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つつがないクリスマス会

「クリスマス会と言えばご馳走だよね」


「花より団子で安心したよ」


 雪が降ったことに喜んでいた水萌みなもだけど、一分もしたら食べ物の頭になる。


 というかここに居る全員が雪に大して興味がない。


「ありすとか喜びそうだけど」


「雪を見て『わぁ』とか言って感動してる子を演じることもできるけど、ありすは空気を読める子なので」


「なんかみんなに気を使ったみたいに言ってるけど、結局寒いから出たくないんだろ?」


「そうやって正論だけ言ってるとモテな……くないだと……」


 何か勝手に驚いてる子はほっといて、全員一致で雪は無視ということになった。


 まあ俺達は似た者同士の集まりだから、一人が雪を嫌っているならみんなが嫌いなんだけど。


「やっぱり雪が降ってる時に暖房の効いた部屋でアイス食べるのが至高だと思うんだよ」


「絶対誰か言うと思った」


 というか絶対によりが言うと思ったが、案の定だ。


「私は暖房の効いた部屋よりも、コタツに潜ってアイス食べたい」


「サウナ行ってろ」


「じゃあ僕はまーくんにあっためてもらう」


「君は一番女の子しない」


「そういうのありならありすは先輩とお互いの肌で暖め合うやつやりたい」


「それは意味が違うだろ」


 なんでここにはホワイトクリスマスを素直に喜べる子がいないんだ。


 どこにクリスマスに雪が降っているのに漫才大会をする高校生と中学生がいる。


「それと突っ込み役はレンだろ」


「んぁ?」


 俺はベッドの中で丸くなっている、とぼけた様子の猫を睨みつける。


「長くなるのを読んで俺のベッドであったまってんじゃない」


「寒いの無理」


「部屋の中は別に寒くないだろうが」


「……あれ、サキが他の女に構ってばっかで心が寒い」


 レンがすごい適当に言う。


 実際はレンが突っ込み役を放棄してるから代わりに俺がやっているのだけど、レン以外の女子を構っているのは事実だから責めきれなくなった。


「真面目なやつは扱いが楽でいい」


「水萌、俺はご飯の用意してくるからその間はレンを食べてていいぞ」


「え、ほんと? 前菜の恋火れんかちゃんいただきまーす」


 水萌がそう言ってベッドに潜り込む。


「いや、普通にやめ、んっ」


 レンが体をビクつかせて何か変な声を漏らした。


「なんかすごい可愛い声がしたよ? え、まさか水萌ちゃん、禁断の姉妹で……」


「や、何も、んっ、やっ、めろ。おまっ……」


 レンの顔がどんどん赤くなっていく。


 なんか見てはいけないものを見てるようでいたたまれなくなってくる。


 だけどどこかで見たことがあるような光景にも……


「あぁ、そういえば前にレンが水萌に襲われた時もこんなだったな」


「詳しく!」


 これも案の定だけど、依が目をキラキラさせながら床に両手をつけてグッと俺に顔を近づけてきた。


 すごい頭突きしたくなったのを我慢した俺を褒めて欲しい。


「依さんも可愛いのに顔色一つ変えない先輩ってなんなの?」


「あれじゃない? 依ちゃんを女の子として見てないか、昨日の一件で恋火ちゃん以外眼中に無いみたいな?」


紫音しおんくんはうちに恨みでもあるのかい?」


 依が少し頬赤くしながら俺から離れる。


 紫音の毒舌は今に始まったことではないし、俺も別に依が迫ってきて何も感じないわけではない。


 ただ、来るのさえわかっていれば心の準備ができるだけで。


「つまりこれならいいのか」


 そう言って愛莉珠が俺の腕に絡みついてきた。


「来ると思ってたわ」


「じゃあこれも予想してたかな?」


 愛莉珠がそう言って俺の耳を甘噛みする。


「はぁ……」


「なぜにため息!? ありすは一応美少女のくくりに入ってたはずなんだけど!?」


 自分で言うな案件だけど、実際愛莉珠は可愛いからそれはいい。


 俺がため息をついたのは、別に愛莉珠が俺の耳を甘噛みしたことに嫌悪感を抱いたとかそういうのではない。


 愛莉珠の将来が不安になっただけだ。


 直近の。


「あ、でも今はそれどころじゃないのか」


「そういうこと。恋火さんは……、忙しそうだから見てないよ」


 俺がレンの方を見ようとしたら愛莉珠に顔を固定された。


