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寝不足の不安

「『家に帰ったら友達(好きな人)が年下美少女の耳たぶを触って喜んでいたんだが?』っていうラブコメあるのかな?」


「ありそう。その主人公兼ヒロインの子は絶対にツンデレだね」


 愛莉珠ありす水萌みなもの耳たぶを堪能していた俺の撮影会をしていたより達だけど、飽きたのか勝手なラブコメ設定を語り合っている。


「依ちゃんのツンデレとか見てみたい」


「うちはれなたそのヤンデレとか見てみたい」


「しおくんの地雷系は?」


「見たいしかない」


「さりげなく僕を妄想に組み込むのやめてね?」


 依と蓮奈れなの妄想に巻き込まれた紫音しおんが少しムッとしながら俺を睨む。


 可愛いのだけど、なぜに俺なのか。


「まーくんは僕のこと好き?」


「え、うん」


「ありがとう。じゃあ依ちゃんとどっちの方が好き?」


「どっちとかないけど?」


「なんで? なんで僕の方が好きって言ってくれないの? ねぇ、なんで?」


 紫音がそう言いながら、器用に目のハイライトを消して俺に這い寄って来る。


 ちょっと怖い。


「うーん、まーくんには……僕のこと嫌い?」


「ごめん、依とは比べものにならないぐらいに紫音の方が好き」


「やっぱり変に変えるよりも素直に甘える方がいいよね」


 紫音がそう言ってニコッと笑う。


 紫音の言う通りで、紫音はわざわざ地雷系になんてならなくていい。


 そのままで十分可愛いのだから。


「つまり依と蓮奈もそのままでいいからな?」


「べ、別にお兄様のことなんて好きじゃないんだからね!」


「私は好き。だから舞翔まいと君が私を愛してくれないと死んじゃう……」


 やるなと言っているのになぜにやるのか。


 反抗期か。


「あんまり刺さらないなぁ。ツンデレもヤンデレもれんれんと水萌氏で慣れてるからかな?」


「地雷はありすちゃん?」


「え、ありすって地雷系って思われてる?」


 レンがツンデレなのはわかるけど、水萌がヤンデレなのと愛莉珠ありすが地雷系なのかは微妙なところだ。


 結局みんな可愛いでいいだろう。


「お兄様的には好きな属性ってあるの?」


「当ててみ」


「クーデレでしょ?」


「正解」


 さすが蓮奈だ。


 まあオタクの五割ぐらいはクーデレ好き(自論)だろうから当たって当然なんだろうけど。


「名前は聞くけどさ、『ツンデレ』と『クーデレ』って何が違うの?」


「怒るのがツンデレで、ドライなのがクーデレ」


「じゃあ、ありすは?」


「小悪魔系妹……って水萌と被ってるじゃないか」


 属性被りはよろしくない。


 それだと上下関係が生まれてしまうから直ちに水萌の属性を考えなければいけない。


「じゃあお姉ちゃんと小悪魔姉妹で」


「え、小悪魔姉妹って主人公鼻血案件じゃないか……?」


「確かに。だけどその姉妹に挟まれてる主人公は無反応なんだが?」


「鈍感系と小悪魔は相性最悪だからね。小悪魔が返り討ちに遭ってエンジェルになっちゃうから」


 なんか依と蓮奈が意味がわからないことを話しているけど、今更だから別にいい。


 そんなことよりも、愛莉珠の言う『小悪魔姉妹』はなかなかいい属性だ。


「お姉ちゃんお姉ちゃん」


「なーに?」


「ありす達小悪魔みたいだから先輩にイタズラしよ」


「するー。何する?」


「さっきはありす達のお耳をもてあそばれたから、今度は先輩のお耳を弄ぼ」


「……わかった」


 何かを察した水萌の目の色が変わった。


 つまりこれから悲劇が起こる。


 だから先んじて耳を押さえようとしたけど、二人に手を押さえられ、そして俺の耳たぶは食べられた。


「はい、浮気現場パートツー」


「これで舞翔君を揺す……れないから撮る意味はないんだよね」


「それね。れんれんも最近は寛大すぎて許しちゃうし」


「許すっていうよりかは余裕があるよね。怒るけど、結局まーくんに照れさせられちゃうし、それに最近はとりあえず怒ってる感まであるよね」


 寝ているレンが言われたい放題しているが、確かに最近のレンは怒りのキレが悪いかもしれない。


