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説明終了、そして……

「人権をください」


「オレ達全員を納得させられたらな」


 俺の今の状況を説明しよう。


 まず、正座をさせられていて、首からは『私は浮気をしている最低な男です』と書かれた紙をかけられていて、そして目の前には水萌みなものスマホが置いてあり、そこには例の画像が映し出されている。


「先に確認していい?」


「なんだ?」


「俺が真実を話して、君達はそれを信じる?」


「それが真実なら信じるに決まってるだろ」


「じゃあこれは浮気じゃない」


「ちゃんとした説明なら信じるって話だよ」


 レンはそう言うけど、簡単に信じてくれるとは思えない。


 いつもは俺が嘘をつかないのを理解しているけど、こういう時は嘘を前提に話を進めていくのだから。


「なんだ、サキはオレのことが信じられないと?」


「うん」


「普通に傷つく。いや、確かにサキが何か言っても簡単には信じないだろうけど、オレだってコレが浮気じゃないことぐらいわかってるから」


 レンが水萌のスマホを指さしながら言う。


 それなら早く俺に人権を返して欲しい。


「まあいいや。どこから説明して欲しい?」


「じゃあお兄様はやっぱり小さい子が好きなの?」


 よりがレン達を押しのけて一番に意味のわからない質問をしてくる。


「そろそろ俺も怒るけどいい?」


「でも、この子見るからに年下だよね?」


「だから?」


「あ、マジで怒っちゃうやつだ。黙りまーす」


 俺が少し不機嫌になったのを察したのか、依が蓮奈れなの後ろに隠れた。


 別に怒ってるわけではないのだけど。まだ。


「よりのことは無視していいよ。それでこの子は誰?」


「俺のバイト先の店長の親戚の子。今中三で、来年からバイトするみたいだから最近たまに来るようになったんだよ。それでこれは、家が近くだけど、一人で帰らせるのは危ないからって店長にパシリに使われてるとこ」


