 依は返事を先延ばしにしているが、依の中では答えは決まってるはずだ。


 つまり依は……


「……キープ」


「おいそこ、ボソッと何を言ってる!」


「え、キープ?」


「堂々と言えばいいってことじゃないんだよ!」


「わがままな。だったら返事しろよー」


「しろよー」


 俺が『告白された友達を煽るめんどくさい小学生ごっこ』をしたら蓮奈も乗っかってきた。


「棒読みすぎな。私にだって色々あるんだから部外者は黙ってなさい」


「聞いた? 友達なのに部外者って言われたよ」


「酷いね。確かにしおくんの恋愛に首を突っ込めるような権限は私達にないだろうけど、しおくんをモヤモヤさせてることをなかったことにしてるのは違うよね」


「それ。告白されて調子に乗ってんかな?」


「言われ放題すぎない? 紫音くんよ、うちが酷いこと言われてるけど、何か言ってやっていいよ」


「依ちゃんはまーくんが好きだから僕のことを好きになれないんだよね? なのに今は僕を頼るの?」


「うちに味方はいないんだよなぁ……」


 紫音は依の味方につくと思ったけど、やっぱりみんな依をいじり倒すことが好きなようだ。


 つまりみんな依のことが好きということで、決して依の味方がいないわけじゃない。


 多分。


「わかりましたー。全部言ってやろうじゃないか。うちは確かにお兄様が好きだよ、だから付き合って」


「無理」


「知ってる。よし、紫音くんよ。振られて心に穴が空いたうちを慰めてくれたらコロッと落ちるかもよ」


「僕はまーくんの代わりってことね」


「確かにそう聞こえるか。でも、うちがお兄様を好きだったのは事実だし、そこは変わらないよ? それが嫌な場合は──」


「好き」


 紫音が依にタックルする勢いで抱きつき押し倒す。


「言ったからね? やっぱりまーくんのことが忘れられないからって浮気したら二度と僕のことを忘れられなくするからね?」


「しないですよぉ。だからその怖い目をやめてよぉ……」


 依が涙目で紫音に言う。


 もしも依が浮気なんてした日には紫音の怒りの笑顔が発動する。


 それはつまり、従順な依が完成するということだ。


「紫音、あんまり依をいじめないでね」


「お兄様……」


「飴と鞭の方が今の依を残しつつ従順になるから」


「お兄様!?」


「わかってるよ。わかってるけど、依ちゃんを前にしたら僕は僕を抑えられないかもしれないの」


 依に馬乗り状態の紫音が依の肩を押さえながら顔だけを俺に向けて言う。


 これは言っていいのかわからないから言わないでいるけど、最近の紫音が……


「しおくんって、好きな人ほど束縛するタイプだよね」


「それは言っていいやつなんだな」


「だって隠してる様子ないし。なんか自分色に染めたいタイプとも言えるけど」


「見てるこっちは面白いけど」


「やられてるうちは大変なんだよぉぉぉぉぉ」


 依の悲痛《歓喜》の叫びが聞こえてくるのでとりあえずは安心した。


 これで紫音と依の問題は解決した。


 だから次はみんなのお姉ちゃんの番になる。


 お姉ちゃんの悩みを解決するのは弟二号の俺の仕事だから。

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