 俺としてはその方がいいのだけど、寝ていることが多いこともあり、レンの体調が不安になる。


「依達から見てさ、レンって何か不調があっりするように見える?」


「うーん、女の子目線でも体調に何かあるとかはないと思うよ。純粋に元気はないようには見えるけど、それも病気とかじゃなくて寝不足だからってのだと思うし」


「だよな。じゃあ寝不足の理由はわかる?」


 依が首を振って答える。


 他のみんなもわからないようだ。


「水萌も知らない?」


「うん。多分私が寝てから何かしてるんだと思う。私が寝る時と起きる時は恋火れんかちゃんは可愛い寝顔見せてくれてるし」


 さりげなくマウントを取ってくる水萌だが、レンと寝る時に一緒の水萌にわからないなら俺達にわかる術がない。


 彼氏なら雰囲気でわかれって?


 雰囲気でおかしいことがわかっているからこうして不安になっているのだ。


「多分だけど、大丈夫なやつだと思うよ?」


「俺もそう思うけど、根拠ってある?」


「だってれんれんも水萌氏も、何かあるならもっとわかりやすく反応でるでしょ?」


 それを言うなら『ずっと寝てる』という反応がでてるけど、依が言いたいことはそうではないのだろう。


 単純に俺への不満が寝不足になるまで溜まっているならその前に爆発するし、もしも病気か何かなら逆にもっと反応を見せないだろうと言いたいのかもしれない。


「依を信じてみるか」


「お兄様だって大丈夫なやつだと思ってるんでしょ?」


「もしもの時は依のせいにするから」


「うわ、さいてー。まあ大丈夫だと思うよ。なんとなく可愛い理由だと思うし」


「レンが可愛くない時ないから」


「惚気かよ。わかるけど」


 結局レンに話す気がない以上わかる術なんてない。


 これでレンに何かあったら何も言わなかったレンとそれを気づけなかった俺を恨めばいい。


 そしてもしもの時は俺が責任を取る。


「心中とか流行らないからね?」


「レンに怒られることはしないよ」


「うち達だって怒るからね? 結構ガチめに」


「怖いな」


 さすがに心中なんて考えてはないけど、レンがいなくなったら俺がどうするかなんてわからない。


 後追いなんかはレンが絶対に許さないだろうからできないが、それでもその時の俺がどうするか。


 まあ何か変なことをしようとしたら多分水萌を筆頭にして怒られるんだろうな。


「シリアスな顔になっちゃった。だけど複雑だからそろそろそれやめさせなさいよ……」


 依が呆れながらずっと放置されていた水萌と愛莉珠を見る。


 俺の耳たぶを食べた二人だけど、愛莉珠はすぐに恥ずかしくなったのか離れて俺の手で遊び始めたが、水萌の方は幸せそうに食べ続けている。


「水萌、依もああ言ってるし離れよ」


「……」


「無視された。結構真面目にくすぐったいから離れて」


「……舞翔くんは、恋火ちゃんとずっと一緒? それとも私達とずっと一緒?」


 水萌が不安そうに聞いてくる。


 その質問にどんな意味が込められてるのかはわからないけど、俺の答えは決まってる。


「レンを含んだ水萌達だよ」


「そうだよね。じゃあもしも私達のうちの誰かが遠くに行っちゃう場合も関係は変わらない?」


「変わらないけど、そういう予定があるの?」


「私にはないよ? ただちょっと不安になっただけ。もしも恋火ちゃんがこのまま目覚めなかったとして、そうしたら舞翔くんはどうするのかって」


 水萌が俺の右手の人差し指をいじりながら寂しそうに言う。


 依と話してたことを聞いて不安になったのだろう。


 もしもさっきの質問で「レンとずっと一緒」を選んでいたら、多分俺の後追いの可能性が出てきて不安を余計に募らせていただろう。


「あのさ、さっきから聞いてたらなに? 勝手にオレのこと殺すなし」


「レンが、生き返った……」


「死んでねぇっての。ただの寝不足だった言ってんだろ」


 あくび混じりのレンに頭を小突かれた。


 依のせいで心配が残るけど、とりあえずは大丈夫ということにしておく。


 そしてちょうどレンも起きたので、愛莉珠の合格祝いを始めることにしたのだった。

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