 店長が言うには、なんでか知らないけど俺はこの子、篠山しのやま 愛莉珠ありすに懐かれてしまったらしい。


 だからこの子のお世話(お目付け)は俺に丸投げされた。


「結構やっかいな子で、いい子なんだけど、トラブルメーカーすぎて店長の手に負えないからって俺に丸投げしやがったんだよ」


「つまりサキはこの子を手玉に取ってると?」


「言い方に悪意があるけど、なんでか俺のとこに来るんだよ」


「タラシだから」


「あ?」


 依がまた余計なことを言い出したので睨んで黙らせる。


「ちなみに言っとくと、多分レンの苦手なタイプ」


「と言うと?」


「すごい悪い言い方すると、男に媚びるタイプ」


「あぁ、嫌いだわ」


 多分同性から程嫌われるやつだ。


 水萌達のように、素があざといのではなく、狙ってあざとくしているタイプ。


「舞翔君的にはその子どうなの?」


「どうってのは、好きか嫌いかって話?」


「苦手とかでもいいけど、どういう心境で接してるのかなって」


「俺はこの子結構面白いと思ってる」


 こういうタイプの子とは接したことがなかったけど、この子が特殊なのかは知らないが、見てて面白い。


「サキって上辺とか一切見ないから、この子の中身を見て言ってるんだろうけど、それでも『面白い』って何?」


「レンも話してみたら……わかんないかもだけど、ほんと面白いんだよ」


 面白いって言い方はこの子に悪いかもだけど、いい意味だから許して欲しい。


 きっとレンには見せてくれないだろうから理解はされないだろうけど、俺はこの子を結構気に入っている。


「まーくんがこんなに褒めるなんて珍しいね」


「俺は紫音しおんのことも褒めてるだろ?」


「だってこの子と会ったのって最近じゃないの?」


「そういうことね。でも俺って気に入る人は結構すぐに気に入るよ?」


 俺は基本的に人に興味を持たないけど、ここに居る全員は出会ってすぐに気に入って仲良くなった。


 依は第一印象が悪かったせいで少し時間はかかったけど、それでも俺にしてはすぐに仲良くなれた。


「それもそっか。そういえばなんだけど、まーくんのバイト先ってどこなの?」


「それ私も知らない」


「うちも」


 紫音に続いて蓮奈と依も興味を示す。


 別に隠してるわけじゃないけど、誰にも聞かれなかったから俺のバイト先は誰にも教えていない。


 だからこそ気になることもある。


「なんで教えてないのに水萌はこの写真を撮れたの?」


「舞翔くんにバレないようにつけたから?」


 水萌が久しぶりの「何言ってんのこいつ?」みたいな顔をする。


 それはこちらのセリフなんだが。


「そもそも舞翔くんだって気づいてたでしょ?」


「まあ水萌も隠れる気なかったからな」


「だって隠れたら悪いことしてるみたいじゃん」


 だからって堂々と俺をつけるのはどうなのか。


 言ってくれれば一緒に行ったものを。


「でも写真撮られてるのには気づかなかった」


「それは舞翔くんがこの子と一緒に居るのが楽しくなったゃったからでしょ?」


「そうなるのか。実際どうなのか判断して欲しいけど、誰かが見てたら絶対面白くならないんだよな」


「だから面白いってなんだよ」


 レンにジト目を向けられるが、面白いは面白いだ。


 こればっかりは見てもらわないとわからないけど、見せることができないのが悔しい。


 あんな面白いのは少し前の蓮奈ぐらいなものだ。


「じゃあ今度みんなでまーくんのバイト先行こうよ」


「冷やかしは帰らせるのが店長のスタンスだけどいい?」


「うちのサキがちゃんと仕事してるか確認しないとだろ?」


「そういうのを冷やかしって言うんだろ。まあ店長もレンと水萌には会いたがってたからいいけど」


「「え?」」


 レンと水萌の声がハモる。


「じゃあ明日の学校終わりにでも来る?」


「あ、そこの説明は無しなんだ」


「欲しい?」


「別にいいや。どうせいつものだろうし」


 レンがため息混じりに言うが、多分その通りだ。


「そういうことで、もうこれ外していい?」


「いいよ。ついでだから水萌に『私はストーカーをした悪い子です』っての書いて下げさせるか?」


「それなら恋火れんかちゃんこそ『私は見せつけるようにイチャイチャした悪い子です』って書いて下げないと」


「オレはいいんだよ。サキと付き合ってるから」


「あー、そうやってまうんと取るんだー」


「意味を理解してから言え」


 またいつもの仲良し姉妹の姉妹喧嘩が始まった。


 こうなると長いから放置して、首から下げた紙を隣に置く。


「そろそろ紫音にプレゼント渡す?」


「お、ついにまーくんが女の子に?」


「マジでやるの?」


「僕はそれを楽しみにこの数ヶ月を生きてきたんだよ?」


「大袈裟なんだよ」


 確かに俺も紫音のスカート姿を見るのを生きがいにしてた時があるけど、それは紫音だからいいのであって、俺が女装することにそんな期待されても困る。


 一応準備はあるけど。


「見せるのは紫音だけであいんだっけ?」


「うん」


「そんな!?」


 蓮奈が絶望したような顔になる。


 何を絶望する必要があるのか。


「私も見たいー」


「じゃあ蓮奈も男装する?」


「舞翔君は私の痴態を見たじゃん!」


「それだけ聞くと色々と危ないからちゃんとメイド服って言え」


 言葉には気をつけて欲しい。


 姉妹喧嘩をしていた二人が反応するようなことをサラッと言われると本当に困る。


「まあ別にいいけど。一応言っとくけど写真は駄目だからな?」


「なんで?」


「俺のを撮るなら蓮奈はもう一回メイド服を着て俺に写真を撮らせることになるからな?」


「……我慢します」


 すごい悔しそうだけど、聞き分けが良くて助かる。


 やっぱり俺だけ撮られるのはフェアじゃないから撮らせるわけにはいかない。


「じゃあ行くよ」


「はーい」


 俺が立ち上がって依を呼ぶと、依は元気に返事をして立ち上がる。


「依ちゃんずるいよ」


「仕方ないじゃないか。れなたそだって一番可愛いお兄様が……お姉様が見たいだろ?」


「見たいけど……」


 依は俺を女子にする為のメイクを頼んでいる。


 実際そこまでやる必要があるのかわからないけど、紫音は俺の誕生日の時にやってくれたから俺もやらないとフェアじゃない。


「うちが最高に可愛くしてあげるから」


「素材が悪いから無理だよ」


「素材がいいからできるんだって」


 ここまで来て引くことはしないけど、やっぱり憂鬱だ。


 もう後のことはやる気しかない依に全て任せることにしたのだった。

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