 声は聞こえてこないけど、俺のベッドで何が行われているのか。


「今日の夜は悶々しちゃうね」


「ちょっと何言ってるのかわからないけど、そういえばありすは話せたの?」


 愛莉珠に店長と話した方がいいとは言ったけど、愛莉珠が俺の同伴を断った為どうなったのかを俺は知らない。


 最近の店長が少し肩の力が抜けたように見えたからいい結果になったとは思うけど。


「あ、うん。なんかほとんどありすの勘違いだったみたい。今度ちゃんと話すね」


「大丈夫なんだな?」


「うん。昨日お姉ちゃんにいっぱい話せて楽になったし、ほんとに大丈夫」


 愛莉珠が笑顔で言う。


 話を聞くまではわからないけど、こんなに屈託のない笑顔ができるなら心配はいらないだろう。


 それよりも水萌との会話の方が気になる。


「秘密」


「だよな。それよりも早く食べ物持って来ないとレンがやばいか」


 レンの現状は愛莉珠が止めるから見れないけど、依と蓮奈れなのガン見から大変な状況なのはわかる。


 ちなみに紫音はいつも通り蓮奈に目隠しされている。


「何か準備とかしてるの?」


「一応それっぽいものは買ってある。依達も持ってきてくれたみたいだし」


 クリスマス会なんて初めてだからどんなものを食べるのかわからなかったので、昨日のゲームセンター帰りにレンと調べながら買ってきた。


「そういえばプレゼント交換するんだよね?」


「そういう経験ないから普通にみんなの分買ってしまった俺ね」


 ほんとにさっき聞いて知ったけど、プレゼント交換とは経費削減の為に一人一つずつプレゼントを持ち寄って誰にプレゼントが渡るかわからないものだと。


 そういうのは先に言って欲しかった。


「じゃあそれはそれとして、プレゼント交換用に何か私物出せばいいんじゃないです?」


「それでもいいか。別にクリスマスプレゼントとか言うけど、ゲーセンで取ったやつだから大層なものは無いんだけど」


「気持ちが大切だけど、ゲーセンて……」


 愛莉珠は呆れたような顔をするけど言い訳させて欲しい。


 俺だってみんなに合ったプレゼントを選んで贈りたかった。


 だけどそれだと偏りが絶対に出るし、多分時間が足りない


「先輩って一人のプレゼント選ぶのに一週間とかかけそうだもんね」


「それで選べればいいよ。誕生日プレゼントは一人にだから時間かけられるけど、俺の勘違いのせいもあるけど、六人分を選ぶのには時間が足りなかった」


 だから仕方なくゲームセンターで乱獲してきたものをあげることにした。


「ちなみに何?」


「レンと水萌にはあげてるから違うものだけど、安定のぬいぐるみシリーズ」


 これしかないと思った。


 人気でも出たのか、レンと水萌にあげた猫と犬のぬいぐるみの別の動物バージョンが出ていた。


 しかも今回は一種類の動物ではなく、色んな動物が一緒になっていたので、熊とハムスターと狐をゲットできた。


「それってありす決まってるの?」


「ありすは確定してないから暫定で鳥にした」


 正直愛莉珠の動物化は難しい。


 イタズラ好きだけど内面には闇を抱えている。


 その闇も晴れたようだけど、それだと依と同じで狐になってしまうし、それなら狸かとも思ったけど、狐と狸では普通すぎて嫌だった。


 だからイタズラ好きの動物を調べたらレンの猫とインコなどが出てきたので鳥にしてみた。


「なんか馬鹿にされたような気がするけど、先輩がありすのことを考えて選んでくれたならいいや」


「それは良かった。うん、良かった」


 実は愛莉珠を動物に例える時に一番に思いついたのはサキュバスで、それだと動物にならないし、水萌……最近はレンの方がだけど、被るから無しにした。


 そしてサキュバスには翼があるイメージだったから、それが鳥を選んだ理由の大半なのは黙っておく。


「……えっち」


「理不尽」


「じゃないもーん」


 愛莉珠がそう言って俺の腕に満面の笑みで抱きつく。


 こういうところが男を惑わすサキュバスなんだ。


 まあ、そんなこんなで、俺達のクリスマス会はつつがなく? 終わった。


 レンのその後とプレゼント交換の結果?


 そんなのトップシークレットに決まっている。


 一つ言えるとしたら、俺が貰ったのは依のだと言うことだけだ。

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